Keishi Ito Homepage 〜目をひらく 耳をすます つぶやく〜 

演奏の場面で・・・【大学】客演&ジョイント等

2007年8月〜同志社大学&信州大学グリークラブジョイントコンサート

同志社グリークラブ&信州大学グリークラブジョイントコンサートに寄せて

ちょうど2年前の夏でしょうか?京都において、信州大学グリークラブ・同志社グリークラブを 含む三大学のジョイントコンサートが行われました。その時の信大グリーの歌声と、打ち上げの 席での縁?から出会いが進展し、昨年「同志社グリークラブ」は中村先生に客演指揮をしてもら い、私は信大グリーのお隣の?信州大学混声合唱団の演奏会で客演指揮をさせていただくことに もなりました。
ジョイントコンサートは時としてその演奏会だけでは完結しない副産物を生み出します。そこで 育まれた友情や出会いが、再び今日の日の演奏会を導いてくれたように思います。そして今日の 日の演奏会はまた、新しい物語の始まりを含んでいるようにも思います。
すっかり大好きになった長野の地でおいしい空気を吸いながら演奏出来ることを楽しみにしてい ます。

2008年1月〜混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ第30回記念定期演奏会

委嘱ステージに寄せて

名古屋大学コールグランツェの30周年記念演奏会開催おめでとうございます。
今回、信長先生の紹介もあり、指揮をさせていただくことになりました。合唱とは出会いの 芸術・・・、経緯はともかく、このたび名古屋の地で指揮をする機会を与えていただいたこ とに感謝申し上げるとともに、グランツェと出会い、そこに集う人と出会い、新しい曲と出 会い・・・、数々の出会いに満ちた場にいることに大きな喜びを感じるものであります。

さて、大学に勤務する者としても、昨今の大学事情により一緒に集まって練習することが必要 な大学合唱団にとっては厳しい環境があることは十分に理解をしております。またクラブサー クルが継続していくためには、先輩と後輩の関係が大事で「先輩がしっかり教え、サポートして、 受け継いでもらっておかねばならないこと」と、「後輩たちが、失敗を恐れずに自分たちでチャ レンジしておかねばならないこと」との両方があり、クラブサークルに対する愛情が深ければ深 いほど上手く協同することは実はそれなりに難しいものです。しかしながらグランツェの学生た ち(特に執行学年)のエネルギーには圧倒されっぱなしでした。また、合同練習で見られるOV さんたちとの絶妙のコンビネーション(歌やマネジメント)には感動いたしました。とても良い 具合に30年間という歳月が積み重なってきたのだなあと感じたものです。

歌は人生を反映します。
クリアな音を求めるだけなら一つのジェネレーションだけで纏まってしまったほうが扱い易いサウ ンドが生まれるでしょう。しかしながら、一つの言葉に、一つのフレーズに思いを宿す歌声は、 様々な年輪や世代の人が混ざり合うことによって初めて「織り成されていく」気がしています。 そして、このように一つの思いを引き継ぎながら
ジェネレーションの混在する合唱団によって信長先生の「宝石箱」のようなこの曲集がどのような 色に輝くのか、とても「わくわく」しています。
どうかこの記念すべき会場いっぱいに音楽の喜びが広がりますように!

2008年12月〜信州大学混声合唱団第40回記念定期演奏会

歌うことは生きること、共に歌うことは

信州大学混声合唱団に初めて出会ったのは、ちょうど関屋先生の亡くなられた年のこと でしたでしょうか…その後、講習会での講師や客演指揮、軽井沢合唱フェスティバルで の競演など…、一つの出会いから幸せな再会を繰り返し、関係が持続して今日の演奏会 を迎えられていることをとても嬉しく思います。私自身の大学時代も合唱一色でしたが、 自分たちの力を試しながら「ひたむきに打ち込むことの出来る」大学の合唱活動は、決 して勝ち負けによる一喜一憂や、反復練習でテクニックを身に着けるばかりの場ではな いと思います。大学生活そのものが「知らなかった世界を広げていく場」であるなら、 合唱を通して心が広がっていくこと、人間としての豊かさを得ること、信頼しあえる仲間 を得ること・・・に最も大きな意義があると言えるのではないでしょうか。
信州大学の皆さんを見ていると、自然体での探究心とチャレンジ精神とを感じるとともに、 その伝統の中に合唱そのものを心底愛した関屋先生の撒かれた種がしっかりと育っている のを感じます。そしてそんな大学生と一緒に格闘しながら音楽を作っていくことは私の何 よりの楽しみでもあり、大好きな信州の土地で今日のステージを共に出来ることを大変嬉 しく思っています。

