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高校生合唱講習会 in鹿児島

西日本の合唱事情の紹介を兼ねて、実際に練習したり見聞きした 各地の合唱団の表情や合唱活動の様子をレポートしたいと思いま す。3月初旬に1日かけて鹿児島の高校生対象の合唱講習会に出向 いてきました。集まった高校は鹿児島高校、鹿児島女子高校、鹿 屋養護学校、加治木工業高校、霧島高校、鶴丸高校、鹿屋女子高 校、錦江湾高校、松陽高校、玉龍高校、鹿屋中央高校、武岡台高 校の全12高校で総勢120名程度でした。
このような講習会は、合唱部にとってのスキルアップの機会であ ることはもちろんですが、例えば女子高校にとっては混声合唱の 音の広がりを体感出来ることにもなり、数名単位で合唱部を維持 しているところには大人数での合唱の魅力を実感出来たり、他の 高校合唱部員と友達になれることにも繋がる貴重な場面です。今 回は初めて訪れるということもあって、何かの曲を仕上げておし まいということにならず、それぞれの合唱部が新しい曲に取り組 む際に生かせるようなベーシックなことを意識しながら取り組み ました。
まず意識したことは合唱の基本である「お互いに息を合わせる」 ということの実践でした。(二人一組や三人一組になって声を合 わせることを実践→写真)そのためには歌うだけでなく、お互い に聞きあうことが必要なので、一緒に向かい合って交互に声を出 してみることを試してみました。お互い知らない者同士向き合う という姿勢は緊張するものなのですが、自己紹介をしたり、肩 触れ合う隣同士になってみたり、背中を合わせて歌ってみたり、 小さなスキンシップのようなことを積み重ねると、少しだけ微笑 みが出るようになってきました。
ウォーミングアップのあとの講習会では「横と縦の関係」という テーマで取り組みました。「横の関係」としては、フレーズの受 け渡し、落ち着いて輪唱すること、一つの音符を共有しながら声 のリレーションをすること等の基礎練習をした後に、パレストリ ーナのSicut Cervusの曲を使って各パートがどのようにフレーズ を受け渡しし、共有し、反復し、展開しているのかということを 確認しながら練習をしました。
午後からは、ハンドサインを導入に使い、増五度での平行移動等 で音遊びをしながら、和声を聞きあうこと、(根音と第5音と第 3音)の役割に着目しながら自分たちの鳴らしている音の縦の関 係性を理解した後、関西在住の人気作曲家北川昇先生の「なみだ」 をテキストにして、「和声」がどのように使われているかを確認 した後、「メロディー」「リズム」「ハーモニー」「言葉」のそ れぞれの結びつきを確認してみました。最後には松下耕先生と私 との共作である「ほらね、」を歌って楽しく講習会を締めくくる ことが出来ました。
コンクール等では出場出来る高校も限られており、ひょっとする と緊張感を持ってすれ違うだけかもしれませんが、このような場 で合唱を通した仲間が作られること、音楽を通して新しい自分と 出会えることが合唱活動の主眼だと思います。鹿児島の高校生ら は目を輝かせて歌ってくれており、特に一緒にお昼ご飯を食べて からの雰囲気は生徒同士和やかな雰囲気が作られておりました。 歌声も表情も素晴らしく、日ごろからの先生方の取組みの確かさ を感じさせるものでした。その後の懇親会でも先生方からたくさ んの質問をいただき、なかなか更けない夜を体験しましたが、こ のような熱心な指導者と生徒らの切磋琢磨によって、今後の鹿児 島の若い歌声は更なる発展を遂げていくように思いました。

ハンナ 2014年5月号 関西からCに掲載
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