ブレイクしよう
…「ねえコーヒー飲まない?」
窓の外を眺めると
もう雨はやんでいた
しばらく夢を見てたんだ
私は求めていた
小さな休符を
緊張したシークエンスから
何かが滴り落ちるのを
葉末の雫のように
私は無心で
ドリップをし
丁寧にコーヒーを淹れている
私のために
それから
あなたのために
これで何かが変わるから
きっと何かが始まるから
「ね!」
私はあなたを見る
あなたはやさしく頷いた
…「コーヒー淹れたよ」
窓の外を眺めると
木々は輝いていた
世界は息をしてるんだ
私の中で響いていた
バッハの音が
この小さな時間の中を
規則正しい音が駆け巡る
ほんのり甘い香りとともに
やがて
コーヒーを注ぐ
白いカップにたっぷり、ゆっくりと
今日のために
それから明日のために
これで扉が開くから
きっと何かに出会うから
「ね!」
私は私に問う
私は静かに微笑んでいた
だからこそブレイクを
そして音楽を
あなたとわたしのために
今日と明日のために
(家族の嚙み合わない会話)
(コミュニケーションのためにみんなでコーヒータイムとしよう)
父 ねえ、コーヒー飲まない?
娘 いらない
母 私もいい
父 どいつもこいつも
娘 勝手に飲んだら?
父 一緒に飲もうと思って新しい豆を買ったんだ
母 私が淹れることになってるのだったら、私は嫌よ
娘 私も嫌よ
父 そんなこと言っとらん
母 黙ってて、私は今忙しいの
娘 私も今忙しいの
父 二人とも漫画読んでるか、雑誌読んでるだけじゃないか
母 なにか問題?
娘 なにが悪いの?
父 いや、
1.コーヒータイム
ちょっと一服
コーヒーでも飲みませんか
ひと息つくと
きっと頭も冴えわたる
小さなことで戦っても仕方ないさ
しばし休戦
穏やかに微笑み合おうよ
一杯のコーヒーから
始まる物語もある
このひと時から
分かる気持ちもあるものさ
ちょっと一服
コーヒーでも飲みませんか
ひと息つくと
きっと心も晴れ渡る
小さなことで意地を張っても仕方ないさ
しばし休憩
朗らかに手を取り合おうよ
一杯のコーヒーから
広がる世界もある
このひと時から
膨らむ夢もあるものさ
(家族の嚙み合わない会話が続く)
父 新しい豆だ
娘 ふうん、何が違うの
母 コーヒー豆っていうけど、コーヒーって豆なの?
娘 豆なら黒豆のほうが好き
母 私は塩豆大福食べたい
父 なにを馬鹿なことを。コーヒーの実だよ、でも本当は赤いんだよ
娘 へえ、知らなかった?
父 なんにも知らんな、お前は、魚も切り身で泳いでるわけじゃないんだ
娘 馬鹿にしないでよ、それぐらいは分かってるよ
父 どれ、一つわしが淹れてやるか
(コーヒーの実について)
皆さんはコーヒー豆のことを知っていますか?
コーヒーノキは、ジャスミンのようなほのかな香りのする白い花をつけます。花は春先に一斉に咲くのですが2~3日で枯れてしまようようです。 受粉からは数ヶ月で実がつき始め、最初は緑だった実は熟して真っ赤になります。 見た目がサクランボに似ていることからコーヒーチェリーと呼ばれているのですよ。
2.赤い実食べた? ~コーヒーの木(花はジャスミンの香り)
黄色い翼の鳥が来て
コーヒーの木にとまったよ
そして歌を歌ったとさ
甘くて優しい故郷の歌を
やがて鳥は
花を咥えて飛び立った
可憐で小さな白い花
でも、一声鳴いたものだから
花は乙女の肩の上
ジャスミンのような香り立て
恋の予感が 広がっていったとさ
不思議な恋の物語
青い翼の鳥が来て
コーヒーの木に止まったよ
そして歌を歌ったとさ
透き通るようなきれいな声で
やがて鳥は
実を咥えて飛び立った
チェリーのような赤い実を
でも、一声鳴いたものだから
赤い実落ちて森の中
やわらかい土に抱(いだ)かれて
新しい芽が 顔をだしたんだとさ
明るい希望の物語
(母と娘の会話、結婚について、コーヒーの淹れ方をめぐり)
娘 結局、父さん自分で淹れてるね
母 良いのよ、こだわり屋さんだから
娘 ああ、言うタイミング失った、結婚のこと
母 分かってるんじゃない?
