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演奏の場面で・・・アルティ声楽アンサンブル

 アルティ声楽アンサンブルフェスティバル パンフレットより 
青ライン 2005年7月(第2回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2005に寄せて

昨年、試行錯誤のうちにスタートしたアルティアンサンブルフェスティ バルですが、今年は「世界合唱の祭典京都」の前夜祭という趣で開催することが出来まし た。歌とは、生きるために必要なもの。共に歌う合唱は共に生きていることを確認し合う 作業でもあると考えます。
アンサンブルフェスティバルでは、少ない人数で歌うとことになりますが、テクニカル的 なこともさることながら、そのプロセスで一人一人のかけがえのなさや、個性、表現すべ きこと、果たすべき役割を確認し合うことが出来ます。それこそ、歌うことにより、我々 が世の中で、(生き、生かし、生かされること)の実感に繋がる作業といえるのではない でしょうか?
まだまだ試行錯誤の途上にも関わらず、講師の松下先生をはじめ、ゲストの2団体(藤井 先生、雨森先生)をお招きすることが出来ました。国内最高峰レベルの刺激を受けること により、ポテンシャルを秘めた京都の町にアンサンブルや室内合唱の考え方が発展してい くことを期待します。お互いの演奏を聴き合い音楽やそのアプローチを分かち合うこと、 また、聴き手と歌い手が気持ちを交し合い、語り合えるような交流が出来る催しとなりま すよう。

青ライン 2007年7月(第4回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2007に寄せて

祇園祭の京都は夏の始まりの暑さとわくわくするような賑わいの雰囲気 に包まれています。祇園祭は町同士のお祭りとも言えますが、京都の町は旧来、相互扶助 や自治意識が高く、世代を越えた人と人との繋がりが地域の力として様々な文化形成に繋 がってきたと聞きます。
アンサンブルフェスティバルでは、わりと少ない人数で歌うとことになりますが、テクニ カルなこともさることながら、そのプロセスで一人一人のかけがえのなさや、個性、表現 すべきこと、果たすべき役割を確認し合うことが出来ます。
歌うことにより、(ステージ上で完結するのではなく)我々が世の中で協力しながら「生 き、生かし、生かされていること」を実感することに繋がっているとも言えるのではない でしょうか?

有志の協力による手作りの企画であるにも関わらず、講師の桑原先生、松下先生をはじめ、 ゲストの2団体(「小田原少年少女合唱隊」「Vox Gaudiosa」)をお招きす ることが出来ました。どちらも世界に誇るべき素晴らしい合唱団です。国内最高峰の刺激 を受けることにより、京都の町にアンサンブルの楽しみが広がり、交流の輪が広がってい けばと思います。今年の大テーマは「愛の歌を歌おう」です。選曲を縛るのではなく、気 持ちのこもった歌声でステージと客席が愛に包まれることを期待したいと思っています。

青ライン 2008年7月(第5回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2008に寄せて

有志の手による試行錯誤の繰り返しで実施されているアルティ声楽アン サンブルフェスティバルですが、いよいよ5年目を迎えることが出来ました。競い合うの ではなく「集い、学び、歌い、聞き、語り合う」新しいタイプの合唱フェスティバルとして、 少しずつですが広がりを見せてきており、とても嬉しく思っています。この数年間で数多く の団体に演奏をしてもらっていますが、最も面白いのは選曲の方向性や得意不得意を含めた 合唱団の「個性」であるように思います。我々はアンサンブルを通して、一人一人のかけが えのなさや、果たすべき役割を確認し合うことが出来ますが、個々の集まりが集団としての 個性を形成していることにも気付かされます。それぞれの団体のそれぞれの音色によるアプ ローチ・・・これこそ音楽の楽しみ方の醍醐味と言えるのではないでしょうか?祇園祭の京都の 賑わいとともに、全国から来られた様々な団体の個性を味わってもらえればと思っています。
今年は、アルティの「顔」として4年連続で講師を務めていただいている松下先生と「国立 音楽大学女声合唱団ANGELICA」の皆さんに加え、ご多忙な中、雨森先生と「合唱団 まい」の皆さんにもご参加いただくことが出来ました。
この場が、新しい出会いに満ちた楽しい場になりますように。

