2008年11月
松江、宍道湖、新しい仲間
夕暮れの出雲空港に降り立ち、松江までの道中に眺めた宍道湖は、穏やかさと艶かしさとを同等に溶かし込んだ美しくも不思議な印象を私に与えてくれました。悠久の時間を堆積させている湖が生活の場に近いということもその存在を大きく感じる理由でしょうか・・・、以後、松江に惹きつけられ、季節ごとに訪問し、刻一刻と表情を変える宍道湖を眺めることが私の楽しみの時間になっていきました。
音楽との出会いは人との出会いであり、その人を育んだ文化や環境との出会いでもあるように思います。つまり、私にとってこの合唱団との出会いは、団員やスタッフ一人一人との出会いであり、この土地の育んだ時間や、空気の湿り気、風情と品性ある文化の香り、(地元への愛着と遠方への憧れの視線を含めて醸し出している)土地の雰囲気そのものとの出会いでもありました。そして、そこに何か強烈に心惹かれるものを感じたこと、それが巡り巡って今日のステージに繋がっていることは私にとっては大きな喜び以外の何ものでもありません。この記念すべき演奏会には、私がいま最も信頼し期待する関西の友、作曲家の北川昇さんに新曲をお願いしました。 相談しリクエストしながら、合唱団の目標に相応しいものを作っていただく過程は、まるで個性や好みにあった世界に一つだけの服をあつらえてもらっているような温かさと幸せを感じる時間でした。出会いの連鎖から生まれた新しい曲を新しい仲間とともにここで発表出来ることを楽しみにしています
日頃こんなことを考えています。
「音楽」とは、生命を与えられていることのありがたみを実感させられる力、喜び、励まし・・・、「仲間」とは、かけがえのない宝、生きている目的を支えるもの、伝えたいという意志を生み出す力・・・、演奏や活動の「未熟さ、稚拙さ、無謀さ」は、いつかはこうなりたい、という夢を育む力、想像力を支える気持ち・・・。
大切な気持ちと思いに満ちた演奏会になりますように。
2009年10月
新しい世界への扉を開き
この7月、「プラバ少年少女合唱団」は、京都の「アルティ声楽アンサンブル」 に出演し、そのオープニングで「みやこキッズハーモニー」と共に華やかに舞台を飾ってくれました。その後の元気な演奏はもちろん、大きな拍手で迎えられたり、地域を越えた交流を含め、ともて楽しく温かい(京都の夏は暑かったですが) 時間を持てたのではないかと思っています。
一方、その少し後に、大阪のいずみホールで行なわれた「The Premier~オール 新作コンサート」ではお姉さんの「ピュアブルーベリー」が、全国の注目を浴びる中、新進作曲家である鷹羽弘晃さんの新曲を初演する機会を得ました。「立原道造の詩による4つの心象」という美しくも憂いを帯びた難易度の高い名作でしたが、ここでも見事な演奏を披露してくれました。フランス在住の鷹羽さんは残念ながら会場には駆けつけられませんでしたが、音源を聞いて熱烈な感想を寄せていただきました。
昨年は北川昇さんの新曲を披露したブルーベリーですが、今年になってからもますます活発な活動を展開していますし、一つずつ新しい扉を開いているように思 います。私もその都度、彼女たちの元気な歌声に引きつけられ、その無限の可能性に驚かされ、楽しい時間を共有させてもらっています。
さて、今年も演奏会の舞台に立つことが出来ました。松波先生にアレンジしても らった素敵な「ヘングレ」の世界の前に、昨年に引き続いて「世界の歌」を演奏させてもらいます。音楽に国境がないこと、特に子供たちの手にかかると一気に 軽々と超えて世界を広げていってくれること…、いずれは本当に世界に飛び出していくことも期待しつつ、楽しく演奏させてもらえればと思います。