Keishi Ito Homepage 〜目をひらく 耳をすます つぶやく〜 


なにわコラリアーズ丸秘

■なにわコラリアーズとは?

1993年に"爽やかにかっこよく"をモットーに結成した一般の男声合唱団です。 出身や経験、キャリアにとらわれず集まり、スタンダードな合唱曲や親しみやす い愛唱曲はもちろん、男声合唱のレパートリーを開拓しようと新しい曲にも意欲 的にチャレンジしております。コンクール等の活動に終始することなく、楽しい コンサート、他団とのジョイントコンサート、国内や海外への演奏旅行を企画し ながら、より多くの人と音楽における交流を深めていきたいと思っております。

■指揮者より

「合唱において最も大切なものは?」と聞かれたら、何と答えるでしょう?
発声、耳、ピッチ、姿勢、…いろいろあり過ぎて質問自体はナンセンスかもしれ ませんが、私は「想像力」と答えることにしています。(これは人生においても 同じです)そして、もう一つは間違いなく「仲間」です。一人で生きられないの と同様、ハーモニーも一人では作れません。つまり、お互いを聞き、意識し合い、 役割を果たし合い、かつ支えあって和音は成り立つと思うのです。そして、それ ぞれが互いに想像力を膨らませて歌を歌うことによって、「合唱」ははじめて命 を宿すのだと思うのです。
それに付け加えもうひとつ、私はどうしても、どんなに拙くとも「表現者である」 という観点を忘れたくはありません。換言すれば、我々は技術を磨くことを目標 としているのではなく、「音楽」という「芸術=うた=感情のメッセージ」と対 峙しているのだということを忘れたくはありません。より深く豊かな表現を可能 にするための「手段」として技術を磨くのだという考え方を忘れたくはありませ ん。
日常の眼差しの中に情動(エモーション)がなくては音楽が生まれず、生きていく ことに苦悩や哀切がなければ、それによって癒され励まされるという感動は生じ ないでしょう。「芸術=うた」は技術や高尚さや理屈の問題ではなく、表現した い欲求と、それを吸収する心の器との呼吸の中に存在するものなのだと考えます。 そして私はそんな「歌ごころある」合唱を目指したいと思います。
繊細で大胆な「情感」ある演奏・・・、「表情」ある生き生きとした音楽」「生き ていて良かった」と思えるような演奏をしていきたいものです。常に「表現・表 情・情感…」という心の陰影を丁寧に見つめた音楽が出来る合唱団を目指したい と思っています。
一緒に「うた」を楽しみ、感情の呼吸をしながら「合唱」にチャレンジして いきましょう。

P.S
この団体の特徴でもありますが、既存の一般的な団体のように出席が問われたり、 固定の団費がある訳ではありません。また、地方に散っているメンバーも数多く おります。メンバーであることの最大の共通項はその「志」にあると考えていま す。合唱界における男声合唱のジャンルを大いに活性化すべく、ノスタルジーに 終始しない男声合唱を!・・・
また、過剰な業務を抱える日本の社会人男性をとりまく常識に抵抗すべく、お互 いに励まし合いながら愛すべきものに没頭する瞬間を「必死で」大切にしたいと も考えております!!全てに優先すべきものは、そう、歌に込めた「気合い、気 迫」なのです。

■心構え(「なにコラ」で活動していただくにあたって)

☆一人一人が主役!
人について歌うことが合唱ではありません。合唱では「大勢の中に埋もれる一人」 になりがちですが、本物の歌を歌うには、決して「誰かについて歌うのではなく」 自分の思いを力いっぱい歌う「決意のようなもの」が必要です。自分の歌い方は まず自分で感じ、自分で考えること、そして多くの仲間と(頭でっかちな議論では なく)声や歌そのものでコミュニケーションを図りながら合唱団としての一つの表 現を作り出していかなければ、観客の気持ちに迫る「ダイナミズム」のようなもの は作れません。

☆理解するというということを大切に
指揮者に「低い」と言われては楽譜に書き込み、「大きすぎる」と言われては楽譜 に書き込む練習は全く進歩がありません。もちろん指揮者としての指示や客観的な 指摘を書き留めることも必要ではありますが、「ここは和音構造的に明るく取る方 が良い」、「この歌詞はこういう意味だからそっとささやくように歌った方が良い」 ・・・というように、歌い手は「理解」をし「納得」して「よりよく修正」していくこ とで、音楽の作り手であり続けることが肝心です。

