大学の課外教育〜パネリストとして・・・(3/4)
07−03 2007.10.12
【5−2】クラブ・サークル)を取り巻く問題点
○就職活動の早期化→2年生でリーダー
○カリキュラムの多様化
→一堂に集まって練習するクラブへのダメージ
○キャンパスの多拠点化→コミュニケーション不足
○学術系団体の使命感の低下
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● クラブ・サークルの現状における問題点
ところがクラブ・サークルの現状にはいくつかの問題点が存在します。例え
ば就職活動が早すぎて、3年生は秋学期になるともうそわそわしはじめ、2
年生の後半くらいからリーダーになっているということなどは象徴的な例で、
昔は4年生が神様のようになっていた時代があり、年功序列や縦社会の弊害
もあったでしょうが、今はフラットになり過ぎたり、リーダーの若年化によ
る弊害が強いのではないかと思います。
あるいは、キャンパスが多拠点化していることや、授業日程が過密になって、
一堂に会する時間が減っていることなども組織の脆弱化に拍車をかけていま
す。私なども、出身団体のクラブの練習場に行くと、練習に来ている人があ
まりにも少ないので驚いたりしたのですが、よく考えてみるとまだ5時間目、
6時間目の授業があったりとか、さまざまな授業の取り方が可能になってき
たりしているので、クラブ・サークルには打撃です。あるいは学術系のクラ
ブ・サークルというのはそもそも使命感が低下しているのかもしれません。
と言うのも、正課のなかでもさまざまな工夫があって、例えばフィールドワ
ークがあったり、プロジェクト的な科目があったりして、学術的な学生の研
究会などよりもゼミ等で面白いことをやりだしたりしていますので、サーク
ルに入って勉強するより正課授業の中で十分にバリエーションがあるという
ようなこともあるかもしれません。
【5−3】文系クラブ・サークルの支援ポイント
○新たなカテゴライズ(練習系/企画系/学術系)
○申請主義による補助金制度の導入
@クラブ活動の高度化(スキルアップに繋がる)
Aクラブ活動の一般化(社会との繋がりを意識)
Bクラブ活動によるキャンパスの活性化
○お金と場所という支援からの脱却
→アドバイス(情報)とオーディエンスの獲得
→情報交換、クラブ活動実態の把握と機能的分析
→リーダーの養成、公認団体同士の連携
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● クラブ・サークルへの支援方策
そういった状況の中でどのような支援が支援と言えるのかということは非常
に難しいことです。スポーツ関係ですと、もちろん勝つだけが目標ではない
と思いますけれども、とりあえず「勝ち負け」「記録」という非常に分かり
やすい指標があります。それに対して文化系団体の場合は非常に多様ですの
で、それぞれの系列によって支援ポイントが違うのではないかと考えました。
例えば、交響楽団とか合唱、楽器、演劇、伝統芸能・・・、こういったところは
スキル獲得という非常に明確な目的があり、大人数で活動するという状況が
あります。それに対してアカペラとかバンド系というのは気の合った者同士
のわりと数人で出来ます。これを同じように支援していっても、一方には効
果的でも一方には効果的でない・・・ということになったり、あるいは、大学と
してどのように学生を誘導していくのかという時に違いが出てくると思って
おります。
ポイントを見極めていって、今、同志社大学でも第1歩目ぐらいなのですけ
れども、すでに始めていることからご紹介します。非常に単純なことですが、
例えばヒアリングをしています。これが意外とやれていないのですよね。こ
のクラブがこんな活動をしていたのか、とか、このサークルはこんなことで
困っていたのか、ということを意外と大学の人たちは知らなかったりします。
補助金などもばら撒きではなくて、申請主義によって効果的にお金が回って
いくようにしています。例えば交響楽団の年間予算というのは本学の場合に
は軽く2千万円を超えている訳です。それに対して学術系の研究会の年間予
算は数万円にしかならない。その両団に同じように10万円ずつ補助しても
効果的ではないと言えるかもしれません。
ですので、「活動の高度化」「活動の一般化」「キャンパスの活性化」とい
う観点から10項目ほどをもうけて補助金を出す仕組みに変えてみました。
項目の中には「遠征費の補助」や「指導者謝礼の補助」「高額備品の補助」
等が含まれていますので、団体によっては複数の項目で重複して補助金を受
けることが可能です。
またモチベーションアップのために、補助金ではなく表彰制度(奨励金)を
