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雑誌等への掲載・仮面を脱いだ作詞家「みなづきみのり」・大学合唱指導者年末合宿 ・復活せよ、関西の大学男声合唱団 ・合唱団葡萄の樹(紹介) ・コーラスめっせ2014 ・高校生合唱講習会 in鹿児島 ・男声合唱に託す夢 ・世界合唱シンポジウム参加レポート ・シューベルトの合唱作品 ・大学合唱コンペティション&コンベンション ・年末学生指導者合宿 ・リアの物語演奏評 ・指揮者に聞く男声合唱の魅力 ・舞台芸術としての合唱表現 ・永遠の青年〜福永陽一郎 ・多田作品の美意識 |
永遠の青年〜福永陽一郎
あのとき、用意していた愚問「音楽に大切なもの何か?」と聞いたら福永陽一郎は何
と答えただろうか…?同志社グリークラブの学生指揮者になったばかりの私は、寺町
三条の料亭で先生と向き合って座っていた。着物姿の若い仲居さんが「学生さんどす
の?」と微笑みながら袖を折って肉を焼いていた。先生はすでに5、6年に渡って人
工透析を続けているという身体であったが、一時期の体調不良を乗り越えており「最
近ようやく音楽が身体から溢れるようになってきたんだよ…」と私に語っていた。そ
してそれを実証するかのうように、その年の『東西四連』での同志社グリークラブは、
本人をして「音楽の理想郷が出来た」と言わしめる「月光とピエロ」を演奏した。聴
いていた小林研一郎(当日早稲田を振っていた)が『陽ちゃん凄いよ、フルトヴェン
グラーになったんじゃない!』と絶賛したことを嬉しそうに何度も話してくれたもの
だ。その半年後、先生は突然亡くなる。私は、適切な言葉も見つけられないまま、聞
けなかった謎を探るように合唱指揮を続けていることになる。 ハンナ 2017年1月号に掲載
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