さて、我々はいつも二つの課題を抱えているように思います。
一つは「どのように自分らしく生きるか」そして、もう一つは「どのように他者と関わるか」 ということです。特に20歳前後のメンバーにとっては初めて自覚し得る重大な課題なのか もしれません。『くちびるに歌をもて〜心に太陽を持て〜人のためにも言葉を持て〜そして こう語りかけよう』というメッセージは、自分で自分を鼓舞しているうちに次第に自分が一 人ではないことに気付くプロセスで滲み出る涙のように、根源的な問い掛けと温かい励まし に満ちています。私にとっても思い入れのあるこの曲を人生の中で最も多感な時期を過ごし ている学生合唱の後輩たちと一緒に演奏出来ることは、とても大きな刺激です。
「音楽」とは、生命を与えられていることのありがたみを実感させられる力、喜び、励まし、 ・・・「仲間」とは、かけがえのない宝、生きている目的を支えるもの、伝えたいという意志を 生み出す力、・・・私たちの「未熟さ、稚拙さ、無謀さ」は、いつかはこうなりたい、という夢 を育む力、想像力を支える気持ち・・・。
いつもそう思っています。私たちの歌は生きることと直接結びついていると私は思うのです。
学生たちの心の底からのメッセージを引き出すことが出来ればと思います。

2009年1月〜混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ第31回定期演奏会

演奏会に寄せて

信長貴富先生の新曲初演(OV合同)となった昨年の30周年記念演奏会は私にとっても 非常に思い出深い演奏会となりました。ジェネレーションを飛び越えてOVさんとも一体 化したあのステージの熱気は今でも鮮明に蘇ってきます。しかし、さらに素敵なことは昨 年の演奏会が「新しい出会いの場」となり、今年の演奏会に繋がったことかも知れません。
昨年の練習中から仲良くなり、時に関西の私の合唱活動の現場にまで遊びに来てくれるメ ンバーたちに「久しぶりに大学生らしいバイタリティを見た」という感慨を持ったもので す。一つの出会いから双方向で新しい世界の扉が開かれていく様子が楽しく、お蔭様で期 待と喜びをもって今年の演奏会を迎えることが出来ました。

さて、彼らが選択した曲「蜜蜂と鯨たちに捧げる譚詩(オード)」は東京混声合唱団が 一般合唱団と競演するために作曲された三善晃渾身の2群合唱で、とても中規模の大学 合唱団が簡単に取り上げるような曲ではありません。しかしながら、この曲と出会い、 触発され、自分の中の世界が広がること、深まること、本物の音楽のみが持つ「人の人 生に根底から問いかけ、変革していく力」をグランツェのメンバーが潜在的に求めてい ることを察知しました。
大学生に求められていることは、少しでも上手く歌うことではないでしょう。人生にお ける最も多感な時期、「今しかない」というこの時期に、安易な答えの見つけ ようのない「問いかけ」や本物の「芸術の魂」に触れ、知性と感性と体力とを総動員し てひたむきに自分自身の中から表現出来るものを探し出し、挑む…ということではない かと思うのです。(同じように合唱に打ち込んでいた私自身の大学時代がまさにそうだ ったからです。)
かけがえのない「今日の演奏」に賭けるグランツェメンバーの気持ちを想像するだけで、 自分自身の気持ちが掻き立てられるようです。
今日の日がまた新たな出会いの扉を開いていくことになりますように…。学生と一体と なって一生懸命の演奏を披露出来ればと思います。