青ライン 2009年7月(第6回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2009に寄せて

今年の三月に私たちは精神的支柱であった吉村信良先生(前全日本合唱連盟理事長) を失いました。このフェスティバルの座長でもあった吉村先生は、ある練習の後に私 に手招きをして、「君が興味がありそうな話があるよ」とおっしゃいました。それが、 この、競い合うのではなく「集い、歌い、聴き、学び、分かち合うことを趣旨とする このアンサンブルフェスティバル」の計画だったのです。その時、私に言われたこと は、「君にぴったりだと思う、ともかく責任は私が取るから、君が好きなようにやり なさい、出来たら君よりも若いメンバーでスタッフを編成するといい」ということで した。まさに親分の真骨頂!。以来このフェスティバルの開催は私にとって、自分自 身へのチャレンジであるとともに、多くの人のご厚情や人との繋がりを感じる機会に もなっております。競い合うことを主眼としないことで滲み出てくるのが合唱団固有 の音色であり、個性でもあります。また緊張感だけでなく「大らかさ」というオブラ ートで包み込むことによって合唱本来が持ちえているポピュラリティに開かれている とも言えます。このフェスティバルでは、歌うことにより、(ステージ上で完結する のではなく)我々が世の中で協力しながら「生き、生かし、生かされていること」を 実感する催しに繋がっていく可能性があるとも言えるのではないでしょうか?吉村先 生を失った後、幸いにも、最もこのフェスティバルの趣旨を理解してくださる日本の リーダー松下耕先生に「特別顧問」に就任していただき、フェスティバルの行く末を 見守っていただけることになりました。

あくまでも有志の協力による手作りの企画であるにも関わらず、今年は信長貴富先生、 藤井宏樹先生はじめ、関西初上陸のゲストの団体(「Ensemble PVD」) をお招きすることが出来ました。国内最高峰の刺激を受けることにより、京都の町に アンサンブルの楽しみが広がり、交流の輪が広がっていけばと思います。ぜひ、 「夏の歌、夏の色」という大きなテーマのもとに繰り広げられるフェスティバルをお 楽しみください。気持ちのこもった歌声でステージと客席が愛に包まれることで、天 国の吉村先生がにっこり微笑んでおられることを想像したいと思っています。

青ライン 2010年7月(第7回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2010に寄せて

有志の手による試行錯誤で実施されている「アルティ声楽アンサンブルフェスティバル」 ですが、いよいよ7年目を迎えることが出来ました。競い合うのではなく「集い、学び、 歌い、聞き、語り合う」合唱フェスティバルとして、少しずつではありますが、近畿圏 外からの応募もあり、広がりを見せていることを嬉しく思っています。この数年間で数 多くの団体に演奏をしてもらっていますが、最も面白いのは団の目指す方向性が垣間見 えることや、得意不得意を含めた合唱団の「個性」が感じられることであるように思い ます。我々はアンサンブルを通して、一人一人のかけがえのなさや、果たすべき役割を 確認し合うわけですが、個々の集まりが集団としての個性を形成していることにも気付 かされます。それぞれの団体のそれぞれの音色によるアプローチ・・・これこそ音楽の楽 しみ方の醍醐味と言えるのではないでしょうか?

このフェスティバルが名高い「軽井沢合唱フェスティバル」と緩やかな連携をしてい ることは既にご存知かと思いますが、実は今年から大阪におきまして同様のコンセプト を掲げた「コーラスめっせ2010(春開催)」なる催しを開催いたしました。こちらの ほうは大都会である大阪を拠点に「コーラスの見本市とも言うべき、情報の相互発信 と交流のイベント」として大規模に育てていきたいと思っています。全国を見渡すと、 同様の企画イベントの萌芽が見られます。一つの土俵で競い合い優劣を決する時代で はなく、新しい時代に突入していることの証でもありましょう。合唱を愛する様々な 人が様々な場で出会い、価値観を分かち合いながら、また様々な場で再会していくこ とを夢見ています。
今年は、アルティの「顔」である松下耕先生の講習会(タイトルはいつもの「ハーモ ニーとカノン」)も復活し、松下先生の男声合唱団である「アンサンブルプレイヤード」 の皆さんをゲストにお呼びしました。この場が新しい出会いに満ちた楽しい場になりま すように。

