雨森先生の合唱団とのジョイントコンサートの中から

2007.3.14

いつも思うのですが、雨森先生ほど最初から最後まで全力投球で合唱の練習に当たられる 方はおられないのではないかと思います。
既に高い力量を持っておられるにも関わらず、勉強熱心で、自身が燃焼し尽くすことによ って合唱団にベストを尽くさせる姿勢には敬服しております。なかなか真似の出来ないこ とです。
3月4日には「淀川混声合唱団」と雨森先生の合唱団「まい」(長野)と「CANTUS ANIMAE」 (東京)のジョイントコンサートが行われました。ジョイントの形態としてはもう少し工夫 が必要だったなあという反省がないではないのですが、コンセプトとしては、「コンクール の全国大会以外の場でもっともっといろんな地域にある合唱団同士が交流していきたい!」 ということでもありましたので、意図の一部分は達成されたかと思います。フルメンバーで 来て頂き、素晴らしい演奏!を聞かせてくださいました両団体に心から感謝申し上げます。

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私のことで申しますと、マーラーの歌曲「さすらう若人の歌」の第四楽章「君が青き瞳」 を四群の混声合唱にアレンジした曲を合同演奏で指揮させてもらえたことが印象に残って おります。
フィッシャー=ディースカウの歌唱などで有名なこの曲ですが、男声合唱ファンならご存知の 通り、私の師匠である(故)福永陽一郎氏の男声合唱アレンジがあります。私が学生指揮者 (同志社グリークラブ)の頃、定期演奏会で何を指揮したら良いか迷って先生のお宅にお邪 魔したことがあったのですが、実はその帰り際に「君はマーラーがいいんじゃない?」と紹 介されたのがこの曲なのでした。

学生指揮者にとって一世一代の定期演奏会で「何の曲を指揮」するのかということは自身 のアイデンティティにも関わることでもありました。私は前期の関学グリーとのジョイン トコンサートで大好きな曲「月下の一群(堀口大學/南弘明)」を指揮しており、すでに 定期演奏会も「中勘助の詩から(中勘助/多田武彦)」という自分のためにあるようなも う一つの大好きな曲を決めておりました。しかしながら、幸か不幸か従来は1ステージで ある学生指揮者のステージ枠がこの年の定期演奏会に限って諸事情から2ステージとなり、 もう1つの曲を決めあぐねたために夏休みの途中に湘南藤沢の福永先生宅をお邪魔したの でした。福永先生がどの程度私のことを見ておられたのかは分かりませんが(福永先生と の思い出については「耳をすます/ Y.Fの こと」を参考にしてください)、前期演奏した「月下の一群」をとても気に入っておら れたので、資質と傾向を見ての判断だったのかとも思います。ともかくまだ自信が持てて いなかった私としては、考えもしなかった大曲を推薦されたことで一気に舞い上がり、そ の気になって定期演奏会まで突っ走ったのでした。

「さすらう若人の歌」についての思い入れは(別記→「耳をすます/「さす らう若人の歌」演奏の前に」)のとおりです。 昔の学生合唱団のパンフメッセージとしてもちょっと「肩に力の入りすぎた」文章でも あるのですが、当時の同志社グリークラブ全体に滾っていた熱き血を思い出します。
「さすらう若人の歌」は「フェスティバルホール」(関西六連演奏会)と「ザ・シンフォ ニーホール」(定期演奏会)で、いずれも(今では考えにくいことですが)超満員の聴衆 を前に演奏することが出来ました。練習や演奏を聴いた福永先生は特に多くをおっしゃい ませんでしたが、定期演奏会前に「僕が君のこと話したら『福永先生の前で学生がマーラ ーやるなんて聞き捨てなりません、見に行きますっ…』て、早稲グリOBの山田あつしっ ていうのが来るよ」と笑ってられました。私が怯えた山田あつしさんは結局来られなかっ たのですが、随分後にニューヨーク・シティオペラの日本人指揮者として「山田敦」さん が紹介された時、そのことを思い出しました。

lindenbaum-flower話がずれていきました。
今回は第四楽章の「君が青き瞳」の四群合唱を指揮させてもらいました。演奏の出来につ いてはよく分かりませんが、菩提樹の花びらが舞い落ち、主人公が瞑想の中に潜り込んで いく状況をイメージしながら、自分自身を主人公に置き換えた18年前への時間の旅 をしていたのでした。

P.s
演奏会について)
雨森先生の音楽は刺激的で、それに反応し表現出来る合唱団は非常に素晴らしいと思いま したが、冷静にみると優劣ではなく合唱団というものの「個性」が非常に面白く、対比的 に見えました。合唱団の個性を比較するということは音楽の多様性や豊かさを立体的に体 感するということでもあります。逆に言えば普段「よどこん」で当たり前に感じているこ とは、実は充分に一つの個性や方向性になっていたりして、アプローチの多様性の中に音 楽や人間の営みの奥深さを確認しました。こういうコントラストや個性のぶつかり合いこ とこそが「ジョイント」コンサートの真の意義なのではないかと思った次第でした。

写真: 季節の花300より