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大学男声合唱団の現状と展望・・・(3/5)

■今後の展望
さて、このようなネガティブな材料しか並べてきませんでしたが、結論的には、 私はそれでも大学生と大学合唱のポテンシャルや可能性を信じるものです。
2008年の年末、私が実行委員長になって大阪で一泊二日で「学生指揮者・ 技術系合宿」(日本合唱指揮者協会関西支部主催)なるものを開催しました。

「音楽的基礎スキル」「クラブ活動という活動形態を想定したソーシャルスキル という問題(コミュニケーションのとり方、スケジュール管理の心がけ)」 「合唱を楽しもう」という3つの観点から、そうそうたる合唱指揮者にも協力 してもらいました。講習はアカデミックなものになり過ぎることではなく、 「きっかけ」や「発想の転換」を与えることや、学生技術系の現状に根ざした アドバイスを心がけてもらいました。また、この集まりでは、大学間を越えた 横のつながりを持ってもらうことを主眼としましたが、そもそも50〜60名の 参加を目論で計画したことが、西日本全般から150名以上の参加を得たこと、 また講習等に対する積極的な姿勢だけでなく、深夜に及ぶ交流会の様子、各講 師を捕まえて積極的に意見を求める様子等を見ていると、主催者の予想を遥か に超える意義と効果があったことを目の当たりにしました。

県内に大学合唱団が少なく、交流と刺激を求めての参加であった合唱団も 少なからず見受けられましたが、どの団体でも「似たような悩みを抱えて いること」、逆に「自分たちで当たり前だと思っていたやり方とは、全く 別のやり方や方法があることに気づいたこと」が、多くの参加者から語ら れました。参加者については、若干のOBや社会人が混ざることを意識して 呼びかけてみたのですが、未経験者の輪の中に経験者が加わることによって、 経験者にはフィードバックの機会を、未経験者には安心や勇気を与えるこ とにもなる「縦のつながり」が生まれ、非常に闊達な交流がなされている のが印象的でもありました。

別の例として、一昨年の夏、私が技術顧問をしている同志社グリークラブで 参加させてもらった「軽井沢合唱フェスティバル(耕友会主催)」でも、学 生の成長が目覚しかったことを思い出します。二泊三日のヨーロッパスタイ ルの合唱フェスティバルですが、初日は大学生らしく?、「講習中居眠りを する・移動時もだらだらしている・他の団体への挨拶等もいまひとつ」な態 度が目立ったグリーメンでしたが、雷を落として、練習をして臨んだコンサ ートでグリーメンは満員の客席(各地からの一般の参加者)から万雷の拍手 を受けました。恐らく活動を通して異郷や異世代の人から直接的に応援して もらった経験に乏しかったのでしょうか、フェスティバルの趣旨でもある「 万雷の拍手で音楽を育てよう」というスローガンの通りに、彼らの感受性が 一気に覚醒した瞬間を見ることが出来ました。その後の交流会を通しても積 極的な姿勢に転じ、その年の後半はコンクールにチャレンジして全国大会に 出場を決めたり演奏会でも多くの集客を得たりと、この経験値が大きく作用 していることが傍目から明らかでもありました。彼らは「頑張っている自分 たちは必ず応援される」という自信を得たのではないでしょうか。

この二つの現象は、「大学生は放っておいては何も出来ないが、少し切っ掛 けを与えたり、出会いを与え、背中を押してやると、もともと持っていた頑 張りたい気持ちに自信が得られて前に進むはず・・・」という私の持論を裏付け ることにもなったように思うのです。

続く・・・

          
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