娘 私、わざと結婚雑誌読んでたんだけど
母 それは気づいてないわ
娘 つい喧嘩腰になってしまうんだよね
母 母さんは気に入ってるわよ、彼のこと、父さんより100倍良いわね
娘 でしょ?
母 母さんがもっと若かったらな
娘 何言ってるの、父さんも気に入ると良いな
母 コーヒー好きならね
娘 そんなことが基準?…普通よ
母 まあ、父さんも気に入るわ。自称、冒険好きでもあるから
娘 そう、貿易関係の仕事だから世界の話題は豊富
母 そうだったわね
娘 結婚したらしばらくはヨーロッパなの
母 まあ
娘 で、新婚旅行はアフリカに行くの
母 コーヒー豆買って来てあげて
娘 コーヒーの産地ってどこかしら?
コーヒーは北回帰線と南回帰線の間(俗にコーヒーベルトと言います)の数十か国で生産されており、コーヒー農園ではコーヒーノキの栽培と果実の収穫が行われています。
「コーヒー」はアラビア語でコーヒーを意味するカフワが転訛したものであるとか、エチオピアにあったコーヒーの産地カッファがアラビア語に取り入れられたものともいわれています。 この言葉がコーヒーの伝播に伴って、トルコでは: kahve、イタリアでは: caffè、フランスでは: café、ドイツでは: Kaffee、英語では: coffee…と呼ばれるものになったようですね。
3.コーヒー豆は世界を旅する
Bun ga wan don
Bun ga wan don
むかしコロンビアの青年が
コーヒー豆を箱に詰め
港の船に持ち込んだ
船はカリブ海を横切って
大西洋を横断し
やがてジェノバの港についたのさ
今じゃ世界中の街角でコーヒーが飲まれてる
ヘルシンキの学生も
アンダルシアのご夫婦も
コーヒー飲んで語ってる
コーヒー豆は世界を回る
世界はいつも甘い香りに満ちている
コーヒーが世界をゆったりほぐしているんだよ
Bun ga wan don
Bun ga wan don
むかしタンザニアのおじさんが
コーヒーの木を栽培し
熟れた木の実を摘み取った
木の実はインド洋を横切って
太平洋を横断し
やがてロスアンジェルスについたのさ
今じゃ世界中の食卓でコーヒーが飲まれてる
ニューヨークの花屋さん
シンガポールのビジネスマン
みんなコーヒー飲んでいる
コーヒー豆は地球を回る
地球はいつも甘い香りに溢れている
コーヒーが地球をゆっくり和ませているんだよ
(父と娘の会話が逸れる、ミルクを入れる入れないか)
父 コーヒー淹れたよ、まあ飲んでみろ
娘 ありがとう
父 良い香りがするぞ
娘 実はね
父 なんだ
娘 いや、そうそう、ミルク入れなきゃ
父 おいおい、コーヒーはブラックに決まってるだろうが、ミルクなんざ邪道だな
娘 あら頑固ね、それは思い込みね
父 いやいや味をごまかしてはならん
娘 いえいえ、好みの問題、砂糖やミルクがコーヒーの味を引き出すことだってあるのだし
父 甘えちゃならん
娘 そもそも蒸らしてアロマを抽出しているのだしね、工夫次第でより良いよいものに
父 何言ってるかな、ブラーック
娘 それは自由、決めつけは良くないだけ
父 わしは本質論を言っている
娘 私も本質論を言っている
母 おだまりなさい
(コーヒーを愛する気持ちがあれば、いろんな飲み方を楽しもう)
まあまあ大変。でも、もちろん、カフェオレもありますし、ミルクを入れても砂糖を入れてもおいしいですよね。歴史上も地域的にも様々な飲まれ方をしているようですよ。本来の香りを壊すほどでなければ適度なフレーバーを混ぜる飲み方もありますよね。時にはそのままストレートで本来の味わいを楽しみ、時にはコーヒーの風味を引き立てるミルクや甘味を加えて違った魅力を味わってみましょう。もちろんコーヒーを愛する気持ちで。何事もお好みで。