☆1回の練習を大切に
ここには「教える人」と「教えられる人」がいる訳ではありません。社会人男性や 学生、誰しもが忙しい状況をかいくぐって練習に来ている状況、1回1回の練習の 密度が濃くなるように一人一人が努力をしましょう。練習には丁寧さを心がけ、居 心地の良い場所でありたいと思いますが、「音取り」「歌詞づけ」も最終的には「 個人の努力」です。そして「努力する個人の集合体」が合唱団です。アンサンブル では出来るだけ「どう歌うのか」「どう表現するのか」という、アンサンブルなら ではの練習に時間を割くべきだと思うのです。能力にバラつきがあることは当然の ことですが、「志」「気概」「気持ちのベクトル」のようなものをしっかりと合わ せて行くためには、「個人の努力」「全体での努力」を整理して、心構えを持って おくことが大切だと思います。

☆視線(上半身)の自由さの確保
一緒に練習をしていて、歌い手が楽譜との対話になってしまっていることほどつま らないものはありません。指揮者も歌い手もともに「表現者」です。指揮者を見る のではありません。歌い手は、常に、隣の人、他のパートと手を携え、客席に向か って歌って欲しいのです。時には指揮者とのアイコンタクトも交えて、一体感やコ ンセンサスのある合唱をしたいのです。視線を自由に確保する技術は、実際には合 唱曲のポイント理解とも直結します。この技術を一番先に身に付けましょう。

■基本練習の方向性
(大きく捉えると、「耳」と「身体」を使った合唱を目指すということになります)

○ 倍音を含んだ発声
○ ブレスのテクニック
○ 和音の理解
○ カノンへの対応
○ 外国語の発音に関する基礎理解(アクセント、母音、子音)
○ 身体を使うこと

<倍音を含んだ発声>
下顎に力の入るいわゆる昔ながらの「グリー声」と揶揄されるような声は禁物です。胸に 響かせる効果のある低音以外は頬や頭蓋骨を意識してください。「倍音」を豊かに含み、 ピッチコントロールの容易な声を目指しましょう。紙上で理解出来ることは限られていま すので、以下に基本事項を簡潔に。

・鼻で歌う、鼻腔を響かせる。(口、舌は力が抜けていること、のどで音程を取らない。)
・隣の人の声を認識しながら発声を。
・会場の響きを利用した発声を。

<ブレスのテクニック>
(ロングトーン)
合唱は楽器で言えば「弦楽器」に最も近いと考えています。しかしながら、男声合唱はと もすれば打楽器的なアタックを多用した歌い方におちいりがちです。「なにコラ」におい ては、基本的には弦楽器のようなフレージングを大切にしています。息の速度をコントロ ールするという視点を携えながらロングトーンや柔らかい響きを作る母体になる「支えら れた息」を確保してください。

(ローテーションブレス)・・・これは伊東の造語です。
これは非常に重要な観点です。一人で発表する声楽と多人数で発表する合唱の違いをやや 誇張して意識した概念です。歌い手は音と音との間で息をしがちです。しかし、合唱は弦 楽器であり、フレーズの切れ目でない限り、そこには間が出来てしまってはならないので す。
スタッカート(切る)という指示のない限り、音符と音符の間は音が埋まっていなければ なりません。にも関わらず不用意な息をしてしまって「音価」を下げてしまうことが本当 によくあります。どうしても息が持たない場合、もしくは一人で歌えないようなロングト ーンでフレーズを作る場合には、「音符と音符の間ではなく」それぞれが違う「音符を飛 ばして」ローテーションで息をすることを要求しています。
「息がなくなったら慌てて吸う」という生理的な反応ではなく、フレージングを見据えて 全体でレガートで歌うためには自分はどこで音符を飛ばして落ち着いてブレスを取るか・・・、 という意図や狙いのある歌い方が必要です。ぜひ実践してテクニックを獲得してください。

<和音の理解>

(三音の役割)

・根音 =ド(わりとしっかりと響かせる必要があります)
・第3音=ミ(調和を取りながら、やや低目という意識で響かせます)
      mollの場合は逆にやや明るめを心がけます。
・第5音=ソ(明るく高めに響かせる必要があります)

