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指揮者に聞く男声合唱の魅力

私には、「児童合唱は出てきただけで拍手をもらえる」 が、「男声合唱は 大声を出しただけで拍手をもらえる」・・・という意識があります。つまり、 まず男声合唱は、上手い下手に関係なく、喉自慢であろうが高らかに歌い上 げることによって道行く人が足を止めてくれる要素があるのですね。女声合 唱でも混声合唱でもそうはいかないの です。また、混声合唱団の打ち上げ で見られる光景なのですが、男声だけが集まり歌を歌うことってないでしょ うか?男声合唱の音域が人間の 生理に働きかける何かがあるのか、もしく は合唱人の比率が比較的男声合唱出身者(大学合唱が合唱界をリードして いた時代がある)が多いということもあるのかと思います。私自身の出自も 大学時代における男声合唱活動でしたが、ある種のスポーツのように喧嘩し たり怒鳴りあったりして、厳しくチームビルディングしながら取り組んで来 れたことが(良くも悪くも)男声合唱というものの価値を特別の高みに押し 上げているような気もします。
しかしながら、私は実は敢えて「男声合唱の魅力は まだ まだその先にある のだ」と言いたいのです。「懐かしいOBが集まる・・・、あの頃は良かった ・・・、俺らの時はそうだった」と、昔歌った歌ばかりを歌うということか ら脱却したい一心で私は20代のときに一般男声合唱団である「なにわコラ リアーズ」を結成し、常に新しいレパートリーにチャレンジしてきておりま す。本来はその時代時代や、その年代でチャレンジすべき曲目や歌い方があ ります。グローバルな世の中で伍して行くべきレパートリーというものもあ ります。そういう意味では、大学時代のトライと50代を過ぎてからのノス タルジーが中心となりがちな男声合唱の魅力はまだまだ全開しておらず、 「もっと貪欲に前向きになれるはず!」とも言えるでしょう。 私はアグレ ッシブな男声合唱活動を通して、忙し過ぎて疲弊するサラリーマンを生み出 す世の中でなく、大人の男声が魅力的な音楽文化を発信出来る世の中に変え ていきたいと思っているのです。

ハンナ 2015年9月号に掲載
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