4.あなたが愛してくれるなら
ありのままの君が好きだよって
あなたが言ってくれたので
私は何も飾らない
あなたが愛してくれるなら
私は何も飾らずに
瞳を閉じて待っている
時間(とき)がゆっくり熟していくのを
本当の私がゆっくり解放されていくのを
白いリボンが似合うよねって
あなたが言ってくれたので
今日の私は白いリボンの髪飾り
あなたが愛してくれるなら
私は白いリボンを飾り
風に靡かせ歌ってる
光に輝くメロディーを
そよ風とのデュエットで
どちらの私も本当の私
私はいつも何かを探しながら
だんだん私になっていく
あなたに愛されながら
あなたの胸の中で
私は私になっていく
(父と母の娘についての会話)
母 あの子、彼と結婚の話が出てるそうよ、さっき言おうとしてたのに
父 大丈夫かねえ、あいつ辛抱が足りんから
母 辛抱が前提?
父 結婚には、我慢というものが必要なんじゃないか
母 まあ、別に我慢の話が最初に来なくて良いと思うけど
父 いやいや、100%の男なんておらんからなあ、わしの他はな、ははは
母 つまらない冗談言わないで、私は我慢しかしてませんよ
父 まあ、コーヒーでも飲め飲め、新しい豆だ、フルーツの香りがするぞ
母 要りませんよ
父 いやあ、コーヒーのように手間暇かけて家庭は築くものだって
母 また分かったようなことをおっしゃって
父 いや、時間をかけて…焙煎をし、いやお前から良いように言ってやってくれ
母 つまらない例え話、披露宴でもしないでくださいね
(コーヒーになるには)
皆さんはコーヒーの作り方知っていますか。
まずは、収穫されたコーヒーの果実からコーヒー豆を取り出す作業が必要です。取り出された豆が焙煎されて、初めてコーヒーの香りと味が生み出されます。ちなみに焙煎度の低いものを浅煎り、高いものを深煎りと呼んだりしますよね。
次に焙煎されたコーヒー豆は、粉状に細かく挽かれます。この粉砕にはコーヒーミルと呼ばれる器具やその他の機械を用います。焙煎されて粉砕されたコーヒーの粉からは、お湯や水を通して中の成分が抽出され、ようやく我々が口にする飲み物としてのコーヒーが出来上がるのです。
このように、良く知っているコーヒーになるまでには、たくさんの丁寧な工程と、手間暇がかけられ、それぞれの場面には細かいこだわりが存在しているのですよ。
5.~焙煎し、粉を挽く~
パンの木にパンが出来る訳ではないように
カカオの実がそのままチョコレートではないように
木の実を絞れば
コーヒーが飲めるわけではないのです
豆を煎って粉を挽く
それをお湯で蒸らすのだけれど
なんでも一足(いっそく)飛びとはまいりません
何気ない一つのことは
たくさんの工程を経て出来てくる
このひとときのために
多くの努力が積み重ねられるのです
木を削れば紙になる訳ではないように
ゴムの木からボールが飛び出すのではないように
木の実を絞れば
コーヒーが飲めるわけではないのです
砕いた豆に湯を注ぎ
それをドリップするのだけれど
少し手間をかけるのが大事です
何気ない一つのことは
気持ちが繋がって出来てくる
このひとときのために
たくさんの人が関わっているのです
大切なものは簡単に手に入らず
一人で出来ることは限られる
気持ちを込めて丁寧に
心を繋いでいきましょう
時間をかけて丁寧に
心を磨いていきましょう
(結婚の話、娘の子供時代)
娘 父さん、私結婚するよ
父 お前が小さかったときなあ
娘 ねえ、聞いてる?
