牧童

木の塀に腰をかけ
胡桃の実を握りながら
美しい声で歌った少女よ

お前の面影が風に過(よ)ぎる
お前の
透き通った
深い音色をもった
美しい声が
羊を追いたて羊を従わせた

お前の美しい黒髪が
草原の草を靡かせた

お前の頬と唇が
グミの実を赤く色付けた

お前は私の妹であったのか
恋人であったのか
それとも牧草の精霊であったのか

私の幼い日
夢のように思い出す私の幻よ


2010.12.1