Fragments~特攻隊戦死者の手記による
2011.9.6
広島で大学生とともに原爆小景を演奏した2週間後に、京都で大学 生とともに特攻隊戦死者の手記をもとに作られた信長先生の傑作 「Fragments」を演奏することになりました。信州大学グリークラ ブ、横浜国立大学グリークラブ、北海道大学グリークラブ、と同志 社グリークラブのジョイントコンサートの合同でした。
信州大学グリークラブはもちろんのこと、北大グリーも横国グリー も練習をしたりジョイントで客演したことがあり、私には馴染みの 男声合唱団ばかりでしたが、160名のメンバーが一同に会した合 同ステージ(160名)はなかなか壮観なものでした。超満員の注 目を浴びる中での演奏会でもあり、最後には客席全体から惜しみな い拍手を浴び続けた彼らにとって大きな自信に繋がる演奏会となっ たのではないでしょうか。
(もっとも、マネジメントにがんばりすぎて客席が溢れる大不手際 があり、一部の方には本当にご迷惑をかけました。学生たちのひた むきさに免じて許容してもらえればとも思います。)
私は、この合同のフラグメンツに備えて鹿児島の知覧(→熊本~知覧へ) にまで足を延ばしてきたのでしたが、やはり行ってきて良かったです。 歌われる言葉の一つ一つが、達筆な字とともに書き記されている状態を 思い起こし、イメージを持ちながら練習することが出来ました。まだ 二十歳前後だった特攻隊員たちの気品や高潔ささえ感じさせる洗練さ れた言葉遣いを見るにつけ、その裏に滲む不条理や悲惨、その命の掛 け替えのなさを思いました。開聞岳を臨み、遥か南方の空と海を眺め ると、時空を越えて様々な思いが巡り寄せてきたものです。演奏にお いては、その時間と空間の距離感、人と人との情愛の深さとそれを引 き裂く戦争の悲惨、…そういった歴史を客観的に見守る空や風や光や 波の音を想像しながら、上っ面だけにならないように一生懸命に演奏しました。
「原爆小景」の演奏でも感じたことですが、つい私たち世代では遠ざ けがちな「戦争という主題」に学生世代が真面目に取り組むことの大 切さを感じます。イデオロギー的なものを声高に主張するつもりはあ りません。そうではなく、若い世代では「音楽を通して」たくさんの 世界観や価値観を学ぶこと、また音楽がいかに社会と繋がっているか、 音楽を通して何が出来るかを考えること、はとても大事なことではな いでしょうか。
4大学力を合わせた最終ステージは、信長貴富先生にも来てもらい、 大きな拍手をもらうとともに「このまま全国ツアーをしてほしい」と いうお褒めの言葉をいただきました。練習そのものは前日の夜と当日 だけでしたので、それぞれの大学合唱団が一生懸命に取り組んでくれ たことに加え、やはり「曲の良さ」が学生たちをその気にさせたとも 思います。