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年末学生指導者合宿

暮れも押し迫った12月29−30の2日間(指揮者講習会はさらにその前日から実施)、 今年も300人 近い学生を全国から集め、学生指導者合宿を行ないました。沼丸 氏とともに7年前に企画を始めたときには何とか50〜60名の参加を得て実施出来 たら…という思いでしたが、現在では先着順で人数を切っているような状態で 開催をしております。

今回は、よりアカデミックな枠組みを意識して「ルネサンス音楽」を名島啓太 氏に、「ロマン派音楽」を上西一郎氏に、「日本語の歌い方」については私が 講習し、沼丸氏のマネジメントのための講習を加え、目玉企画として相澤直人 氏(みなづきみのり作詞)にこの合宿のために新曲を書いてもらい、それを 清水敬一氏が講習するという盛沢山の構成を作りました。最終発表会の全員合 唱で聞かせてくれた新曲「この世界の中で」の演奏も本当に素晴 らしいものが ありましたが、深夜に及ぶ交流会の様子、各講師を捕まえて積極的に意見を求 める様子等を見ていると、当初の主催者の予想を遥 かに超える意義と効果が あるのではないかと思われます。県内に大学合唱団が少なく、交流と刺激を 求めての参加も多く、どの団体でも「似た ような悩みを抱えていること」や、 逆に「自分たちで当たり前だと思っていることとは別の方法があることに気 づくこと」も大きな意義となっ ていると思われます。

「学生合唱の低迷」や 「学生合唱団の奮起を願う声」が聞かれてから久しい ですが、人数回復してきている合唱団もあり、大学や大学生を取り巻く環境 や状況は刻一刻と変化してきているように思います。ただ、全体的に言える こととして、学生同士の中で希薄化しているのは引継ぎとも言える縦のつな がりと 連帯感とも言える横のつながり、そのことからくる「情報の欠如」か もしれないと思っています。この情報化時代に矛盾した現象ですが、インタ ーネットで入手出来る表面上のものではなく、肌触りや手触りを伴う実感と か、生の情報とでも言うべきものでしょうか?。講師や先輩後輩、他大学の 学生と寝食を共にする中で、大きな財産とでも言うべき本当の情報が得られ ることを願っています。年末の慌ただしい時期ではありますが、多くの大学 合唱団では幹部が交代して緊張と不安が入り混じった時期、年の瀬の空気が 「一体感」の醸成に結びついており、今年も 講師も含めて参加者全体がファ ミリーになる感じがいたしました。また、学生の現状を知ることで、大人の 指導側からも「自分たちの大学時代と単純比較」してすぐ嘆きの材料を見つ けてしまうことや「大学生になったら一人前」という頑な意識を転換し、 「大学生は少しのサポートや きっかけ作りを与えて周囲が成長させていく べき存在」であるという認識に変わっていく必要があると考えています。確 かに、学生のポテンシャルを信じるがゆえに、「もっと出来るのではないか」 「与えられるものに満足してはならないぞ」という感想を持つことも事実で すが、この年末合宿で出会ったことや気づいたことをきっかけにして、ここ で励まされたメンバーが今後の合唱界を支える大切な柱になってくれること を期待しております。

ハンナ 2015年2月号に掲載
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