2009年12月〜信州大学混声合唱団第41回定期演奏会

演奏会に寄せて〜ふるさとのように感じ始めている信州

様々な経緯から始まった出会いが連続して、信州大学との関係が継続し、今年も今日の 演奏会のステージに立てることをとても嬉しく思います。名古屋から乗る信濃号はまる でふるさとに帰る電車のようにも感じますし、時に関西の私の合唱活動の現場にまで遊 びに来てくれるメンバーたちには「大学生らしいバイタリティを見る」とともに、一つ の出会いから双方向で新しい世界の扉が開かれていく様子が楽しく、いつも顔を見ると わくわくしてしまいます。信州大学との音楽のシーンはいつも楽しく、やりがいやチャ レンジングな気持ちに溢れてきます。

さて、今年の選曲は尊敬する千原英喜さんの渾身の傑作「雨ニモ負ケズ」です。
「作曲家は命を賭けて、人生の全てをぶつけて曲を書いているから、演奏者もそれくら いのつもりで曲にぶつかって、作曲家の想像力以上のものを発揮して力の限り歌って…、 」これは作曲家の千原先生が(酔うと(笑))といつも口にされる言葉です。
練習に行くたびに、本物の音楽のみが持つ「人の人生に根底から問いかけ、変革してい く力」に出会ったメンバーたちが、この曲と真剣に向き合い、触発され、自分の中の世 界が広がっていていること、深まり成長していっているのを感じます。
大学生に求められていることは、少しでも上手く歌うことではないでしょう。人生にお ける最も多感な時期、「今しかない」というこの時期に、安易な答えの見つけようのな 「問いかけ」や本物の「芸術の魂」に触れ、知性と感性と体力とを総動員してひたむき に自分自身の中から表現出来るものを探し出し、挑む…ということではないかと思うの です。(同じように合唱に打ち込んでいた私自身の大学時代がまさにそうだったからです。)
かけがえのない「今日の演奏」に賭けるメンバーの気持ちを想像するだけで、自分自身 の気持ちが掻き立てられるようで、気持ちが高ぶってしまいます。

今日の日がまた新たな出会いの扉を開いていくことになりますように…。私自身も学生 と一体となって格闘し、一生懸命の演奏を披露出来ればと思います。

2011年1月〜混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ第33回定期演奏会

コールグランツェ演奏会に寄せる

名古屋大学「コールグランツェ」第33回演奏会の開催おめでとうございます。
今年もグランツェは思い切ったことにチャレンジしています。昨年に続けて出たコ ンクールでは、初めて中部大会金賞を貰うことが出来ましたね。残念ながら全国大 会の切符を獲得することは出来ませんでしたが、多くの1年生とともに思い切って チャレンジしたことで、数年間続けてきた学生らしい積極路線が大きな推進力を生 み出しているように思います。大学合唱の先輩として思うのですが、大学生の合唱 団というのは、決して結果による一喜一憂ではありません。自分達の知性と感性と 体力とを総動員して大きな物事に当たっていくこと、そのプロセスで時に仲間とぶ つかったりもしながら、世界観や価値観を広げていくこと、想像力を養っていくこ と、…が最大の魅力でしょう。最近のグランツェの活動にはその学生らしさが充満 しており、思い切ったチャレンジをしてくれることが魅力だと思います。さて、こ の演奏会では「委嘱初演」!学生らしい生き生きとした表情で歌ってくれればと思 っています。

