惑星

その惑星は
思い出だけで出来ていた
土もなく岩もなく
窒素や酸素の大気もない

虹色の光線物質を放って
気の遠くなる時間で恒星を回りながら
近づくものたちの思い出を成分にしている

宇宙を巡る人たちは
吸い寄せられるようにして
惑星に近づいては
温かくなり
懐かしくなり
思い出を鮮やかに生き出し
やがて
胸を掻き毟られ
絶望し
後悔し
遠ざかっていく

しかし
眠りながら
地球に戻る頃には
絶望や後悔は
擦り剥き傷程度のものになっているという


2010.12.1