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花梨日誌

16−07 2016.12.31

平日のほとんど毎日、花梨の木を見て過ごした1年でした。
ビクトルエリセ監督の映画に「マルメロの陽光」という映画がありましたが、まさしくあんな感じに。
日常というのは微妙なニュアンスの変化に満ちた世界です。
毎日定点観測すると、その小さな差異を見つけることは少なくありません。
毎朝7時に東の窓を見る人は少しずつ太陽の位置がずれていくことに気づくでしょう。毎晩月を眺める人 は少しずつその形状が変わっていくことに気づくでしょう。庭の木々や窓辺の鉢から季節の移ろいを感じ る人もいるでしょう。芸術的な表現を目指すとき、その微妙な色合いや表情の変化を繊細に表現したいと きがあります。同じ空でも、潤いのある空なのか、乾いた空なのか、窓枠から見る空なのか、野原に広がる 空なのか、…その色や光のグラデーションに至るまで様々な表情を表現しようとするとき、日常の様々な ものに対する小さな観察眼が生きてくるようにも思います。

毎日同じ時間に花梨の木の前に立つと、少しずつ匂いが変わっていくことが分かります。日々の表情に違い があることに気づき、まるで花梨の木と会話をしている気持ちにもなってきます。その僅かの匂いの違いや、 艶の違いは光や風や気温の影響を受けているのでしょう。でも、もしかしたら見ている私の気持の変化を映 しているようにも思います。世界はそういったたくさんの要素の関わりや触れ合いから成立しているのですね。

                      
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