2011年1月〜信州大学グリークラブ第49回定期演奏会

演奏会に寄せる

ちょうど5年くらい前になるのでしょうか?京都において、信州大学グリークラブ ・同志社グリークラブを含む三大学のジョイントコンサートが行われました。その 時の信大グリーの歌声と、打ち上げの席での縁?から出会いが進展し、「同志社グ リークラブ」は中村先生に客演指揮をしてもらい、私はその後信大グリーのお隣の ?信州大学混声合唱団の演奏会で指揮をさせていただくことにもなりました。ジョ イントコンサートは時としてその演奏会だけでは完結しない副産物を生み出します。 そこで育まれた友情や出会いがきっかけになって、今日の日の演奏会も導いてくれ たように思います。
定期演奏会に向けて信大グリーのメンバーと一緒に練習することは私にとって、 とっても楽しいことです。信州大学の皆さんからは、大学合唱団が最も大切にして ほしい「自分たちらしさ」や、「一生懸命学び、創意工夫しようという」意識が高 く感じられるので、私自身も存分に力を発揮し、皆さんと一緒にコラボレートして いる気分になるものです。どうやら毎年信州の空気を吸わないと落ち着かないくら いに自分の音楽活動の中に信州大学の皆さんとの活動が大きなウェイトを占めてい るように感じます。

さて、今年は信長先生の「Voice」を演奏させてもらうことになりました。 保守的でオーソドックスな作品が主であった男声合唱のジャンルに革新的な要素 を持って衝撃を与えた作品です。サウンドやリズム等には実験的な要素をふんだ んに取り込みながらも、全体的な叙情を損なわないように配慮されており、これ を演奏することはスキルだけではなく、強い志と高いセンスが必要だと思ってい ます。今日は、熱く熱く、そしてすっと爽やかな演奏ができればと思っています。

2011年7月〜京都大学音楽研究会ハイマート合唱団 サマーコンサート

演奏会ごあいさつ

「京大ハイマート」との付き合いこれまでから何度かありましたが、 中でも数年前の「同志社こまくさ」さんとの熱いジョイントコンサ ートは、私の中でもかけがえのない思い出として残っております。
私自身の大学時代も合唱一色でしたが、自分たちの力を試しながら 「ひたむきに打ち込むことの出来る」大学の合唱活動は、決して勝 ち負けによる一喜一憂や、反復練習でテクニックを身に付けるばか りの場ではありません。大学生活そのものが「知らなかった世界を 広げていく場」であるなら、合唱を通して心が広がっていくこと、 人間としての豊かさを得ること、信頼しあえる仲間を得ること・・・ に最も大きな意義があると言えるのではないでしょうか。皆さんを 見ていると、自然体で仲間と合唱の喜びを味わっていると感じると ともに、ともすれば保守的になりがちな「大学合唱の構造」そのも のに対して、常に学生らしいチャレンジ精神を伴った意欲を感じ、 頼もしく思っております。大学時代を貫く「かけがえのないもの」 とは、教室から得られるものだけではなく、仲間と共に懸命にチャ レンジしたという経験、その自信そのものでもあるでしょう。 ぜひ合唱を通して様々なものと出会われることを期待しています。

2011年8月〜 四大学男声合唱団 サマーコンサート

Fragments〜若者たちが歌う意味

「真青な空、ぽかんと浮かぶ白い雲、6月の知覧はもうセミの声がし て夏を思わせる」
…曲中にも使われた断片です。
今年の6月に合唱講習会で熊本に出向いた帰り、思い切って鹿児島の 知覧にまで足を伸ばしてみました。時折の青空と時折の大雨が交錯す るおかしな天候の中でしたが、どうしても特攻平和会館で、この地か ら飛び立ち亡くなった若者たちの直筆の遺書や遺稿、ノートを目に収 めておこうと思ったためです。まだ二十歳前後だった特攻隊員たちの 気品や高潔ささえ感じさせる洗練された言葉遣いを見るにつけ、その 裏に滲む不条理や悲惨、その命の掛け替えのなさを思いました。開聞 岳を臨み、遥か南方の空と海を眺めると、時空を越えて様々な思いが 巡り寄せてきました。
曲の背景については作曲家の解説をぜひご覧ください。

偶然の重なりですが、
この8月の初めに、全国から公募した学生40名を連れて大阪 (グローバルピースコンサート)と広島(平和への祈りコンサート) で「原爆小景(1,4)」の演奏をしてきました。本日の演奏会を含めこ の難しすぎる課題に、真面目に一生懸命に取り組む学生たちを見なが ら、戦争体験が風化していくぎりぎりのタイミングで、戦争を知らな い私の世代なりのミッション、私の立場で果たすべき役割というもの を強く感じることなりました。
シュプレヒコールだけではなく、私たちが歌を歌うことの意味と価値、 歌の持つ影響力、若者たちが歌を歌うことで育まれ、喚起される「想 像力」こそを未来への力として信じたいと思います。

