さて、身体を通して歌や言葉を表現することを目指す「合唱物語」は、グランツェという合唱団の音楽面を見事に大きく成長させてきてくれたとも思います。二口先生や広田先生の熱心なご指導に加え、先輩から受け継いだ精神性がこの形式を唯一無二のものにしており、合唱団のアイデンティティを形成しているのでしょう。今年もまたまた人気作曲家である名田綾子先生素晴らしい曲を書いていただきました。テキストについては、昨年に続いて、底本を使っていますので、昨年の「青い鳥はどこに?」の姉妹編とも言えるように感じます。
…サンテグジュペリの原作は子供の頃から長らく私の書棚にもありました。恐らく子供時代の私は、良く分からないままに何となく読み終えていたように思います。しかしながら、最近になってきっかけがあって読み直してみたところ、全ての言葉が深く心に突き刺さりました。人生の経験を経るたびに、見え方や感じ方や考え方が変わり、芽生えてきた心情もあったのでしょう。グランツェの皆さんにはいまこの時に感じた精いっぱいの演奏を期待するとともに、名田先生からいただいた曲について、ついでに私の心の鏡を通して原作から紡ぎ出してみた言葉について、…人生の折に触れて思い出してもらえると嬉しく思
います。音楽や言葉は誰かの創作物であるばかりではなく、その時々の自身の気持ちの鏡でもあるのでしょう。
…愛すること、生きること、そして誰しもが心の中に持っているかもしれない薔薇への繊細な思い、全ては…そのとき見上げた星空が教えてくれるようにも思います。