言葉のメモワール

一月


まっさらな空気を集めて
庭の池に氷が張る

氷を触った霜焼けの指は
凍みるように熱かった

ストーブには大きな薬缶が湯気を立て
取手を握ると指先が火照った

母の声が聞こえる
何かの歌のように

縁側には蜜柑箱
やがて
小豆を煮る音が甘い香りともに立ち込める

何かが不在の一月に
何かが抜けたまま
どこかどんよりとした幸福の縁(へり)がしなだれている

ちょうど部屋に干された毛糸の靴下のように



2011.5.16

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