おまえは孤独を

人は長い旅に出るとき決して振り返りはしない
人は本当の別れのとき決してうつむかない

それは目をそらさずに生きていく決意の瞬間である
意志の力によって
握りこぶしの力によって
噛み締めた奥歯の力によって
お前は生きていくのだ

それは必ず孤独な決断である
しかし孤独によってしか魂は鍛えられないのだから

閉じこもらず
俯かず
そして、何より孤独を恐れるな

人は孤独を通してしか人と向き合うことは出来ないのだから
人は孤独を通してしか真の愛を得ることが出来ないのだから

しかし
また孤独を隠れ蓑にはするな
身体を使って、孤独の橋を渡り、孤独の洞窟を潜り抜けて野原に出るのだ
足の裏によって
腕の上げ下ろしによって
なびく髪によって
角度を変えることの出来るそのまなざしによって
呼びかける声によって
お前は生きていくのだ

孤独と向き合い、孤独をくぐり抜け
心通わす何かを求め続けながら
お前は生きていくのだ


2010.12.13
作曲:松波千映子 混声合唱組曲「私が私に出会うとき」 2011