いろとりどりの歌
名古屋大学コールグランツェ30周年記念定期演奏会〜信長貴富委嘱ステージ〜
08−01 2008.2.6
今年も素晴らしい曲と素敵な歌い手との出会いからスタート出来て幸福でした。
コンクールで賞を取ることでなく、学生合唱団の頑張りと協同出来ることが私
の合唱指揮者としての目的でもあったのですが、名古屋大学コールグランツェ
30周年記念演奏会でのOVさんを含めた出会いは私にも特別な思い出を残し
てくれました。
もともとはグランツェメンバーが30周年記念の演奏会に新曲を委嘱したい気
持ちで猛烈に信長先生にアプローチしていたようですが、信長さんから指揮者
として私が紹介され、今回名古屋のステージに立たせていただいたのでした。
合唱そのもののスタイルについて試行錯誤された中で、同じように試行錯誤し
ている(つもりの)私を呼んでくださったことも嬉しかったですが、新曲の中
には合唱のスタイルそのものへの問い掛けと仕掛けを含めたたくさんの工夫が
なされており、おおいに共感しました。
…客席の中にソリストを配置したり、客席に向けた携帯電話の写メール撮りや、
セリフが入ったシアターピース風の作品、ペンライトと照明を使った演出等…
さまざまの工夫は、楽譜の指示であったり、メンバーと私が練習の中から試し
てみたことでしたが、いずれも、取って付けたような演出になることを目指す
ものではなく、「合唱団は雛壇に並び突っ立ったまま歌う」という概念を柔軟
にほぐして、少しでもエモーショナルなものを表現出来ないか、客席を巻き込
めないか…と工夫しながら辿り着いた演奏スタイルでもありました。
そもそも、合唱が「演劇」や「ポピュラーソング」よりもやや閉鎖的に感じた
り、消極的に感じたりすることに対して、なんらかの工夫が出来ないか…とい
うことは私自身が常に考えてきたことでした。 合唱劇の取組→
「感動!合唱劇どんぐりと山猫」については別記
した通りですが、今回の取組はジャンルを越境していく前に合唱そのもののスタ
イルへの試行錯誤とも言えます。
「淀川混声合唱団」や「葡萄の樹」の演奏会でも、「なにわコラリアーズ」や
「アンサンブルVine」で出たコンクールでも、この数年間常に「動き」を
伴ったステージを意識していますが、私の場合「動き」とは、歌って踊るとい
うことではなく、合唱の表現場面において、視線の動きや、膝から上の身体の
使い方を伴わすことで「歌そのものに表情を与えていくこと」や「合唱団とし
て一体感を醸成していくこと」を狙ったものであります。
また、「フォーメーションを変えたり、照明での工夫をすること」も客席から
見たときの視覚的な効果を工夫してのことですが、これも決まり事の中で動き
を覚えるようなものではなく、歌そのものの力や雰囲気がそのまま客席を巻き
込むことへの試行錯誤でもあります。ですから、最終的には「演出ありき」の
ステージを作っている訳ではなく、「音楽をどのように消化し、どのように身
体の中に充満させ、会場にほぐして届けるか」に根差した緩やかな演奏スタイ
ルを考慮してのものだと言えるのです。
その点、グランツェメンバーは私の練習の時にはいつもとても集中力を発揮し
て音楽そのものに取り組んでくれていました。その延長線上に緩やかな演奏ス
タイルが位置づいたことが私にとっても嬉しかったのです。演奏に向けてのモ
チベーションも高く、演奏会ではきっと駆けつけてくれたであろうたくさんの
仲間たちのいる客席の雰囲気も手伝って、自然な流れをもった気持ちの良い演
奏に繋がったと思っています。作曲家と指揮者と歌い手と客席が出会い融合し
て一つの音楽世界を体感出来たのではないかと思っています。
私にとっては大変楽しく意義のある演奏会となりました。
P.s
演奏そのものも良い思い出ですが、名古屋にたくさんの歌の仲間が出来たことは
とても嬉しいことです。そう言えば、「愛知県合唱祭」も「東海メール」も控え
ています。気分良く来年の演奏会(グランツェ)の客演も引き受けさせてもらい
ました。ついに重食喫茶?「マウンテン」に行ってしまう日も来るでしょうか…。
P.s
「地下水」という曲の携帯電話で写真を取るシーンへの合図です。メンバーから
ずっと写真を撮られ続けておりました。
P.s
もらった豚のぬいぐるみです。信長先生が「黒」私が「白」です。白か黒かと
聞かれるとつい「白」と言ってしまいます。
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