青ライン 2011年7月(第8回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2011に寄せて

有志の手による試行錯誤の繰り返しで実施されているアルティ声楽アンサンブル フェスティバルですが、いよいよ8年目を迎えることが出来ました。競い合うので はなく「集い、学び、歌い、聞き、語り合う」新しいタイプの合唱フェスティバル として、少しずつですが広がりを見せてきており、とても嬉しく思っています。

今年は3月の大震災で多くの方が犠牲になられました。亡くなられた尊い命の冥福 を祈るとともに、被災地に一刻も早く落ち着いた日々が戻ることを願います。歌声 は人々の心を癒し、励まし、勇気付ける力を持っています。演奏することによって、 私たちは生命の恩恵に感謝し、願い祈る気持ちを強く持つことが出来ます。仲間と 歌い、仲間の歌を聴き、仲間のために歌うことによって私たちは連帯と想像力とを 取り戻すことが出来ます。また、アンサンブルを通して、私たちは一人一人のかけ がえのなさや、果たすべき役割を確認し合うことが出来ます。このフェスティバル が、「歌そのものの存在意義」の確認に繋がること、「歌に出来ること」への気付 きに繋がることを願っています。「愛と感謝」「強い意志とメッセージ」に満ちた 集いの場にしていきたいと思っています。

さて、今年は、松下先生がお休み。しかしながら、講師には石川和子先生をお招き することが出来ました。2日に渡って関西ではなかなか受ける機会のなかったレッ スンを受けたいと思っています。ゲストには「左座家(ぞうざけ)」という素晴ら しい家族コーラスを招待いたしました。一度聴いて以来私の胸から決して離れない、 素晴らしい団体です。卓越した技量もそうなのですが、決して技量に終始しない 「歌への愛」、伝えたいことに対する一体感…、もちろんチームワークに満ちてい て、「これぞアンサンブル!」と叫びたくなる団体です。兼ねてよりこのフェステ ィバルの趣旨にもぴったりの団体であると思っておりました。どうぞお楽しみくだ さい。また二日目には、特別企画として、あの世紀の名曲「モツレク」を公募団体 による女声合唱(デュエット)として演奏したいと思っています。モーツァルトの 名曲を千原英喜先生がデュエットで歌えるようにアレンジされています。その驚く べき成果をお楽しみください。(4月の「 コーラスめっせ」で部分初演がなされ、今回が全曲初演となります)。折りしも、 この震災で亡くなられた方への追悼になればとも思い、客席とも気持ちを合わせ、 心の籠もった演奏をしたいと願っています。
この場が、祈りと思いやり、そして新しい意欲や出会いに満ちた楽しい場にもなり ますように。

青ライン 2012年7月(第9回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2012に寄せて

故吉村信良先生の意思を受け継ぐ形で、有志の手により実施されている「アルティ 声楽アンサンブルフェスティバル」ですが、いよいよ9年目を迎えることが出来ました。 間もなく10周年を迎えるのかと思うと感慨深いものがあります。まだまだ小さな チャレンジの繰り返しではありますが、競い合うのではなく、「集い、学び、歌い、 聞き、語り合う」新しいタイプの合唱フェスティバルとして、少しずつですが広がりを みせてきており、とても嬉しく思っています。

昨年は3月の大震災で多くの方が犠牲になられました。今なおその傷跡は癒えて おりませんし、被災地の一日も早い復興を祈りたいと思います。この間、私たちは多くの ことを学び、多くのことに気付かされてきました。歌うこと…、このようなアンサンブルを 通しても、私たちは一人ひとりのかけがえのなさや、果たすべき役割を確認し合うことが できるのではないでしょうか。このフェスティバルが「歌そのものの存在意義」や「歌に 出来ること」への気づきに繋がることを願っています。音楽や人との出会いによって 「愛と感謝」「強い意志とメッセージ」に満ちた集いの場にしていきたいと思っています。

