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大学男声合唱団の現状と展望(続)(1/3)

■イントロダクション
ちょうど5年前に、この「じゃむか」の紙面上にて大学の男声合唱事情を 中心にした情報提供と雑感について記事を書かせていただきました。今回、 それから5年が経過し、その後どうなのかという記事を依頼されましたの で、私の感じ得るところを少し紹介したいと思います。

■現状等
例えば、11月3日の近辺は、関西では今では「バッカスフェスタ」という名称 でやや平均年齢の高めの男声合唱フェスティバルが開催されています。往年の 関西の合唱人ならばこの日程で関西六大学男声合唱演奏会が開催されていたこ とをご存知なのではないでしょうか?。バブル期にはかつてのフェスティバル ホール(キャパ3000人)を超満員にし、着飾った女子大生たちがロビーに溢れ 返っていたものです。伝統ある東京六大学に対抗して始まった関西六連でした が、それぞれの団体の人数激減等を理由に無くなってしまってから久しくなり ます。大学における男声合唱に思い入れの大きい私としては、何とかそれを復 活させられないかと、この間、様々な試行錯誤をして参りましたが、実は、私 が有志とともに主宰しています大阪の合唱イベント「コーラスめっせ(いずみ ホールとその近辺で展開)」のアトリウムコンサート(ビルの谷間のオープン スペースに壇を組み、通行人が足を止めて聞いて行けるコンサートを開催して いる)の一部分で3年前に「復活六連!」と名づけて、かつての関西6大学男声 合唱団に校歌と得意曲1曲だけを演奏してもらう機会を作りました。関西6連 (もしくはそれに変わるイベント)の復活を待ち望むOBたち がギャラリーを 取り囲んでいたことからも大学の男声合唱団の復活への期待を ひしひしを感 じたものです。最初は、人数少ないところはOBも入って歌ってくれて良いとし た企画でしたが、それ以来、好評をもって続いており、今では現役だけでの 歌唱で成立しています。いつ本当の6連に移行させていくか(しかも、学生の 自主性を上手く絡めながら)と考えているところです。
また本年の6月に「京都コンサートホール」において、63回目になる東西四大 学合唱演奏会(東西四連)が開催されました。東西四連はいずれも100年を超 す伝統を持つ男声合唱団(早稲田大学グリークラブ、関西学院大学グリークラ ブ、慶應義塾ワグネルソサィエティ男声合唱団、同志社グリークラブ)が60 年以上も前から1年に1度のペースで東西で(東京と関西で隔年)開催している ものです。こちらも私が現役の頃(80年代後半)当時は2日間開催や、昼夜2回 公演で、東京文化会館や大阪フェスティバルホールに満員の観客を迎えており ました。レコーディングや初演、委嘱も多く、福永陽一郎、畑中良輔、北村協 一をはじめとする指導者の陣容を含めてこの四大学が合唱界全体を牽引する立 場だった時代が長くあったと思います。その後、90年代後半からの大学を取り 巻く環境の変化の中では、潤沢な声(=絶対的な練習量)と人数を要する合唱 スタイルが足かせにもなり、同時進行する人数減少という試練とそこから来る 閉塞感が感じられた時期が長くあったようにも思います。しかしながら、近年 では、関西学院グリークラブがコンクールへの再チャレンジで成果を残し周囲 に刺激を与えたことをきっかけに、再び四連全体が息を吹き返し始めたような 気がしています。今年に関しては、相変わらず、生きの良い若手指揮者(松井 慶太)を捕まえてくる早稲田、それと対照的に、関学、慶応、同志社が、それ ぞれ北村協一、畑中良輔、福永陽一郎の引退のあとに紆余曲折のあった指導体 制に関して、明確な形で指導者を固定してきたことで、各大学の個性が再び鮮 明になってきているようにも感じました。「こんな真剣なコンサートを初めて 聞いた」という客席の関西の学生たちの目の輝きが印象的でした。

続く・・・

          
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