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カンティクム・サクルム


「千原英喜 男声合唱作品集について」

この度、私の最も尊敬する芸術家であり作曲家である千原英喜先生 の男声作品集(CD)に関わることが出来て大変嬉しく思います。 すべて、(録り直したいのに録り直しのきかない)ライブ演奏で恐 縮ですが、「なにわコラリアーズ」の定期演奏会で連続して演奏し てきたものを纏めさせて貰いました。新作の少ない男声合唱の世界 ですが、千原作品の数々がますます多くの男声合唱団に歌われるき っかけになることを願います。

…日本の合唱界には「千原以前」「千原以後」という時代分けの ようなものが存在するようにも思います。個々の素晴らしい楽曲そ のものもさることながら、一般的には西洋音楽や教会音楽というも のを重要なルーツとする「合唱音楽」に対し、我々民族のアイデン ティティ(文化的環境、生活習慣、リズム、歴史観、世界観、音楽 観)のようなものをどのように対峙させるのか、我々は何のために 歌うのか、という命題について正面から向き合われているというこ とに、私も合唱人として大きな影響を受けました。また、その問い に対しては、頑なな理屈ではなく、アカデミズムすらも軽く乗り越 えて、音楽家として溢れる豊かなイマジネーションを持って向き合い、 自由な発想でチャレンジされているところが「千原作品」が多くの 人から愛される所以ではないでしょうか?
結局、テキストが何であれ千原作品にはいつも歌に「祈り」や「魂」 や「思い出」や「夢」や「希望」や「勇気」を感じるのです。

「カンティクムサクルム第1集」は「なにわコラリアーズ」の創立 10周年を記念して委嘱した(お酒の席において(笑))ものでした が、テノールの強い「なにコラ」の特性に音を合わせてもらったり、 海外でも何度か楽しく演奏させていただいており、私と「なにコラ」に とって思い出深い作品です。興奮する掛け声と、盆踊り風のリズムは 病みつきになります。ぜひ大勢の男声合唱で歌ってください。

「千原合唱作品全曲演奏」というのが、なかなか難しい私の目標でも ありますが、私自身の達成感だけではなく、千原作品を反復すること によって、わが国における「合唱音楽」というのはどうあったほうが 良いか、歌とは何か、歌うとはどういうことなのか、人生とは何か、 人生の中で歌には何が果たせるか…、という始原的な問いと向き合う ことになると思うのです。歌や合唱や人生の素晴らしさを千原作品が 教えてくれるでしょう。
千原先生、これからも熱い合唱作品たくさん書いてください!

2010年9月発売
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