ピアノ

ピアノは舞踏をする
あるときは白と黒の荘重なドレスで
あるときはその軽快なコントラストのうちに
音楽と戯れ
鼓動と戯れ
静寂の緊張と戯れ
生死と戯れながら
ピアニストの骨と肉に身をゆだね
薔薇の歌を
木の葉の歌を
疾走する叫びを
緩やかな陽だまりを
舞踏するのだ

見たこともない光景や
感じたことのない情感を
人と同じだけの歴史や文化を記憶するようにして
その長い時間と距離を舞踏しながら越えているのだ


2010.12.1