さて、今年も松下耕先生は渡欧されており、お休みです(残念!)。しかしながら、講師には 北海道から陣内直先生をお招きすることができました。2日に渡って関西ではなかなか 受ける機会のなかったアンサンブルの基礎レッスンを受けたいと思っています。また、 「未来への歌声〜受け継がれる歌声」というテーマのもと、ゲストには「アンジェルス児童 合唱団」「多治見少年少女合唱団」を招待いたしました。未来そのものとも言える子供たち の歌声を育てていくことが、大人の責務でもありますし、子供たちの歌声は私たちに勇気や 希望を与えてくれるでしょう。さらに、私たちがしっかりと歌い、歌い継ぎ、子供たちにも 託していかねばならないものもあろうかと思います。その意味で、今年も公募合唱団を編成し、 「唱歌」を素材にした「日本の四季めぐり」を岩手の作曲家である名田綾子さんの編曲、 ピアノ伴奏で歌おうと思っております。
 盛りだくさんの内容の二日間。祇園祭の京都の風情とともにたっぷりと味わってください。

青ライン 2013年7月(第10回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2013に寄せて

京都で開催された世界合唱シンポジウムの前年(2004年)に試行的に開催された 「アルティ声楽アンサンブル フェスティバル」ですが、思いつき主の故吉村信良 先生(全日本合唱連盟理事長)から私に託されたのは、「君の自由にやれ、出来る だけ自分 より年齢の若い人を仲間に加えてやれ」ということだけでした。つまり旧 来の合唱連盟の枠組みに凝り固まることなく、未来志向で伸び伸び やってほしいと いうメッセージでしょうか。

以後、松下先生他、たくさんの方々に助けていただき、 私なりに工夫と試行錯誤を 重ねて、もう10年の歳月が経過したことになりますが、この間何人もの 人たちがこ の行事に関わってくださったことを考えると、ある種の感慨のようなものを感じます。 しかしながら、この手の催しはルーチンに なってはならないものですし、回を重ねる ことだけに自己満足してはならないものでしょう。合唱の現在の中で常に新しい風を 感じられるもの になっているか、フレキシブルな工夫が出来ているか、独自の切り口 を持てているか、次の10年を目指して今やるべきことは何か、を考えた 上で、 「で、みんな楽しかったか?」という物差しを持っておきたいと思っています。

7月の上旬の京都は、暑さだけでなく祇園祭のわくわく するような賑わいの雰囲気に 包まれています。祇園祭は町同士のお祭りとも言えますが、京都の町は旧来、相互扶助 や自治意識が高く、世代を 越えた人と人との繋がりが地域の力として様々な文化形成に 繋がってきたと聞きます。アンサンブルフェスティバルでは、わりと少ない人数で 歌う とことになりますが、テクニカルなこともさることながら、そのプロセスで一人一人のか けがえのなさ や、個性、表現すべきこと、果たすべき役割を確認し合うことが出来ます。
アンサンブルで歌うことは、我々が世の中で協力しながら「生き、生か し、生かされて いること」を実感することに繋がっているとも言えるのではないでしょうか?そういった ことを実感出来るイベントであり続け たいと願っています。

さて、今回は久しぶりに松下耕先生の登場です。合唱音 楽に対する愛情たっぷりに様々 なことを教えていただくことになるでしょう。また、ゲストの2団体(「Combinir di Co rista」「東 京ユースクワイア」)は共に今を時めく素晴らしい合唱団です。国内最高峰 の刺激を受けることにより、京都の町にアンサンブルの楽しみと交 流の輪が広がっていけ ばと思います。

青ライン 2014年7月(第11回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2014に寄せて

京都で開催された世界合唱シンポジウムの前年(2004年)に試行的に開催された 「アルティ声楽アンサンブルフェスティバル」ですが、昨年で10周年の節目を迎 え、本年から新たな10年を見据えてのスタートが始まります。スタート時から故 吉村先生の温かいご支援と松下耕先生をはじめとするたくさんの方々に助けてい ただき、工夫と試行錯誤を重ねて継続してきました。
7月の上旬の京都は、暑さだけでなく祇園祭のわくわくするような賑わいの雰囲 気に包まれています。祇園祭には京都の地が伝統的に持っている地域の力が根付 いておりますが、アンサンブルで歌うことは、我々が世の中で協力しながら「生 き、生かし、生かされていること」を実感することに繋がっているとも言えるの ではないでしょうか?そういったことを実感出来るイベントであり続けたいと願 っています。
さて、今回は海外から世界最高峰の技術と音楽性を誇る「プロムジカ合唱団」 に演奏機会を持っていただき、その指揮者であるデーネシュ・サボー先生には 講習会をしていただくことにもなりました。また、2日目には和歌山から沼丸晴 彦先生をお呼びするとともに、間近に迫った「世界合唱シンポジウム」の招待 団体として「なにわコラリアーズ」が壮行演奏をさせてもらうことになっており ます。2日間にわたって合唱音楽の様々な魅力と楽しみを味わってもらえればと 考えております。京都の町にアンサンブルの楽しみと交流の輪が広がっていき ますように。

