わらべうたプロジェクトDVDの作成

2010.3.15

「でまち家」がなぜ誕生したのかということと、その取り組み予定については かつて紹介したことがあったかと思います。大学に勤めている私にとって大学 生の現状を考察し、とそれに対する支援方策として提案し、具現した大変思い 入れのある「でまち家」でしたが、結局プログラムはほとんど実行できないま ま去っていくことになったのでした。

京町家で大学生の地域交流を
やっとオープンそして、さようなら京町家


しかしながら、その後、「でまち家」自体は立派に活躍しています。時々通り かかると学生の生き生きした様子、子供が元気に遊んでいる様子、近隣の方々 が暖簾を覗きながら大きな声をかけている様子なんかが見受けられ、私の目指 していた世界が確実に実現されていることに感動します。町家を媒介にしてジ ェネレーションが混在して空気が動いているようで、うれしい限りです。私の 後のプログラムコーディネートを引き受けてくれたKさんには感謝です。→ でまち家日記。

さて、これは国の助成を受けた3年プログラムですが、最初から2年目の後半 に予定していた「わらべうたプロジェクト~京都のわらべうたを学んで子供と 一緒に遊ぼう」には、講師として関わらせてもらうことが出来ました。
「わらべ歌」に関しては、研究者が年配の方から「採譜する」ということ、も しくは「芸術性を重視した録音」等は大変尊いことであると思いますが、私自 身は今回は研究家や合唱指揮者としてのスタンスではなく、あくまでも地域コ ミュニティの再構築のために「わらべうた」の持っていた特徴を再考し、利用 しながら、大学生が成長していく環境を考えることでもありました。つまり、 「合唱団が録音する」とかではなく、実際に大学生が年配者から学び(旋律や 遊びの型だけではなく、「思い」や「背景」を含めて)、そのことを踏まえた 上で近所の子供たちに歌わせたり遊ばせたりしてみなければ意味がないと考え ましたし、現代的な生活の中にそれをどう生かすのか、という課題も持っての ぞんだのでした。

遊びを学ぶ 遊びを学ぶ
10回ほどの講座(大学生と年配の方が一緒に参加)の中身は非常に充実した もので、発見も多く、実りのある体験をすることが出来ました。大学生が「と おりゃんせ」を知らない、というのも驚きの事実でしたが、実際に子供たちと 一緒に遊ぶと、このような悠長な?遊びでも面白いですし、大変盛り上がりま す。(寒い時期でしたので実際に温まるための遊びなども)今更言うことでも ありませんが、「わらべうた」は遊び歌であり、旋律だけが舞台できれいに歌 われるということが想定されて作られた曲ではありません。
小学校にてそしてその遊びにはぶつかりあったり触れ合ったりする「スキンシップ」はも ちろんですが、「コミュニケーション」を取り合って一体感を醸成していく仕 組みや「季節を中心とした生活上の工夫」「刷り込み、覚えさせておきたい教 訓やルール」等が練りこまれているものです。また遊びの中からリーダーが決 まっていったり、リーダーをフォローする人が出てきたり、一人ぽつんとして いる人をさりげなく中心に引っ張ってきてくれる人がいたり、先輩から後輩へ と引き継がれるものがあったり、お兄さんやお姉さんとも言える年長者にもき ちんと役割があることが良く分かります。町家で子供たちが遊んでいるのを見 ると、「きっと、おばあさんやおじいさんが近くで見ていて、時々子供らを怖 がらせたり安心させたり、言葉の意味を教えてくれるという場面があったり したんだろうなあ」と思ったりもしたものです。遊びの中には様々な時代背景 や、その時代その時代の人々の子供に対する願いや祈りのようなものが込めら れていることもみんなで実感することが出来ました。

小学校にてたくさんの発見をしたあと、締めくくりとしてこの取組みの成果をDVD録画さ せてもらいました。町家とホールで2日間に分けての録音録画で大変でしたが、 大学生も奮闘してくれましたし、協力してくれた「みやこキッズ」の子供たち、 「藤ノ森小学校」の子供たち、プログラム参加者も一緒になって楽しく大騒ぎ しながら収録しました。ついでながら、この期に「新しいわらべうた」なんか も作ってみました。通り名の歌である「まるたけえびす」ならぬ「地下鉄烏丸 線のうた」、京都の名所を回る「ひいふうみい」のうた。みんなで覚えておこ う!という感じで、「京野菜のうた」「京言葉のうた」。それから、私の好き な季節や暦の歌ですが、京都の季節行事を順番に巡っていく「京の暦歌」を作 り、それぞれ単純な旋律で歌いながら大学生の考えた遊びで子供たちを遊ばせ てみました。

小学校にて「近頃の子供は…」という嘆きではなく、子供たちは場面さえあれば、どんな 遊びでも楽しんでくれます。大人のほうも昔のやり方や一つの流儀に拘りすぎ ず、上手に場面設定していくことも大事かなと思います。そしてそこに大学生 が大きな役割を果たせることは間違いのないことです。京都には他の地域には ない特徴と財産があるので、そのことに気づいて、具体的方策をどんどん打っ ていけば地域力の再生は夢ではないと感じました。「わらべうた」的なもので 「子供たちが声を出しながら」遊んでくれる場面が増えていくことはもちろん、 子供の頃大変楽しみだった「地蔵盆」や、盛んだった「町内会対抗の運動会」 等、ジェネレーションが入り乱れながら地域の力が活気を取り戻すことを願っ ています。

※CDではなくDVDにしたのは大正解だったようです。歌だけでなく遊びが分か りますので非常に面白いものになりました。子供たちは可愛いですし、実際に 遊んだことがある世代にとっては懐かしかったり、流儀?や言葉が違ったりし ますから、盛り上がることも間違いなしです。新しいわらべ歌には大学生作成 の「アルゴリズム体操」が施されたりもしております。興味のある方はご一報 くださいませ。

「京都のわらべ歌を集めて子どもたちに教えよう」(プロジェクト紹介文)
京のわらべうたチラシ (PDFファイル)
新しいわらべうた(作:伊東恵司)