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 子どもコーラスフェスティバルIN京都

18−03 2018.12.29

私に合唱指揮者としての特徴があるとしたら、「子どもの合唱団(みやこキッズハーモニー)」を指揮しているということでもあります。もちろん月2回だけの合唱団で、立派なものではないかもしれませんが、例えば合唱指揮者としてのキャリアを考えた時には、児童合唱のジャンルは怖くて手を出しにくいジャンルですし、ある意味思いきりのいることだと思います。私自身は約20年前に、ほんの偶然が重なって南川八重先生が解散を考えられていた「畷ジュニアハーモニー」を引継いだのですが、子どもの数がひと桁になっても10年間かけて修行させてもらったことが、以後の指揮活動の哲学を支えているようにも思います。その後、「児童合唱は、歩いて練習に行ける距離でないと難しい」という教訓を得た私は京都に「みやこキッズハーモニー」を立ち上げたのですが、かれこれ10年。子どもと向き合いながら「歌とは何か」「合唱とは何か」「私たちは何を伝え、何を教え、そして気付かされるのか」・・・ということを考えられるきっかけを得られたと思っています。

実は私の練習は、子どもの合唱団だろうが、「なにわコラリアーズ」だろうが、混声合唱団だろうが、年輩の合唱団だろうが、中高生の合唱団だろうが、大学生の合唱団だろうが、基本的に同じメソッドで練習をしています。もちろんそれは、畷ジュニアの10年間の中で私が必死で学んだことをベースに成り立っているわけですが、要するに「耳を育てる」ということに関して、(例えば厳密な意味でのコダーイシステムではなく)その要素を自分なりに抜き出して「合唱の基礎」に使っているということかと思います。
子どもを見ていると、子どもは理屈でなく美しい音程に歩み寄っていきますし、仮に難しいことを話してもこちらの態度が一生懸命であれば意図をくみ取ってくれます。うろうろしている子供たちが次の瞬間「おお、ちゃん と聞いていたんだ」という本質的な反応をすることは少なくありません。(大人に限って大きく頷いた次の瞬間「今本当に聞いていた?」という反応をしがちですね…) そもそも私たちはCMソングや歌謡曲、ポップスなんかを楽譜からではなく聞き覚えていますし、日々耳からたくさんの情報を仕入れているはずなのです。子どもの合唱に取り組むということは、合唱とは何かということと向き合うことなので、指導者にとっては本当の多くの気付きを得ることになるのですね。

さて、今年の全日本合唱連盟の子どもコーラスフェスティバルは、子ども委員である私が中心となり、京都府合唱連盟の力を借りて京都で開催することが出来ました。いつもは子どもコーラスの観客はわりと子どもとその家族の方に限られてしまっていたのですが、京都府合唱連盟の組織力のおかげで、たくさんの集客を得て、思い描いていたような「大人に応援してもらう子どもコーラスフェスティバル」を開催することが出来ました。企画としてはまずまず成功だったと言えるでしょう。しかしながら、子どもコーラスフェスティバルは来年はいったん休止となります。理由は200万円を超える赤字のためです。しかし、子どもに投資しないで、未来ってあるのでしょうか?
もちろん、実務家としての側面を持っている私のことですから、現実的に様々な言い分と考え方があることは熟知しています。実際子どもコーラス委員として、私も2020年からの復活にエネルギーを注ごうとしているのですが、その間思ったことは、来年開催されるかどうかという目先の問題ではなく、「子どものコーラス」こそが私たちの手本になっているということに気付いてない大人が多すぎるということなのです。一生懸命子どもと向き合うことがで私たちは初めて「本質」を学ぶことが出来るのです。ですから、ある意味、合唱界の全ての事業は子どもコーラスの発展立に向けられていけないはずですし、「子どものコーラス」に取り組むことこそ合唱組織がやるべきことの基本となるのではないかなと思うのです。

<子どもコーラスフェスティバル概要>

【8月4日(土)】
□13:00〜15:45「こどものためのアトリエ」 参加料:無料
・岸信介教室(ロームシアターサウスホール)
 「ひざっこぞうのうた」(信長貴富:曲)
・武田雅博教室(京都女子大学文中ホール)
 「えんそく」(山本直純:曲)
・伊東恵司教室〜大人と子どもで歌う合唱(同志社寒梅館ハーディホール)
 「さびしがりやのサンタクロース」(松波千映子:曲)
・戸崎文葉教室〜はじめて歌う子どもたちの合唱教室(京都市立錦林小学校)
 「曲目未定」

□16:30〜17:45「歓迎特別演奏会」(寒梅館ハーディホール) 参加料:無料
・同志社グリークラブによる演奏
・葡萄の樹&みやこキッズハーモニーによる合唱物語「さびしがりやのサンタクロース」

□18:00〜20:00「合唱指導者のためのセミナー」 参加料:2000円
・戸崎文葉と伊東恵司による(頭と体と手足と耳を使った)「合唱のイントロダクション」の指導方法!
 対象:小中高の学校教員、学生指揮者、PTAコーラスや一般合唱団の指揮者

【8月5日(日)】ロームシアター京都メインホール
□10:00〜17:00 チケット一般1500円/中学生以下500円
・「全国から応募した15の団体の発表」
・「昨日のアトリエの発表」
・「京都府合唱連盟による歓迎演奏」〜「うたおう」(千原英喜:曲)


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