2012年11月〜 信州大学混声合唱団第44回定期演奏会

歌うことは、力強く生きること

信州大学混声合唱団に初めて出会ったのは、ちょうど関屋先生の亡 くなられた年のことでしたでしょうか…その後、講習会での講師を 皮切りに客演指揮を何度も繰り返し、毎年のようにいろんな形で皆 さんと顔を合わさせてもらっているように思います。一つの出会い から幸せな再会を繰り返し、関係が持続して今日の演奏会を迎えら れていることをとても嬉しく思いますし、おそらく私の中では「( グリーを含め)信州大学の合唱団」の持つ雰囲気がとても自然にフ ィットしているのだと思います。皆さんを見ていると、自然体での 探究心とチャレンジ精神とを感じます。合唱を通して心が広がって いくこと、人間としての豊かさを得ること、信頼しあえる仲間を得 ること・・・をしっかりと体現されているようにも感じます。最近は OBやOGの皆さんにも顔見知りが増え、いろんなところで声をか けてもらい、合唱団の歴史の一部を共有していることに感慨を覚えます。

さて、私たちはいつも二つの課題を抱えているように思います。
一つは「どのように自分らしく生きるか」そして、もう一つは「どの ように他者と関わるか」ということです。特に20歳前後のメンバー にとっては初めて自覚し得る重大な課題なのかもしれません。今回の 選曲は、そんな人生の過渡期を懸命に生きている皆さんと一緒に音楽 を作っていく時にとても相応しいと思える曲を選びました。
私がこの曲集でもっとも好きな箇所があります。曲集のタイトルにも 使われている4曲目ですが、「私がうたうとあなたは微笑み、あなた の瞳に私が映る…、」という場面です。
自分自身が何者なのかと考え悩み、人との関わりに戸惑う私たちですが、 自分自身がたくさんの人に愛されてきた存在なのだと気付く瞬間、 私たちは前に向かって力強く人生を歩んでいくことが出来るのでは ないかと思います。また、「励ましているつもりがいつしか励まさ れている…」ということがあるでしょう。「手を差しのべる勇気だ けでなく、差しのべられた手を強く握り返すことも大切だ…」と感 じることがあるでしょう。私たちの人生はそのような「人との関わり 中で成長していくこと」の繰り返しとも言えます。信州大学のメンバ ーとともに思い入れあるこの曲を力一杯演奏したいと思います。

…「音楽」とは、生命を与えられていることのありがたみを実感さ せられる力、喜び、励まし、…「仲間」とは、かけがえのない宝、 生きている目的を支えるもの、伝えたいという意志を生み出す力、 …いつもそう思っています。

2014年11月〜佛教大学合唱団45周年記念演奏会

演奏会に寄せる

佛教大学合唱団の記念演奏会の開催おめでとうございます。もう10数 年も前のことになりますが、「定期演奏会で思い切ってキリスト教の 音楽を取り上げたので出来れば見に来てください」と言われて(OB福 島君)、見に行ったことが私と 佛教大学合唱団との繋がりの始まりだ ったように思います。それから10年ほどの間、ジョイントコンサート やサマーコンサートでたくさんのチャレンジングな選曲をさせてもら いました。トルミスもフィンランド民謡もラトビア民謡も、アジアや 世界の国々の曲も、・・・私の指揮者としての興味のままに実験的に 取り上げましたが、当時のメンバーがことごとく興味を持って積極的 に取り組んでくれたことで、いつも楽しい練習が出来ていたと思いま す。そういう意味でも私の合唱指揮者のキャリアの中で も佛教大学合 唱団の存在は大きな位置を占めているのです。
春休みの一日、10人くらいしかいないメン バーを無限に並び替えさせ ながらコダーイやバルドーシュの短い曲を歌わせ、耳を作ることの練 習に費やしたこともありました。夜の図工室? で学生指揮者にひたす ら回転指揮法(秘伝7回転半?)を伝授したことも、楽しい思い出です。
そんなOBOGの皆さんと再会して、委嘱曲 に取り組めるということは何 と幸せなことでしょうか?
現役のメンバーはまた人数不足で、大きな困難と直面していると聞い ております。しかし、長い歴史にはいろんな困難が付き物ですし、多 くの試練があってこそ、受け継いでいくことの大切や仲間と気持ちを 共有し連帯することの大切さにも気づ けるのです。いまこそ、かつて の現役生たちが佛教大学合唱団の総力を結集して、現役生を盛り上げ、 背中を押してあげてください。
この演奏会が新たな扉を開くきっかけになってくれることを祈ります。

