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大学男声合唱団の現状と展望・・・(3/3)

■発想転換(再掲込み)
合唱連盟では、この間のコンクール改革で大学・ユース部門を一緒の カテゴリーとして編成しました。このことの成否を問うというよりは、 そこに至った視座・ビジョンの表明と議論、意識の共有にはやや疑問 を感じるところです。大学カルチャーやコミュニティ形成プロセスに 果たす大学合唱の役割や、大学集中のある東京・関西圏と地方事情の 乖離に対する理解等、様々な要因を総動員して議論展開されなければ、 「全国大会に出場するのに有利か不利か」という最もつまらない議論 にしかならないように思います。
そのようなものではなく、人生の骨格を作る大学時期に、社会性と情 緒性のキーともなる「言葉」を媒介とする芸術を巡って知力と体力と チームワーク(一人ではできない)を結集する合唱がどのように効果 を発揮するかという議論がなされるべきでしょう。
以前に紹介した年末の学生指揮者指導者合宿は相変わらず300人を超 える参加者を保っていますが、合唱指揮者協会(関西支部)のほうで は、この秋に、そこからスピンオフした「学生合唱コンペティション」 を開催する予定となっています。初年度ゆえ、大学生団体の参加はまだ まだ少ないようですが、有名企業の会長格を審査員の一員に加え、勝ち 負けだけでない交流会や講習会等を挟むことによって、大学での合唱活 動が社会的活動や将来の仕事の業務(あるいは就職活動)にどのように 好影響を与えるか、というようなこと等を分かち合い、大学生たちが クラブサークルで、何を課題とし、何を楽しみとし、何を過去や先輩 に頼り、何を自己突破していくべきかということについても大学生た ちと一緒に探っていこうと思っています。
また、個人的には男声合唱を支えるべく、(男声合唱より深刻だと思う) 魅力的な大学世代の女声合唱の編成や活動スタイルの模索も合唱展開の 構造上必要なことなのかもしれないと思っています。

また、以下は、以前の文章の繰り返しになりますが、繰り返し述べてお きたいと思います。つまり、大学男声合唱に対するノスタルジーから離 れて我々はもっと発想を変えていくべきではないかということです。
日本人の20代〜40代の男声は果たして歌を歌えているでしょうか? とてもそれどころではない空白期間を過ごしながら、定年後を見越して 50代から復帰してくるということになっていないでしょうか?そうい う意味では、大学男声合唱団の復権ということ以上に、社会構造を一気 に乗り越えていくべき発想が必要なのではないでしょうか。
東京一極集中も気になることですし、合唱ファンが内輪に閉じている感 じも気になるところです。例えば、私の指揮する「なにわコラリアーズ」 でも若手社会人は土日もない過激な業務に追われて、入団してもどんどん 転勤を重ね、やがて東京に集中していきます。合唱団に限らず、恐らく大 人の男性が地域文化にも参画できない状況や、中央一極集中に近い文化の 発信構造があると思うのです。また、身内に閉じず一般的にも興味を持っ てもらえるような形での文化発信という意味でも、男声合唱団のレパート リーや発表の場面そのものにも、大いに改革の余地がありそうにも思います。
それぞれの地域や年代から男声合唱について考えるということは、疲弊し たサラリーマンを生み出す社会ではなく、成熟した大人の文化を生み出す 社会を考えるということでもあり、我々は「合唱で何が出来るか」という ことを考えて、後輩たちにとって魅力的な活動を広く発信していくことを 考えていく必要があるのではないでしょうか。大人の男声合唱団が、学生 の見本になるような生き生きとした活動をしていくことも、回り回って大 学男声合唱を再興(いや新しい形で活性化させていくこと)に繋がりはし ないかとも思ったりもするのです。

2014年Jamca通信より
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