青ライン 2015年7月(第12回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2015に寄せて

7月の上旬の京都は、暑さだけでなく祇園祭のわくわくするような賑わいに包 まれています。京都の町は旧来、相互扶助や自治意識が高く、世代を越えた人と 人との繋がりが様々な行事や文化を支えてきたと聞きます。アンサンブルフェス ティバルでは、少ない人数で歌うとことになりますが、その分一人一人のかけが えのなさや個性、果たすべき役割を確認し合うことが出来るように思います。つ まり、アンサンブルで歌うことは、我々が世の中で協力しながら「生かし、生か されていること」を実感することに繋がるのではないでしょうか?「ともに生き る」というテーマのもと、今年も全国各地からアンサンブル団体を迎えて開催が 出来ることを大変嬉しく思います。
さて、今年の講師には世界中で大活躍の松下耕先生が2 年ぶりに登場です。ゲス ト団体にも新作とともにブリリアントハーモニーを連れてきてくださいました。 また、もう一人の講師は、鯖おやじこと橋本靜一先生です。たんに声を鍛えること ではなく、たくさんの気づきを私たちに与えてくださることでしょう。そして、も う一つのゲスト団体は、私がずっと声をかけ続けていた佐賀県の女声合唱団「ソレ イユ」です。樋口先生の太陽のような愛情たっぷりに育てられた「ひまわり」のよ うな合唱団です。…このような国内最高峰の刺激を受けることにより、京都の町に アンサンブルの楽しみと交流の輪が広がっていけば と思います。

◆委嘱作品について◆
アルティ声楽アンサンブルフェスティバルの初めての試みとして、新進気鋭の作 曲家に京都の街(文化、風土、歴史)にこだわった作品を委嘱するというチャレン ジをしてみました。全国の人に集まってもらい、たくさんの刺激を受けることと同 様に、文化的土壌として豊かな可能性と財産を持っている京都から全国(世界)に 向けて新しいものを発信したかったからです。本年は若手作曲家のホープ増田真結 さんに雅楽の歌謡をもとにお琴と声(混声合唱)の絶妙のコラボレーションを作っ ていただきました。様々な可能性と想像力に開かれた試みをどうぞお楽しみください。

青ライン 2016年7月(第13回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2016に寄せて

京都で開催された世界合唱シンポジウムの前年(2004年)に故 吉村信良先生の提唱に より開催された「アルティ声楽アンサンブルフェスティバル」ですが、今年でひと回 りの12年目を迎えます。この間、様々な関係者の温かいご 支援 をいただくとともに、 松下耕先生(耕友会)をはじめとするたくさんの先生方に助けていただき、工夫と試 行錯誤を重ねて継続してきました。
7月の上旬の京都は、暑さだけでなく祇園祭のわくわくするような賑わいに包まれて います。京都の町は旧来、相互扶助や自治意識が高く、世代を越えた人と人との繋がり が様々な行事や文化を支え てきたと聞きます。アンサンブルフェスティバルでは、少な い人数で歌うとことになりますが、その分一人一人のかけがえのなさや個性、果たすべき 役割を確認し合うことが出来るように思います。今年は祇園祭の宵山と山鉾巡行の日程 とも重なりましたが、時間の工夫もいたしておりますので、どうぞ両方お楽しみください。
さて、今年の講師には昨年に引き続いて世界中で大 活躍 の松下耕先生に登場いただき ます。ゲスト団体のCollegium Cantorum YOKOHAMAとともにたくさんの合唱の魅力を教え てもらえることでしょう。もう一人のゲストは、昨年(そして今年の京都合唱祭でも) 大好評だった、鯖おやじ こと橋本靜一先生です。声を出すことは心を開くということ ・・・今年も、固定観念に捕らわれないで、声についてのたくさんの視点に気付かせてい ただきたいと思います。そして、もう一つのゲスト団体は、私がずっと声をかけ続けて いた静岡児童合唱団(青葉会スペリオルとの合同)です。戸崎先生の愛情たっぷりに育 てられた素晴らしい合唱団です。…このような国内最高峰の刺激を受けることにより、 京都の町にアンサンブルの楽しみと交流の輪が広がっていけばと思います。