2017年7月〜ハイマート&アポロン&淀川混声ジョイントコンサート「創世」

「宇宙について」を前に

私たちは、「ひとりひとり」がうたって(=生きて)います。にも関わらず、個 人では存在出来ず、互いにすれ違い、関係を結びながら「ともに」音楽(=時 代)を織りなしているのです。20世紀の日本音楽界の巨人とも言うべき柴田南 雄の残したメッセージはこのことなのかもしれません。私たちの中にある時間、 私たちを取り巻く時間、私たちの中にある物語、私たちを取り巻く物語、「歌う ことのトポロジー」が示すのは私たちの人生と世界との関係なのでしょう。
・・・京都、大阪、神戸、様々な世代・・・、またとないこの出会いを持ち得たメン バーで、20世紀に聳え立つ合唱曲の金字塔にチャレンジしてみたいと思います。
2017年12月〜京都府立大学合唱団60周年記念のメッセージ〜

京都府立大学合唱団60周年に寄す

振り返ってみると「京都コンサートホール」で40周年の記念コンサートを聞いたのが、もう20 年も前のことになってしまいました。私もまだ20代と30代の境目におり、まさかその10年後 に自分が50周年のコンサートを指揮しているなどと思いもしなかった頃です。そしてその10年 後の50周年で、私の立ち上げたばかりの児童合唱団(みやこキッズハーモニー)とともに演奏さ せてもらった「日本の四季(三善晃)」は今でも私の胸に焼き付いております。
「みやこキッズハーモニー」はおかげ様で昨年10周年のコンサートを行い、私がテキストを書き下 ろした合唱物語「さびしがりやのサンタクロース」を演奏しました。
つまり、それからさらに10年が経過しあの頃4、5年生だった主力メンバーは二十歳を超えた大学 生になっているのですね。
歳月が経つのは早く、その間にいったいどんなことがあったのだろうと思い返すとなかなか具体的な ことは浮かばずに、ただひたすら「時の流れに眩暈する」思いです。

さて、再びこの記念コンサートで合同演奏を指揮させてもらうことを嬉しく思っています。
ある世界的に高名なスペインの指揮者に聞いたことがあります。
「合唱において一番大切なことは何でしょうか?」
愚問と分かっていながら、私の英会話レベルでは複雑な質問が出来ず、つい口にしてしまった質問です。
すると、指揮者は少し考えたあとに笑顔で言いました。
「合唱はいろんなジェネレーションでやれる、年配者も若者も男声も女声も子どもも一緒になってやれる。 それが合唱の一番大切なところだと思う」
もちろん、こちらの質問の場面やシチュエーションによって答えは異なったのだと思いますが、予想外 の答えであったにも関わらず、非常に納得がいって大きく頷いたことがありました。

今回の演奏が、そのようなある種の合唱の本質を体現出来る演奏になりますように。多くの世代が合唱を 通して連帯感を持ちながら気持ちのこもった歌が歌えますように。微力ながら力を尽くしたいと思います。

