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 うぐいすも鳴き

09−3 2009.4.13

ume2009 「〜梅の小枝にうぐいすが、春がきたよと鳴いてます〜」という歌は、 小さな頃から母が歌っており、他では聴いたことがなかったので、 「本当にそんな歌あるのだろうか」と訝しく思っていたものでしたが、 その後、楽譜集で「うぐいす」というタイトルの曲だと分りました。 現在、「みやこ・キッズ・ハーモニー」で歌わせております。「みやこ・ キッズ・ハーモニー」では、わらべ歌、唱歌、遊び歌(実際の遊びとと もに)季節の歌、世界の歌、を柱としており、中でも失われつつある 「季節の表情や情緒性、そこに込められた思いのようなもの」を緩やか に確認する意味でも「季節の歌」は欠かせないメニューとなっています。

ume2009-2 さて、3月には紅白の梅の香の残る同志社大学のキャンパス内で歌わ せていただく機会を得ました。古くからお世話になり、親しくもさせ てもらっている岡林教授(美学芸術学)の主催イベントで、大学の礼 拝堂内に人形(マネキン)を並べ、その人形を前にオルガン演奏や講 話がなされ、和歌が詠まれる…という、全く事情を知らない人が覗く とちょっとぎょっとするかもしれない、微笑ましい感じの芸術イベン トでした。
実はちょうど昨年の春に、戦前アメリカから日本に贈られた人形(青 い目の人形)と、そのお返しとして日本からアメリカに贈った人形 (市松人形)とを展示するイベントがありました。ちょうどその当時 それに合わせて「人形を迎える歌」と「人形を送る歌」が作られてい たらしく、その楽譜も見つかったので「人形展示と共に演奏をしてみ たい」という相談を受けたので、「みやこ・キッズ・ハーモニー」 で歌わせてもらった経緯があります。

今回は、「善人なほもて往生す いわんや人形をや」というタイトル で七彩マネキン20数体、市民から当日持ち寄られる人形数十体、を前 にしたイベントのオープニングを児童合唱で飾るというものでした。 曲目紹介をする私も、さすがにたくさんの人形に見つめられて、どぎ まぎしてしまい?、目を合わせることが出来ずに、取り巻く関係者の 方を見てしまいました。でもイベントの主旨からすると、人形に向か って司会をするべきだったのでしょうか。
マネキンたちに見つめられ、面白がっている子も怖がってる子も居ま したが、屈託もなく、「うぐいす」や「人形の歌」を歌って珍しい演 奏の場面を楽しく終えました。そのような機会は滅多にあり得ないと 考えてしまいがちですが、私たちは、よくクマのぬいぐるみに語りか けたりもする訳です。木や鳥に対して語ることもあるでしょう。無機 的に見える人形にも、なんらかの気持ちが宿っていると見なすような ことを日常生活の中でたくさん行なってきているようにも思います。 芸術学的議論は別に譲るとして、マネキンさんたちに陣取られた教会 の礼拝堂という不思議な空間を抜けて外に出ると、まだ春冷たくも新 しい香りに満ちた空気が心地よく迎えてくれていました。
ようやく春が来たようです。

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