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 やっとオープンそして、さようなら京町家

08−02 2008.4.10

桜

春はお別れの季節でもあります。
「なにコラ」は例によって何人ものメンバーが流出(一体この国はどれだけ首都圏 に人を集めてしまうのでしょうか・・・?と、いつも思ってしまいます)し、半分やけ になってしまっていましたが、何と私自身にも異動勧告がなされてしまいました。 (といっても別校地への異動ですが・・・)圧倒的にアマチュアが多い合唱の現場にお いて、仕事を持っている立場を有していることによって、気づき、意識していける こともあるのではないか、と考えたりすることもあるのですが、このような事態に 直面すると、やはり組織体に勤めていることの無力を感じるものでもあります。

しかしながら、思い出してみれば入社から8年間は土日以外は12時前にしか帰宅 出来ないというハード業務に従事していたのですが、10年前に学生と関わる業務 をさせてもらってからは、自分の中に眠っていた「人や教育に対する関心や気持ち」 が一気に芽生え育っていったようにも思います(合唱指揮にも大きく影響)。学生 自治会の崩壊前から学生に関わり、状況の変化に対応する新しい学生支援の形とし て、様々な課外プログラムを企画させてもらいました。(・・・課外プログラムは今で は諸大学の学生部でベーシックな業務となっています。)合宿等で学生と膝を交え ながらクラブ・サークルの支援方策を模索してきたこともありましたが、そのあた りは、自分自身の私的な部分でもある学生合唱に対するイメージや思いと業務とが ちょうどクロスオーバーしていき、心と頭、気持ちと理論とが上手く拮抗し、充実 して業務を遂行する感覚を得ることが出来たものです。

心残りは最後の町家プロジェクトの成果を見ることが出来なかったということで しょうか。10年間の一連の業務や取り組みから得た(現段階での)帰結点として、 学生に欠落している「地域との結びつき」をキーワードに据え、子どもやお年寄り を含めた異世代が交流をするプロジェクトを準備していたのですが、スタートと同 時に異動というのが少し寂しかったです。これは京都の古い町家を一軒丸ごと借り、 すっかり地域に溶け込まなくなった学生を中心にして、様々なプログラムを展開し ていくというものです。一生懸命に町家を探し、大変手間取った改修がやっと終わり、 いよいよこれからプロジェクトを展開していけるという時に異動ですから、サラリ ーマンの性、組織の理論とは言え、ちょっとがっかりはしてしまいます。もちろん、 この10年間で学生と関わってきた業務のことを考えると、そのめぐり合わせに感謝 することのほうが多いので、残念ながら諦めるしかないということでしょうか。

まち家

町家は3月29日にオープンしました。
ここでは、様々な世代が一緒にサークル活動をし、一緒に季節の行事を楽しみ、 昔は銭湯や定食屋でなされたような語らいや議論の時間も持つ予定です。地域や 諸学校の行事に学生も顔をだし、地域のルールや習慣にも関わっていく予定です。 コンビニ、メール、ワンルームマンションの普及で、近所の住人が誰かも分らな いような世の中において、学生が地域の人たちと顔を合わせ、言葉を掛け合うこ とから、様々なことを学び、やがて思いやりのある社会人に育っていって欲しい という願いを込めたプログラムです。

この取り組みは10年後まで続いていてくれるでしょうか・・・?、あるいはその ことがきっかけになって京都の町の中心に学生と子どもとお年寄りが違和感なく 地域協力している姿が見られるでしょうか・・・?学生は先輩から大切なことを教 わり、後輩である子どもたちへしっかりと伝えているでしょうか・・・?。

撒いた種を自分で収穫できないのは残念ですが、それを多くの人が関与しながら 育ててくれだろうことを想像するのもまた一つの楽しみなのかも知れないと思って います。
私の種まきした町家(出町柳にあるので「でまちや」と言います)、一度のぞいて みてくださいね。

でまち家
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