歌の木になれ

初夏のうた


木は木と出会うだろうか
山は山と語るだろうか

人は人と出会う
触れ、語り、抱(いだ)き合う
出会うことで人は生きていく
喜びや
悲しみを分かち合い
手を取り
肩を叩き
人は人として生きていくのだ

春に出会った僕らは
やわらかな時間を過ごした

暖かい日差しや
降り続いた雨の中で
僕らの緑は少しずつ濃くなった
すれ違いも
繰り返し
僕らの時間は少しずつ深くなった

でも
いつのまにか
もう初夏がきている

清流には蛍の飛び交う
あの季節
夏のプロローグ

夕暮れの風には焦げ付くような匂いが混ざっている
木漏れ日の中には夏のリズムがはじけている

新しい季節が到来する予感の中で
僕らは旅立たねばならないのだ

降り注ぐ光を浴びながら
僕らは互いに眩しすぎる初夏の陽だまりに中に出て行かねばならないのだ

何かに別れを告げ
新しい季節を生きるために

やさしい季節は過ぎた
風がそう囁いている




2012.5.29
作曲:石若 雅弥 2012
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