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大学合唱コンペティション&コンベンション

年末に全国から300人もの大学合唱団の技術系を大阪に集めて「年末学生指導者合宿」を 始めてから数年が過ぎますが、そこからスピンオフした企画として、「第1回 大学合唱 コンペティション&コンベンション」を行ないました。これが思った以上に面白く、今 後の大学合唱団への指導ポイントを考えるにあ たって非常に参考にもなりました。
このコンペティションでは合唱連盟の「大学・ユース部門」との棲み分けという意味も 込めて、先生ではなく学生指揮者で挑むことという制約を課しています。つまり、大学 合唱というものは、最終的には先生が「違い」のようなものをもたらすことはあるにし ても、高校の部活とは異なり、大学生の指揮者やパートリーダーという「技術系」が勉 強し、知恵と工夫で日々の練習を繰り返していく必要があります。今回は、最終的に 「先生が何とかしてしまう」ということなしに、学生指揮者が指揮をすることによって、 いわゆる「リアル大学生」の様子が透けて見えるように思いました。演奏を聞いただけ で、彼らが一生懸命に取り組んで練習した部分と気づかずに見逃してしまった部分など が見えてきます。リズムの面白さには気づいたけれどそれをレガートでつなぐことは出 来なかった、言葉のイントネーションには気づいているんだけど、それを上手く指揮で は示せていなかった・・・、とかですね。
また、課題曲は既存の曲ではなく、千原英喜先生にオリジナルで作っていただきました。 本来は直近に楽譜を渡して、そこから知恵と工夫と気合で仕上げてもらおうかと思って いたのですが、少しだけハードルを下げて1か月前に渡るようにしました。しかし、こ れが絶妙で、「You Tube等 での演奏例を探せない」という状況が学生たちには大きな ハードルになったこともすぐに分かりました。つまり、過去の経験を普遍的なものとし て一般化し「想像力を働かせて」応用を効かすこと、教えてもらうという受身行為から 自分たちで組み立てるという能動的行為を「繋ぐプロセス等」にまだまだ未熟な点が感 じられたのも事実でした。
それから小さな遊び心も込めて、音楽家とは別に企業から特別審査員を招いています。 いずれも大学時代はグリークラブで活躍されていた大学合唱の先輩ですが、大学時代の 熱い活動が社会の中で生きていることを語っていただくとともに、現在の学生たちの頑 張りを企業側にも見てもらうという意図もありました。私は、合唱という活動が、個に 籠らず「言語を伴い」「チームとして表現する」ジャンルである以上、実質的にここで 培ったコミュニケーション能力や知恵や工夫は社会に出てから十分に効果を発揮すると いうことをアピールすべきだと思っています。共生社会では一生懸命の大学合唱活動が 必ず生きるはずなのですから。
それぞれの企業からいただいた素晴らしい副賞が、コンペ参加者を大いに盛り上げたこ とは言うまでもありません。大学生の可能性を考えると全体的に「君ら、もっと出来る はず!!」とは思います。しかし、そのことも含めて早くも2回目の開催が待ち遠しい 意義深い企画となりました。

ハンナ 2015年1月号に掲載
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