◆委嘱作品について◆
昨年に引き続き、京都在住の新進気鋭の作曲家(増田真結さん)に新しい視点を持った 声楽作品を発表してもらうというチャレンジをしてみました。実質的には本年の11月3日 の<若手作曲家による新作工房プロジェクト「トリコロール」>にて演奏される新曲の部 分抜粋ということになりますが、豊かな可能性と文化的財産を持っている京都から全国 (世界)に向けて新しい作品を発信したいと思います。題材は、(そこにある)戻り橋 (一条)から私自身が自由に発想したテキストを元にしていただいております。お琴と 語りと声(混声合唱)の絶妙のコラボレーション をお 楽しみください。

青ライン 2017年7月(第14回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2017に寄せて

有志で始めた「アルティ声楽アンサンブルフェスティバル」は13年目の夏を迎えます。 この間、様々な関係者の温かいご支援をいただき、継続出来たことに感謝しております。
さて、今年の講師には古学やグレゴリオ聖歌の研究・指導で著名な花井哲郎先生にお越し いただきました。また、ゲスト団体には「ヴォーカルアンサンブル<EST>」と「宝塚少 年少女合唱団」いう全くジャンルもタイプも異なる団体をお呼びしています。そして、 橋本静一先生には今年も特別講座で声のクリニックを担当していただいています。歌を 巡って、様々な観点から、その魅力に気付ける2日間になりますように。
公募で全国から集まってきていただいた団体には「歌の色彩」というテーマで選曲をして もらっていますが、それぞれ工夫を凝らした個性的な音楽を聞かせていただけることでし ょう。今年も祇園祭に賑わう京都で、アンサンブルの魅力をたっぷり味わっていただき、 交流の輪が広がっていけばと思います。

青ライン 2018年7月(第15回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2018に寄せて

7月の京都は、祇園祭のわくわくするような賑わいに包まれています。京都の町は旧来、相互扶助や自治意識が高く、世代を越えた人と人との繋がりが様々な行事や文化を支えてきたと聞きます。アンサンブルフェスティバルでは、少ない人数で歌うとことになりますが、その分一人一人のかけがえのなさや個性、果たすべき役割を確認し合うことが出来るように思います。つまり、アンサンブルで歌うことは、我々が世の中で協力しながら「生かし、生かされていること」を実感することに繋がるのではないでしょうか?
さて、今年はアルティホールの30周年記念の年と重なり、何と3日間の開催となりました。初日と2日目には、公募参加者による「合唱物語」と、和楽器を含めた「シアターピース形式」というこのホールの特性を生かした二つの委嘱作品の発表を予定しています。「声楽アンサンブル」というものが、単に美しいサウンドを立ち上げるという表面的な事象に終始することなく、声と身体、歌と言葉、人と人との関係性の中で表現をするということ…、と向き合い、様々な角度から「ともに歌うこと」の可能性を展開していこうと思っております。
全国から集まっていただいた多彩なアンサンブルメンバー、豪華なゲスト団体の演奏、楽しいワークショップ…と、見どころ満載です。どうぞ三日間参加くださり、音楽の喜びをともに分かち合いましょう。