設けることを検討中です。
しかしながら、新たな支援ポイントの中心はお金やものではなく、関与し、
アドバイスをしていくということだと思っています。アドバイスということは
非常に当たり前のように感じますが、例えば今まではクラブ・サークルの顧問
というのは判子を押すだけの存在であったのだと思います。そこに対しても、
もう少しアドバイスをください、せめて1年生がどれくらい入ったかとか、
4年生がきちんと就職できたか、ひとこと声を掛けてやってくださいというよ
うなことをお願いしています。それに顧問というのは教員の方が多いと思うの
ですが、職員に副顧問になってもらって複数で支援してもらうことを奨励し、
ほぼ実現していっております。ささいなことですが、大学の先生を見つけて
判子をもらうこともけっこう大変ですが、職員というのは毎日出勤しているの
で、どこどこ事務室にいけば副顧問がいるということになると、行きやすいと
思いますし、学生が勝手に顧問の判子を持って押しているという現象ではなく、
きちんともらいに行って「頑張れよ」のひと言をもらって帰ってくるようなこ
とになると思っています。
目に見える現実的支援としては広報的な支援も有効だと思います。大学の広報
誌に掲載したり、大学の行事で情宣させてあげる・・・そんなことがはかなり有
効だと思います。
我々がやっていて非常に効果的だったのは、先ほどホールで課外プログラムをや
っているという話をしましたが、そこには地域の方もたくさん参加してもらって
いましたので、ホールの名称をとって「ハーディ友の会制度」というものを発足
させました。友の会に入ったらいろいろな行事のご案内をいたします・・・、という
ことで募集したところ、2年ほどたって会員は2000人を超えるまでになって
きました。その「友の会」の方々に向けて大学の「クラブ・サークルの活動」を
紹介するわけですね。演劇団体がこんな公演をします、交響楽団がこんな公演を
します・・・、というふうにです。友の会の方の中には比較的年配の方で時間のある
方も多く、何か情報を探しておられる方も多いので、学生の発表会のようなもの
にも足を運んでくださる。
それまでは近所で迷惑をかけることのほうが多かった学生でしたが、そういう発
表の場を見ていただけると「大学生もけっこうがんばっているんだ」と感想をもって
もらったり、卒業コンサートのような場面には一緒に涙を流してくださるような状
況も生まれてきています。
今年の夏には、「クラブ・サークル」「一般学生(課外プログラムとして)」
「地域の大人と子ども」が一緒になって「合唱劇」というものに取り組みました。
もともと合唱サークルのサマーコンサートが予定されていたのですが、いつも集客
がのぞめず、ほとんど身内だけでやっていますので、その後半のステージに大学の
課外プログラムである「うたとお芝居のワークショップ」の発表の場をミックスさ
せたのです。ワークショップにはもともと「合唱」「演劇」の指導者がおりますが、
さらに合唱サークルのメンバーも加わってプログラム参加者をリードしながら、子
どもや大人たちと一緒に練習をし、交流も広げました。広報的な支援は大学がしっか
りとバックアップしたことにより、マスコミにも取り上げられ、超満員のホールで
クオリティの高い演奏会を持つことが出来ました。
大学生と子どもという組み合わせの効果も高く、「クラブ・サークルの活性化」と
「課外プログラム」と「地域連携」という1石3鳥の効果を生んだ成功例だったと
考えています。
【5−4】クラブ・サークルの新たな支援ポイント
○大学として課外活動を積極的に評価
→表彰制度等(そのため高度化を目指す)
○副顧問制度、OB会の活用
(大学との接点を強化、情報バンクとしての機能)
○地域社会(諸学校含む)の活用
(社会との接点:スキルの提供とサポートの獲得)
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また、それらのことを含めた様々な課外活動団体の紹介記事や、課外プログラム
の情報を掲載した冊子を発行しています。地域情報も盛り込んで、さながら地域
コミュニティ誌のようになっている冊子発行を実は広告研究会という学生団体に
依頼しています。それまでは、大学で課外プログラムの宣伝をしていたのですが、
けっこう大変だなあと思っておりました。広告研究会に委ねることにより、彼ら
のモチベーションアップと大学側の労力削減という双方の効果と生み出しています。
こういった、お金とものだけではないクラブ・サークルとの関係性を構築してい
くことが大事なのではないかなあと思ってます。
続く・・・
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