楡の木

坂道の途中に病院があって
門を潜ると大きな楡の木があった

少し憂鬱な夏の午後に
彼女は手紙を読みながら
泣いていた
楡の木の下のベンチで

楡の木は彼女を抱くように影を延ばしていた
僕は楡の木には近寄れなかった
汗を拭って
憂鬱な午後が過ぎていくのをただ待っていたのだ


2010.12.1