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 大学の課外教育〜パネリストとして・・・(2/4)

07−03 2007.10.12

● 課外プログラムの役割について

一つはサービス型のプログラムです。
WOT(What's on Thursdays=木曜日には何かある)というプログラムが ありますが、大学の中のホールを使って映画上映や音楽会をしたり、講 演会、トークショーをしたりしています。もしかすると、昔は学生のほ うが自主的に自分たちで映画を上映したり、いろいろな取り組みをして いたのかもしれません。もちろん今でもそういった活動はありますが、 大学のほうから提供する・・・、あるいは共催プログラムとして新聞社とか 行政のイベントを誘致して、学生に無料や格安で見せるというようなこ とをやっています。

体験型のプログラムとしては、@プログラム(Act Together Program) があります。これまでに学生を連れて四万十川や富士登山、長野の雪山 や瀬戸内海の無人島に行ったりしました。これなんかは、当初は「学生 部は遊んでいるのか?」とお叱りを受けたものです。しかしながら、実 際には子どもの頃から魚釣りも川遊びもしたことのなかった大学生たちが、 ダムの議論をしても理屈合戦にしかならないということもありますし、 学生には決定的に体験や経験値が不足しているという側面があります。
また、学生生活実態調査の結果等を読み込み、学生に必要なことは、「少 し小さな課題を友人や教員とともに乗り越えて行く体験プログラム」であ るという分析結果を用いてプログラムに援用したりしています。ですから、 教職員スタッフが帯同し、共に取り組むことが前提となっているプログラ ムで、教職員にとっては大変なのですが、やってみると大きな成果があり ました。アウトドアの高揚感の中で友人を得たり、先生と夜を徹して話し 合う経験は学生にとってはやはり貴重だったようで、その後は学生たちだけ で、別のプログラムを計画するというような展開も見られ、重要な実験プ ログラムにもなりました。

函館キャンプは、校祖新島(21歳の時、志を持って函館からアメリカに脱国) の足跡を辿りながら、自分を見つめ、仲間とディスカッションするという古 くからの内容ですが、函館という土地もあっていまだに人気プログラムの一 つです。新規のCLAPというプログラムは、半期くらいのスパンで演劇や合唱 のジャンルにチャレンジし、ワークショップを積み重ねて発表会をしようと するものです。

それ以外にも「教養型、啓発型」等、ジャンル分けをしながら課外プログラム だけはバーゲンセールをするほどたくさんやっています。着付け教室から、茶 の湯教室、フラワーアレンジメント、食育や文化史を含んだテーブルマナー講 習や、フラワーアレンジメント、アニメ作り、人形劇作り・・・、これなんかもそ ういった「遊び心」の要素をエッセンスとしては持ちながら学生を引き付けたり、 学生がどういうところに関心を持つのかを観察したりしています。
また学生だけではなく、近隣の方にも枠を広げ、一緒に体験してもらうことに よって、相互の理解や交流が広がったり、学生と地域の方が混ざり合って楽し まれているという状況も生まれています。

また、ここでは主題ではないのでさらっとだけ紹介しておきますが、障がいをも った学生の支援スタンスを、支援するスタッフ側のコミュニティ形成という視 線に立ってコーディネートしています。中身は違うのですけれど、似たような 仕組みとして大学のホール運営を学生の手で行なっています。
実施の運営にはプロフェッショナルの業者が入っているのですが、ホールアート という形で学生を雇い、「照明、音響」等のアシスタントスタッフを務めるほか、 レセプショニスト、企画、アナウンス、ポスター作り、誘導・案内等に学生を起 用しています。障がい学生支援のスタッフとこのホールアートにはアルバイト代 が出ており、完全なボランティアではないのですが、実際にはボランタリーな精 神が涵養されたり、学内のコミュニティ形成に寄与している側面が大きく、一種の 課外プログラムとなっているのではないかと思っています。

【4】正課外教育の役割〜課外プログラムの必要性と取り組み内容
(参考)個人支援−同志社大学学生支援課提供の各種プログラム
 ○サービス型(WOT/ふらっと…毎週定期的にホールを使った音楽会、講演会、映画試写会等)
         (寒梅館活用術…着付け教室、茶の湯講座、テーブルマナー講習、フラワーアレンジ)
 ○教養型(アッセンブリーアワー…講演会等/クローバーシアター…DVD名画上映会)
 ○教育型、体験型(函館キャンプ/@プログラム・・・四万十川下り、富士登山、無人島キャンプ)
             (CLAPワークショップ・・・演じてみよう、メサイアを歌おう)
 ○コミュニティ形成型(フレッシャーズキャンプ/障がい学生支援制度/スポーツフェステバル)
 ○自立支援型(アッセンブリーアワー学生企画・・・上記AHを学生が企画プロデュース)
 ○ぴあアドバイザー制度/ぴあメンター制度/留学生ぴあアシスタント/学校教育ボランティア制度)
 ○各種啓発事業(エンパワーメントプログラム/S-cubeセミナー/TOEIC対策他講座)

こういった取り組みの中では、アイデアは重要だとは思いますが、我々が留意しているポイント というのは、決して思いつきに頼らず、「学生が成長していくこと」「他者との関係性に気付く こと」「コミュニティの形成プロセスと展開」を検証していくことです。
つまり、自己完結しないとか、小さく閉じないということを意識しながら、全部大学がやってし まうのではなく、大学は「機会を創出」「情報提供」「指導」「奨励」「評価」「シェアリング」 を経て、次に繋げていくというような課外プログラムの展開を意識しています。

■個人を対象にした「課外プログラム」で意識している点
○ライフスキル⇒[学生個人の成長](批判的的思考力、問題解決能力、差異の認識力、意思決定力)
○ピア/メンター⇒[他者との関係性](自己のアイデンティティ、必要と(する)されること、想像力)
○ネットワーキング⇒[コミュニティの形成プロセスと展開](一般学生、教員、他大学生、地域社会)

<費用/備品/施設だけではなく理念に基づき集積した情報の提供とコミュニケーション>
[機会創出]⇒[情報提供]⇒[指導]⇒[励まし]⇒ [評価]⇒[シェアリング]⇒[一般化]⇒[還元(展開)]

続く・・・

          
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