檸檬

誰もいない土地
駱駝に乗った一行も通らない
砂漠の片隅に
一本の檸檬の木があって

旅人を待ち
王女を待ち
誰も来ないから
やがて世界が終わるのを待っている

星がまたたき
半分に欠けた月が眩しい夜

世界が終わったかどうかも分からない夜
檸檬は待っていたのかのように
それとも諦めたように?
密かな香りを放つ

砂漠の夜に
檸檬の香りが広がっていく


2010.12.1