人ごみの中でその声に振り返った
私は声の方向を見つめて足を止めた

あれは三年前に亡くなった私の父だった
確かに父と同じ声をしている人がいたのだ

人はどこかで何かを少しずつ共有しているのだろうか
人はどこかで何かを少しずつ刷り替えているのだろうか

声の持ち主を発見することは出来なかった


2010.12.1