夢をみた
浅い眠りの中で
母の夢を
眠っている扉の隙間から見える母の姿を
編み物している母の手を
あの幼い日
暗がりが怖くて
どこへも行きたくなかったあの日
夢をみた
薄い意識の中で
父の夢を
夕暮れの庭から大きな声で呼ぶ父
駆けて行く私
あの幼い日
一人になるのが怖くて
誰かにそばにいて欲しかったあの日
目覚めるともう初夏だった
きじ鳩が近くの山で鳴いている
もうこんなに時間が過ぎている
夢は思い出と混ざり合い
孤独は瞳に寄り添う
私は眠っていたのだろうか
悲しみと
苦しみと
何かの重さから逃れるようにして
またあの頃と同じように朝がくることだけを信じて
あさきゆめみし
あさき夢路を
懐かしい夢に取り囲まれて
涙に頬を濡らして
私は眠っていたのだろうか
いつか目覚めるために
いつか新しい朝を歩き出すために
もう時は過ぎ去っている
風がカーテンを揺らしている
作曲:瑞慶覧尚子 「あさきゆめみし」 2018