2017年12月〜同志社コール・フリューゲル第51回定期演奏会

アポロンの竪琴について

・・・ときどきに思います。
私たちは時間(とき)の中にいるのでしょうか?
私たちの中に時間(とき)があるのでしょうか?
私たちは宇宙の中にいるのでしょうか?
私たちの中に宇宙があるのでしょうか?
見上げた満月が、瞳を閉じても心の中にくっきりと存在するように、私たちと世界とはお互い呼吸し合い、 包み包まれながら存在しているに違いないですね。
遥かな時の物語、遥かな海の物語…。
「アポロンの竪琴」は、拙作(みなづきみのりの詩)を宮沢賢治の詩と混濁させるという驚くべき手法で 描かれた千原英喜先生のファンタジックな歌物語です。音楽の力で皆様をめくるめく夢幻の世界に誘うこ とが出来ればと思います。

さて、「同志社コール・フリューゲル」ですが、20世紀の最後のほうに初めて客演指揮をさせてもらって からかれこれ20年近い歳月が流れました。須賀先生がお引きになり、新しい立場から、彼らの成長を見守る ことになりました。大学は遭遇の場です。また、「ひたむきに打ち込むことの出来る」大学時代の合唱活動 は、決してテクニックを身に着けるばかりではなく、たくさんの出会いを繰り返す場でもあると思っていま す。合唱を通して心が広がっていくこと、人間としての豊かさを得ること、信頼しあえる仲間を得ること・・・、 に大きな魅力を感じ取り、生き生きと活動して欲しいと思っています。

2018年2月〜混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ第40回定期演奏会

コールグランツェ演奏会に寄せる

名古屋大学「コールグランツェ」第40回演奏会の開催おめでとうございます。私とグランツェとの出会いは第30回演奏会の委嘱作品「いろとりどりのうた」をOV合同で演奏する際に、作曲の信長先生から指揮者として私を指名していただいたことに始まります。あれからついに10年が経過したのですね。当初20〜30人だった現役メンバーがここまで増えてくれたことは嬉しい限りで、昨今のコンクール全国大会での偉業(2年連続金賞)なども大変立派なことですが、私には30周年の委嘱に向けてエネルギーを注いだT君や、とても現役生には思えない落ち着きぶりのMちゃんや、某大先生に駅の構内を走らせたK君や、頑張り過ぎて救急車を呼ぶ事にもなったW君らをはじめ、少ない人数の頃に敢えて2群の合唱曲(三善晃の「蜜蜂と鯨たちに捧げる譚詩」)を選曲して喉が千切れるほどの全力で歌ってくれたメンバーも含めて、10年間の現役生の頑張りが等しく思い出されます。この間、名古屋に練習に行くことは私にとっては常に嬉しいことでした。それは、グランツェメンバーの練習に取り組む姿勢の中に常に謙虚にして意欲的なものがあるからなのです。その気持ちを大切に学生らしく頑張り続けてください。

さて、最近のグランツェには「合唱物語?」という新しいジャンル開拓に加担していただいております。2年連続で山下祐加先生に素敵すぎる作品(「夢見る翼の歌」「青をめぐるクジラ」)を作っていただきましたが、今年はこれまた大人気作曲家の相澤直人先生に楽しい作品を作っていただきました。意欲的な中身を若い感性の皆さんとともに一緒に演奏することが楽しみでなりません。

今日という日がグランツェにとっても私にとっても、関係する方々や客席の皆さんにとっても特別な日としてその思い出の中に刻まれることを願っています。「音楽は人生を変え、人生を支えてくれるものだ」ということを信じ、気持ちの篭った演奏を目指しましょう。

2018年12月〜同志社コール・フリューゲル第52回定期演奏会

演奏会に寄せて

今年のフリューゲルは「学生合唱コンペティション&コンベンション」に出場し、見事金賞を受賞しました。結果に一喜一憂し過ぎる必要はないのですが、一昨年の悔しさから2年がかり(銅賞→銀賞→)で気持ちを継ぎ、努力をされたことは大変立派でした。大学生の合唱団というのは、自分達の知性と感性と体力とを総動員して大きな物事に当たっていくことが最大の魅力ですが、続けて出場される中で先輩や後輩や先生たち、他大学の仲間とも出会い、世界観や価値観を広げていかれたことでしょう。ますます意欲的活動されることを期待しています。