自分が上記のどの音程を歌っているのかということを理解することは非常に重要です。同じ の音としても、根音として歌うのか第3音として歌うのかでは、随分違った感じ方をしなく てはなりません。純正調を意識したアカペラ合唱において、サウンドを整えていくことは生 命線のでもありますし、サウンドの音色のようなものを表現しようと思うと上記の理解は不 可欠です。(純正調や倍音については練習時に)。
決め所の和音については、自分が歌っている音が上記のどれに当たるかということを確実に 理解しておいてください。主音(根音)から5度の音程の距離感を感じ、次に3度、その次 にそれ以外の(6度、7度、9度)を感じるというトレーニングを行っています。

(移動ド)
「移動ド」で読むことは合唱活動をしていく上で必要なスキルです。
ドレミファソラシド(CDEFGAHC)を日本語で(ハニホヘトイロハ)と読むことはご存知で しょう。シャープ系はシャープが一つ増える度に(トニイホロヘ)。フラット系はフラット が一つ増える度に(ヘロホイニト)と呼んでいけば調性が分かります(実際の調整には変や 嬰がつくことになるが)。その音を主音(根音)=「ド」と読みかえていくと「移動ド」で 読むことが出来ます。「移動ド」で読むことは相対的な音感覚が身につきますので、上記の 和音の役割の理解にも繋がります。アカペラ合唱では非常に大切ですので訓練して読めるよ うになってください。

<外国語への対応>
世界中の歌を歌ってみたいと思っています。正確な発音や、その言葉を自分の言葉として気 持ちを込めて歌うにはそれなりの努力が必要でしょう。ただし、せっかく楽しみで合唱をや っているのですから世界中にある名曲や楽しい曲、美しい曲をちょっとでも多く味わいたい ・・・というのがコンセプトです。正確に発音する手前のステップとして、下記のような観 点をお持ち下さい。

(アクセント)
日本語のアクセントが強さより高低であったり、ほとんどが語頭にニュアンスとしてくるこ とと比較すると、多くの言語(特に英語やドイツ語やラテン語)は母音の正確さ以前に、ア クセントの位置が重要な要素となります。アクセントの位置を掴むことと、アクセント外の 音節を軽くする(やや曖昧な母音にもなります)ことを心がけてください。(例えば、River  Over 等はアクセントの位置を意識せずにカタカナ的な発音になりやすい言葉ですので注  意を。)
逆に日本語の場合は、語頭をしっかり意識してニュアンスを込めてください。(助詞や語尾 の処理をソフトに)

(母音)
日本語ですら母音は5つではありません。中高生の時代に一生懸命に勉強した英語の発音記 号を思い出していただければお分かりのように「ア」にもたくさんの発音があります。

・母音を構成するのは、例えば「唇」と「舌」の位置や形状です。安易にカタカナに還元し  てしまうのではなく、ここに関心を持つことが大事です。
・その上で統一した概念として持っておきたいのは、どの母音が来ても「共鳴」「響き」が 変わらないということです。ひとことで言うと、「曖昧な感じ」「混ざった感じ」を母音に 持たせてください。

(二重母音)
日本語には二重母音がありません。外国語にが二重母音が存在します。
一つの音の中で歌う二重母音について、日本人はどうしても「アイ」「オイ」というように 二音節を感じてしまうのですが、二重母音はあくまでも(セット)です。さらには最初の母 音が支配的であり、二つ目の母音が曖昧に捉えることが適切です。(例えばMyとかMayとか の二重母音を音符を分割して二音節になるのではなく(アーィ)(エーィ)という感じか。)

(二重子音)
Gloriaに代表されるように、語頭に子音が二つ重なっている場合は、
・一つ目の子音を拍よりも前に置くこと(二つ目の子音、あるいは母音が拍節の頭に来ることを心がける)
・一つ目の子音の後に母音が入らないこと(グ)ローリア=(Guloria)という感じにならないこと

(その他)
英語で言うthe、ドイツ語でのDie Der Den等の冠詞は次の名詞等とセットで歌うことを心が けましょう。特にTheは「ア」の母音で突出しがちです、英語の歌を歌う場合はこれを曖昧母音 にして目立たせない工夫をしなくてはなりません。

<身体を使うこと>
歌は、自己完結することはあり得ません。我々は誰かに対して歌うべきです。
また、我々は録音をするために活動している訳ではありません。客席に向かってLiveパフォーマ ンスをする訳です。
直立不動の歌を歌う必要はどこにもありません。エモーショナルなものと表情、身体とは切り離 しては考えられません。
どうぞ、客席に向かって身体や表情ごと音楽を表現してみてください!



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