青ライン 2018年7月(第15回) 青ライン

「願いをかける・橋をかける」〜『戻り橋』のテキストについて

府民ホールアルティを出て、虎屋菓寮を横目に一条通りを西へと向かうと「一条戻り橋」に差しかかります。堀川に架かる橋です。もちろん今の橋は平成になってから架け直された新しいものですが、古くは遥か平安京が作られたときに架橋されたと言われ、以後千年以上の歴史の中で、位置を変え何度も作り直されながら様々な伝説の舞台となってきています。京都の人ならばこの「戻り橋」を巡るさまざまなエピソードについてご存知の方も多いでしょう。
本作品のテキストは、それらの具体的な伝承に関わらず「橋」そのものの持つ象徴性を軸に架空のエピソードを設定し、言葉を紡いでいます。「橋」は、川によって隔てられている異世界を取り結ぶものでもありますが、例えばそこから派生して、「現世と彼岸を結ぶ」という役割やイメージを担うことがあるように思います。加えて、近松門左衛門の「心中天網島」や三島由紀夫の名作短編「橋づくし」を思い出しても、「橋を渡る」ということそのものが、「念願、願掛け」という文学的なメタファーを持つようにも思うのです。
3段に分けたこの作品では、橋のたもとで番人をする「鬼」を弐の段に配置し、壱の段では「母を亡くした少年が、母に会いたいと願うエピソード」、三の段では「息子を戦地に送り出した母が、亡くなった息子に会いたいと願うエピソード」を据える鏡構造としています。少年は母の亡霊に励まされ子どもたちの輪の中に戻り、年老いた母は命と引き換えにひと度だけ息子の亡霊に出会います。生と死とは、時おり扉を開き、呼びかけ合い、触れ合いながら、限りない命の循環を形成しているのではないかと思います。
…夕立の後の雨の匂いの中に懐かしい人を思い出すことがあるように…、桜を散らす風の向こうに会いたかった人の幻を見ることがあるように…、時間とは多層的に流れ、夢は現実と紛れながら存在しているのではないでしょうか。

さて、私のテキストは最初から作曲の増田真結さんと十七弦と唄を担われる中川佳代子さんを想定したものでしたが、増田さんがテキストに芸術音楽としての新たなパースペクトを与えられ、中川さんが驚くべき技量で曲に魂を注入してくださっています。これまで部分発表されてきたものですが、本日は、二人のソリスト、アンサンブルのメンバー、子どもたち、演出家、によるチームで初めて完全版の演奏をすることになります。ホールの空間で生み出される「ゆめうつつ」のひと時を共有出来ることを嬉しく思っています。

青ライン 2018年7月(第15回) 青ライン

パン屋さんの匂いでしょ

京都府庁前の「進々堂」のカウンターに座り、物思いにふけりながら一人でパンを食べていたときに、突然パンを題材にした歌詞を作ってみたくなりました。と、同時に一気に合唱物語の緩やかな輪郭が自分の頭の中で出来上がり、この興奮と盛り上がりを誰に伝えようかと考えたときに、きっと面倒な顔一つせず返信いただけるに違いない山下祐加さんに10曲分(本編からは3作削りました)のタイトルをメールして送ったのでした。(それがこの合唱物語の始まり。予想通りの返信をいただいたことを関係者に自慢したところ、「忙しい作曲家の時間を取ってはならない」と、たしなめられたものです。)

パンには私たちの感性をくすぐる独特の表情があるように思えます。
パンはある種の夢を持った食べ物でもあるとも言えるのかもしれません。私がよく思い出すのは、まずはあんぱんのことです。小学生の低学年の頃、怪我の治療のために毎週母に連れられて川端の京大病院に通っていたのですが(その時間は私にとってはオフィシャルに授業を休めるという秘かな楽しみの時間でもありました)、治療には痛みが伴い辛抱を要するのに私が健気に振舞っていたために、母親は治療が終わるたびにご褒美のように病院の購買部であんぱんとミニカーを買ってくれていたのでした。あんぱんを食べながらミニカーを選び、眺めることは私にはとても楽しみな時間だったことを思い出します。(ちなみにミニカーは数を重ね、やがて一つの町が出来るほどになっていました)
近所に手作りパンの店が出来ると、日曜日の朝ごとに兄と買いに行くのが楽しみでした。(クロワッサンに感動したものの、今も昔もよくこぼしてしまいます)
ほとんどパンを食べなかった父親が、1か月に渡るヨーロッパでの出張を終えて帰ってくると、急に毎朝パンを食べ出したことも微笑ましい思い出です。
20歳の頃、ゼミの先輩によくアラビアパンの店に連れて行かれました。アラビアの肉パンを食べながらよくジャズとバタイユと小津安二郎の話を聞かされていたものでした。
パンと言えば昔は食パンと菓子パンが中心でしたが、今では、いろんな種類の美味しいパンがたくさん食べられますね。私は変わらずシナモンロールが好きです。

さて、私たちは、誰とどんなパンを食べてきたのでしょうか?
どんな話をしながら?
どんなことを考えながら?
どんなお皿で?
どこで?
家のテーブルで?
日の当たるレストランで?