さて、同志社大学の合唱団として、毎年クリスマス時期に演奏会を開催しラテン語の宗教曲をレパートリーにしているフリューゲルですが、今年はクリスマスを題材にした合唱物語にチャレンジすることになりました。「合唱物語」という形式は、演技や歌唱力のハードルが高くなる合唱劇等とは少し趣を異にし、組曲として演奏出来る楽曲をナレーションとちょっとした演出や台詞の割り振りで進行していく形式です。シャイな?合唱人たちが少しずつ舞台で表現することや、歌と言葉、言葉と身体の結びつきを学ぶことで、今後の合唱活動をより魅力的なものにしていってくれればと願っております。

<さびしがりやのサンタクロース>

これはサンタクロースの363日間の様子を想像して作った物語です。サンタクロースってクリスマスが終わったらどうしているのでしょうね?実はひとりぼっちでちょっと寂しかったりして…。冬の間は暖炉でパイプの煙をくゆらせながら、子どもたちからもらった手紙を読んで過ごしているのかも…?冬が終わると、森や湖でキノコ狩りやマス釣りをしているのかも…?そして秋になると子供たちよりもがサンタさんのほうがクリスマスを待ち焦がれてそわそわしているのかも…?と考えながら私が他愛もないファンタジーを書き、「合唱団葡萄の樹」と「みやこキッズハーモニー」が世代を超えて一つのステージに立てるように松波千映子先生に合唱物語にしていただきました。今日は特別に混声合唱に編成しなおしたバージョンで歌ってみます。

みんなきっと、「ちょっとはさびしがりや」で、「サンタクロース」が大好きですからね。心に小さな灯かりがともりますように。クリスマス前のひと時を客席とともに分かち合い、祈りと喜びに満ちた時間に出来たらと思っています

2019年3月〜混声合唱団名古屋大学コール・グランツェ第41回定期演奏会

コールグランツェ演奏会に寄せる

名古屋大学コールグランツェは今年出場した全日本合唱コンクール札幌大会でもスーパーな頑張りを見せてくれました。前日が授業日程のため、名古屋からの最終便で札幌に入るということは聞いていたのですが、なんと機体トラブルで飛行機が飛ばなくなったのです。そこから急遽深夜に羽田空港に向かい、空港で一夜を明かした彼らは、当日の早朝に羽田から千歳に飛び、バスで移動をしてきたのですが、そもそも雪が降り出しており、思うようにバスも進まないまま、ホールの集合時間ぎりぎりに間に合ったのでした。もちろん、予定していた早朝の練習は全くしないまま、人数が多いため12分のリハ時間でも全曲を通せないまま「ぶっつけ本番」状態での演奏でしたが、見事な演奏をして2位金賞を獲得しました。改めて学生の力を思い知りましたし、気転を利かせて逆境を跳ねのけるだけでなく、彼らのメンタルには、「間に合って良かった、これでちゃんと聞いてもらえる」という喜びに満ちており、私は心底「学生って凄いなあ、良いなあ、一生懸命にやったことは何でも良い思い出になるなあ」と思いました。

さて、この間、私とともに「合唱物語?」という新しいジャンル開拓に加担していただいてくれている名古屋大学コールグランツェですが、このようにコンクール一辺倒でなく演奏会での積極的なチャレンジの数々が彼らの闊達な精神を支えているとも思います。昨年はついに「カレーの歌」(相澤直人作曲)まで歌ってくれたのでしたが、今回は、少し「お話し的要素」の強い「猫町物語」です。日ごろから敬愛する(なかにしあかね先生)には本当に素敵な曲を作ってもらうことが出来ました。演出、朗読にもお世話になり、様々なことを学び試しながら「キャッツ」を超える?舞台作りにチャレンジしてくれるものと思います。どうぞお楽しみに。

音楽を楽しむひとときが、私たちみんなの人生を支えるひとときになりますように。

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