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 ピアノと混声合唱のためのメルヒェン「青をめぐるクジラ」

17−01 2017.3.30

小学校6年生で演劇部に属し、唯一取り組んだ創作劇(未来の七夕)では主役を演じた 経験もあり、小学校の卒業文集には将来の職業の夢を「作家」と書いていたこともある 私の体内のどこかには「物語的なもの」への憧れがあるのかもしれません。
この10年以内に書き出した詩は、持続力とか体力のようなものに欠ける私には相応しい スタイルでもあったのですが、心の底に「冒険物語」であるとか、「成長していく物語」 であるとか、・・・そのようなものへの憧れがあるようにも思います。
ちょうど、一番好きな音楽がラヴェルであると同時にベートーヴェンでもあるようなも のでしょうか。

さて、名古屋大学コールグランツェとのこの2、3年間の取り組みは、適切な言葉が見 当たらず「合唱物語」と呼んでいるうちに、それがしっくり来るようになってきました。
全体を貫く緩やかな物語(複雑でない)があり、その節々に合唱曲があり、それを中心に ナレーションや言葉の群読、照明や簡易な演出で総合的な舞台を作っていくというもので す。いずれも演出には二口大学さん、朗読には広田ゆうみさんという信頼出来るお二人に お願いをしており、逆に言うとそのような方々の協力があって初めて成立する世界なのだ と思うのですが、昨年「夢見る翼のうた」を作曲いただいた山下佑加さんには私の意図を 汲んで理想的な曲を書いていただきました。何しろ朗読にアドリブっぽいピアノ伴奏をつ けていただいたり、短時間で曲を追加し尺を調整していただくなど、無理難題聞いてもら った形です。でも、そのような作曲家や演出家と過ごす「創作の時間」は私にとっては生涯 の中で一番と言って良いくらい楽しい時間なのでした。そして、今年はその姉妹編とでも 言うべきものを、というお願いをしまして「青をめぐるクジラ」という作品を作っていた だきました。

「夢見る翼のうた」が鳥の話であり、音楽の隠し味としては「グレゴリオ聖歌」から始ま って「マドリガル〜古典派〜ロマン派〜・・・現代音楽」と時代を駆け上がって行く仕組みに なっていたのに対して、今回の「青をめぐるクジラ」は鯨と少年の話であり、音楽の隠し味 としては「アイルランド」から始まって、「アフリカン〜スペイン〜北欧〜・・・モンゴル」 と横軸的に世界を旅する仕組みになっています。
物語は他愛のない少年の父探しの話で、大掛かりな演出を前提としたオペラでも、演技が前 提や、台詞や文章の全てが音になるタイプの合唱劇でもありません。実際に見ていただく以 外に何と表現のしようがないのですが、私はこのふんわりとした総合芸術的なジャンルにま たとない居心地の良さを感じ、最近はすっかりそっち方向の取り組みに気持ちがシフトして おります(除:男声)。

(合唱物語シリーズ)
■合唱ミュージカル「夢にこだまする〜あるボスザルの物語」曲:高嶋みどり
■混声合唱とピアノのためのメルヒェン「夢見る翼のうた」曲:山下佑加
■混声合唱とピアノのためのメルヒェン「青を巡るくじら」曲:山下佑加
■歌と語りのためのシアターピース「戻り橋」曲:増田真結
■合唱物語「さびしがりやのサンタクロース」曲:松波千映子

全て50〜55分くらいの演奏時間(「戻り橋」は予想時間として)なのですが、このジャンル の研究を進めて、昔取り組んだ合唱劇のような形での連続発表会を行うことを夢みています。こ のような方向性の先には合唱のジャンルとしての広がりやポピュラリティが拡張していくようにも 思いますので。
人生ようやく3楽章目(スケルツォ)とでも言うのでしょうか?
近いうちにコンクールから脱却したオリジナリティのある合唱の取り組みをしていく予定です。

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