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大学男声合唱団の現状と展望(続)(2/3)

■実際のところどうなのか?
つまり、上記のような例からも、少しずついろんなことが「回復してき ている兆しはある」ということが言えるのだとは思います。しかしなが ら、本質的にはこれっぽっちの事実を拡張し「復活してきた(皆さんが ほっとするのはこの言葉)」とか、「いやいや、中身が全然伴ってない (皆さんが、やっぱりそうか、と思う言葉)」とか、そういう短絡的な 言い方で表現すべきことではないようにも思うのです。実際のところ私 たちが期待すべき大学男声合唱というのは何なのでしょうか?
余談ですが、私が人数の減った同志社グリークラブに対して、一時期ト ルミスを中心とする比較的少人数で取組み易い北欧の曲をレパートリー にしていたとき、周囲のOBらからは「また訳のわからない難しい曲を演 奏して」と言われ続けたことがあります。もちろん、演奏が説得力を持 つのかどうかということが肝心ですので、その人にとっては演奏が今一 つだったということでもあるのでしょうが、私たちは、「自分がよく知 っている曲」「なつかしい曲」「なつかしい歌い方」をどこかに求めて いるように思います。ちょうど青春時代の歌謡曲が心から離れないのと 同じです。冷静に分析すると、そこは「訳の分からない曲」ではなく、 「わしの知らん曲」ということなのでしょうね。
しかしながら、現状を分析すると、男性と女性の比率が均等になり、大学 の環境が変化していく中での男声合唱の位置づけを考えねばなりません。 趣味が多様化し、女子大のコーラス部が無くなって行く中でのギャラリー 確保の難しさや、6講時までぎっしりと授業が詰まっていたり、就職活動 が延々と続く現状、あるいはグローバル化が急がれるあまり、英語や様々 なサブスキル(資格や留学経験)等が必要とされる状況があるとか、大学 院進学率が高い理系の学部がむしろ(就職活動が少ないから)大学男声合 唱団を支えている部分があるとか、世代的にも、ゆとり世代、さとり世代 等に該当し「熱い活動」という言葉を語るも「熱い」の中身がずいぶん違 っているとかとか・・・、一定年齢以上の大学男声合唱の世界を知っている人 たちが一般的に体験しているような大学生活からは全く考えられないような 環境の中で、現在の大学男声合唱活動が行なわれていることを考慮しなく ては意味がありません。何かの成果や自己の懐かしさと照らし合わせて 「良い活動」というのではなく、視座の据え方とかビジョン設定の仕方と か、ミッションとか波及力とか、「創意工夫がなされ、人生に良い影響を 与えているか」とか、そういった文脈で語られるべきことでもあるのでしょう。

■大学男声合唱団に期待すべきこと
単純な話に戻したいと思います。私はこう思います。きっと混声合唱団 では遠慮してしまうようなことでも、男声では学生同士で厳しく詰める ことが出来ます。つまり、一定時間を共に過ごすことになる大学時代の 男声合唱団でしか追及できない音楽の魂のようなものがあるとも信じて います。先生の指導下にいる高校時代とは違い、知力と体力と感性とが 充実した大学時代に、ひたむきに取り組んだ同性の友を作ることはかけ がえのない財産になるのではないでしょうか。そのためには、周囲の大 人が現状を理解した上で、フレキシビリティを持ちながら、アドバイス をし、熱く思いを語り、励まし、お金を出し、声掛けし、時々成果を見 に行ってやれるかどうか、ということなのではないでしょうか?当たり 前に過ぎるのですが、この地道な関わりが、大学男声合唱を活性化させ ていくために重要なことだと感じます。

続く・・・

          
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