父 父さんと結婚したいと言ったものだ
娘 ねえ、ちゃんと聞いてよ
父 膝の上に乗っかって、可愛かったものだ
娘 私会ってもらいたい人がいるの
父 私の誕生日には私の似顔絵を描いてプレゼントしてくれたものだ、達磨のようだった
娘 ねえ、
父 そいつ、コーヒー好きか?
娘 ええ、まあ
父 なら、会ってやってもいいぞ、コーヒー飲みながらな
6.コーヒーは大人の飲み物
コーヒー頼むのは父さん
私はいつもクリームソーダ
湯気も香りも好きだけど
苦いコーヒーは
大人の飲み物だと思っていた
気が付けば
私もすっかり大人になって
待ち合わせには
コーヒーを飲んで待っている
窓際のテーブルでカフェラッテ
そうね
コーヒーでも飲もうか、父さん
昔行った街角のカフェで
聞いてもらいたい話も切り出せそうね
コーヒー頼むのは母さん
私はときどきレモンスカッシュ
コーヒーゼリーは好きだけど
苦いコーヒーは
大人になってからと思っていた
気が付けば
私もすっかり大人になって
一人の夜更けに
コーヒーを淹れて夢心地
シナモンのフレーバー香らせて
そうね
コーヒーでも飲もうか母さん
静かな夜のテーブルで
つもる話も出来そうね
(家族の会話、家族仲直り)
父 まあまあだな、わしのほうがいい男だが、その次くらいかな
娘 結婚するよ
父 どうぞご自由に、お前の人生だから
母 まあ、照れちゃって、良い方よ
父 まあ、そうとも言う、仲良くな
娘 しばらく仕事の関係で私たちベルリンに行くの、少し寂しくなるかしら
父 わしはコーヒーを飲んで人生を噛みしめる
母 少し寂しくなるわね
娘 ときどき帰ってくるから
父 帰って来なくていいぞ、でも時々コーヒーを飲みながら互いを思い出そう
娘 そうね、人生にはいっぷくが必要だからね
父 そうとも、喜びや想い出を味わい、分かち合う瞬間がね
母 あら、雪がちらついてきたわね、出かけるのはよして、ゆっくりしましょう
父 じゃあ豆を挽くとしようか、我が家のスペシャルブレンドをね
母 そうね
父 窓の外を眺めながら絵画のようなひとときを過ごそう
娘 この時間、大切にするわ
父 そうだよ
7.淹れたてのコーヒーが飲みたくて
雪が降った夜明けに
淹れたてのコーヒーが飲みたくて
古い都会の街角にやってきた
誰も居ないテラスに立って
僕はマフラーを固く巻き
湯気に顔を寄せている
いつだったろう
君は天使を見たと言ったよね
こんな夜明けに
窓ガラスに映る自分の顔を見た
随分時は過ぎたけど
想い出はいつも昨日のように鮮やかだ
君の前にはきっと遥かな道が続いているのだろう
僕も歩きだすよ
でも、少しだけ
ここで温まってからね
まだ冷たい冬の朝に
淹れたてのコーヒーの香りを求めて
古い都会の街角にやってきた
凍てついた石畳を歩きながら
僕はコートの襟を立て
香りに想い出を求めている
天使の姿は見えないけれど
誰かの心の中に紛れている
君はよくそう言った
僕は朝焼けの空を見た
ベルリンは晴れているだろうか
雪はとけただろうか
君は何をしているのだろう
僕も歩き始めるよ
でも、もうしばらく
ここで温まってからね
冷えた身体がもう少し回復するまで
一杯の熱いコーヒーを飲みながら
全員 結婚おめでとー
全員 コーヒーのある家庭を!人生に一杯のコーヒーを
作曲:相澤直人 2023