バルセロナ遠征メモワール17−04 2018.1.14
1)
1.寛容性からくる宗教の融合的作品群
プロポーザルには解説は不要なのですが、狙いを含めて解説を加えたことが奏功したような気がして
います。(加えて、世界的な合唱の傾向がアクションを伴う合唱シーンがあることだという理解はあ
りました。VINEがよくフォーメーションチェンジやワンポイントですがコミカルなアクションを挟ん
で演奏することがありましたので、そのような演奏実績もプラスに働いたのかもしれません…) 幸いにして、このバルセロナでの世界合唱シンポジウムへの参加は私にとっても大きな経験をもたらしてくれました。
2)
とはいえ…、現地で尺八奏者を調達した追分節考のことが気になっている上に、英語が出来ないにも
関わらずモーニングシングの講師を引き受けてしまったことで、(ここで日本の曲を紹介しないと、
日本から参加した指揮者としての価値がないと考え無理して受けました)いつもの外国遠征と同じよう
に少しナーバス+睡眠不足の状態でバルセロナに降り立ったのでした。長時間のフライトでは、緊張の
あまり寝付けず、最近見てない映画ばかり見て過ごしておりましたが、バルセロナに降り立ち、最初に
尺八奏者との打ち合わせが済み、当たり前に美味しいパエリアを食べた足でガウディのサグラダ・ファミ
リア教会でのコンサートを訪問しました。ガイドのマリアさんの所属するユース合唱団が出場するとい
うことでチケットを融通してもらったのですが、特別演奏会では不意打ちのようにカザルスの「Nigra
Sum」が始まり、私は言葉を失いました。Nigra Sumは私の師匠である福永陽一郎が気に入っていたレパー
トリーでもありました。よく考えるとここはカザルスの祖国カタルーニャです。しかし、まさかサグラダ・
ファミリア教会の2階から200人ものユース合唱団がこの曲を歌うとは思ってもいませんでした。言葉に
ならない感動に包まれて、もうこのまま帰っても良いとすら思った次第です。子供の頃から行ってみたいと
思っていたあの未完成の巨大な教会の美しい光の中で、天井から「Nigra Sum」が降り注ぐという情景が夢
でなく現実に目の前で繰り広げられていることに感動を通り越した大きな衝撃を受けたのでした。 ![]() ![]()
3) 演奏については、世界のトップクラスの合唱団に囲まれて、本当にいっぱいいっぱいというところでしたが、ともかく急増メンバーもいる中でよく頑張ってくれ、本当に良い経験をさせてもらいました。
【モーニングシング】
【ワークショップ】
【メインコンサート】7月27日21時〜Palau de la M?sica Catalana ○今回の世界合唱シンポジウムのテーマは平和の色彩です。日本からの参加ということで、日本の特徴を備えた 平和の色彩について考えてみました。選曲の観点は4つの柱からなっています。 〇まず、1つめは多様な宗教観による平和の希求です。日本では排他的ではなく寛容で大らかな宗教心を持った 民族だといえます。歴史上は弾圧や偏見もありましたが、多くの宗教観を上手く混ぜ是ながら文化を形成してきた 側面があります。現在では音楽的にも多くの宗教のスタイルを混交させたり、融合させて確立した作品が多く見 られます。 ・「おらしょ」第2楽章(千原英喜) 〇日本は第2次世界大戦の当事国でもありました。戦争による悲惨な体験と反省とを世界の平和のために生かし ていくべき使命を背負っているとも言えます。戦争と平和を直接的に扱い、かつ現代合唱作品としての普遍性、 芸術性の高い作品を世界に紹介したいと考えました。 ・無伴奏混声合唱「廃墟から」第1楽章〜絶え間なく流れていく(原民喜/信長貴富) (被爆者でもある詩人原民喜の文章の断片から構成されています。ヒロシマに落ちた原爆の悲惨と、現代を生き る者としての平和への願いをサウンドスケープ的な手法を用いながら立体的な音像として表出した日本合唱界の 金字塔的な作品だと考えています。) 〇現代の日本は、(平和、幸福)への願いや自然への感謝が日常生活に息づいており、大げさな主張でなくとも、 美しいささやかな歌が平和を祈る私たちの色彩であるとも言えます。特定の宗教的典礼によらない現代の詩人たち のテキストを用い日本合唱界の独自性が発揮された日常の祈りの音楽を披露したいと考えました。 ・夕餉(みなづきみのり/松下耕) 〇日本は南北に長く、寒い地域から温かい地域、山間部から海浜部まで多様な自然を持っているため、それぞれの 特徴を備えた民謡や旋律が多数存在します。日本の合唱文化は集団で声を合わせる(労働歌、祭儀等)ことで一体 感を作り、平和や平穏を希求しながら歌により祈りを捧げてきたとも言えます。ここでは、現代の作曲家たちに合 唱曲として巧みにアレンジされている曲を紹介しました。 ・追分節考(柴田南雄) ・南京玉簾(千原英喜)(大道芸付で紹介させてもらいました) ・日向木挽唄(松下耕) ・狩俣ぬくいちゃ(松下耕) 演奏は、お蔭さまで温かい拍手に包まれました。例によって、時間や段取りはスペイン風、日本人にとっては、 いったい何がどうなっているのか?…という感じでしたが、諦めて落ち着いて演奏させてもいました。終演後も ずっと音楽を心から愛する人たちによる温かい拍手に包まれ幸福でした。世界文化遺産にも指定されているこの 舞台に立てたことそのものが奇跡的でもありました。 ※マンティヤルビさんを見つけたので、恐る恐る近寄り挨拶をすると「もちろん、知っている」と言って握手し てくれました。社交的でない私ですが、京都大会のときに、「自分がいかにマンティヤルビの曲が好きか、演奏 もしている」ということをアピールして「なにコラ」のCDを差し上げていたのでした。
【タウンコンサート】7/28 21時〜Caixa Forum, Auditorium
夜にタウンコンサートを行いましたが、これがまたメインコンサートとは全くことなるリラックスした中での演奏会
となり、思い出に残る時間となりました。そこに日本人は帯同している家族以外誰も居ないという完全ローカルな状
況の中、しかもピアノ付の曲を演奏するにも関わらずピアノがないホールで、焦りながらひとまずのリハーサル開始
となりました。ホールのスタッフは動揺するでもなく、「そうなの?、聞いてなかったなあ、でも、じゃあ取ってく
るから」と言う感じで、しばらくしてからどこからともなくピアノが運び込まれて来ておりました。唯一心残りは英
語の解説は準備していたもののカタルーニャ語での通訳を用意していなかったことで、たくさんの解説は半数程度し
か理解されなかったのではないかということです。しかしながら本当に熱心に聞いていただき、アンコールをして、
控室に戻ったにも関わらず、拍手が鳴りやまず、戻ってきてさらに演奏をさせてもらうというような状況でした。
・ソーラン節(編:清水修)
【クロージングコンサート】7/29 21時〜Pablo Casalus,Hall
4) ![]() ※滞在中は、毎日昼ビール、夜ワインという豊かな生活をしておりましたが、どうしてか酷い酔い方はしませんでし た。日差しのせいでしょうか。 ※ピカソ美術館にも行きました。 |
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