一人暮らしの最初の朝にパンを食べた人はありますか?
誰かの食パンにジャムを塗ってあげたことがありますか?
誰かと一緒にサンドウィッチを作ったことがあるでしょうか?

パンを巡って、パンを介して、私たちはたくさんの場面を生き、たくさんの思いを募らせ、溜息もつき、たくさんの夢も見てきたのではないでしょうか?

レイモンド・カーヴァ―の短編小説「A Small, Good thing」のラストシーンを紹介しましょう。不慮の事故で子どもを失った父母に、子どものいないパン屋の主人はそれまでの誤解を詫び、自分自身の寂しい境遇を話した後にパンを差し出します。 「それでもちゃんと作られたものを食べて、頑張って生きていかねばならないのですよ。こんなときは、物を食べることです。それはささやかなことですが、少しばかりは助けになるのですよ」
数日間、何も食べることが出来なかった夫婦はパンの匂いをかぎ、一口食べてみます。
「糖蜜とあら挽き麦の匂いがする」
深夜でしたが、三人はコーヒーで温まり、パンを食べながら朝まで語り合うのでした。

パンによって悲しみが癒えるなどということはないでしょう。それでも、しっかり作られたものが、生きていかねばならない人の生命や気持ちを支える助けにはなるのかもしれないですね
食べ物は誰かの役に立つために心を込めて作られるもの。
私たちの音楽も、私たちの演奏もそうでありたいものです。

青ライン 2019年7月(第15回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2019に寄せて

昨年はホールの30周年記念行事を重ねての3日間開催となり、大変にぎやかな開催となりましたが(…公募合唱団による合唱物語「パン屋さんの匂いでしょ」を発表し、ロビーをクロワッサンの匂いで充満させたものです…)早いものでもう一年が経過しようとしています。

新しい時代が到来し、今年は15年目の夏を迎えます。様々な人に応援していただき継続して出来ていることに感謝の気持ちでいっぱいです。

さて、今年は、ゲストに「混声合唱団鈴優会(東京/指揮:名島啓太)」と耕友会の集合体とも言える「The Metropolitan Chorus of Tokyo(東京/指揮:松下耕)」に来ていただくことが出来ました。歌を巡って様々な様々な観点からその魅力に気付ける2日間になりますように。

公募で全国から集まってきていただいた団体には「幕開け」というテーマで選曲をしてもらっていますが、新しい時代の幕開け、それぞれ工夫を凝らした個性的な音楽を聞かせていただけることでしょう。今年も祇園祭に賑わう京都で、アンサンブルの魅力をたっぷり味わっていただき、交流の輪が広がっていけばと思います

青ライン 2021年7月(第16回) 青ライン

アルティ声楽アンサンブルフェスティバル2021に寄せて

昨年は大変残念な夏を過ごすことになりましたが、本年は感染対策に万全を期すとともにプログラムを縮小しながら、何とか開催にこぎつけることが出来ました。関係者各位、尽力してくれたスタッフ一同にも感謝いたしております。

コロナ禍が私たちに伝えたことは、当たり前の日常の大切さ、もしくは連帯のぬくもりの尊さでもあるでしょう。演劇でも、スポーツでも、もしくは日常的な生活の中でも、私たちは、情感を「ともに分けあうこと・分かち合うこと」を目的として生きていると言えるとも思うのです。ふたたび、手を繋ぎ、熱く語り合い、抱きしめ合い、コロナによってもたらされた「分断」から「連帯」を取り戻す時を夢見ています。その連帯の象徴が、生きた言葉と音楽を共有する「アンサンブル」であり「合唱」であることを信じております。

次年度以後にも思いを馳せながら2日間のフェスティバルをお楽しみください。

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