高嶋みどり先生について〜コーラスめっせ2014
14−4 2014.12.18
コーラスめっせ2014のゲストは高嶋みどり先生でした。
私自身が、生涯の中で一番驚いた合唱の演奏は、山田一雄の指揮、
アンリエット・ピュイグロジェのピアノ、という信じられないような
スタッフで「早稲田大学グリークラブ」が初演した「青いメッセージ」
でした。これがプロフェッショナルの演奏や全日本合唱コンクールの
演奏なんかよりも圧倒的に凄すぎて、この曲を作った人ってどんな人
なんだろう?、と思いながら大学時代を過ごしていました。本来はこ
の曲を指揮したいという気持ちがあったのですが、この演奏が凄すぎ
たので私は自身の定期演奏会の曲目をマーラーの「さすらう若人の
うた」と多田武彦の「中勘介の詩から」にしたわけです。
時を経て、私が合唱指揮者としてのキャリアを重ね、関西大学混声合
唱連盟の合同指揮者という役割を担ったとき、さて何をするか…と問
いかけ、自分自身の中でエポックメイキングなことをしたい、と思って
「青いメッセージ」の混声版委嘱を選択したという経緯があります。
ようやく出会った高嶋みどり先生は、私のような一般人の域では捉え
られない圧倒的な大天才ですが、とても女性的でチャーミングな側面
の多い方だという印象でした。その後、憧れと尊敬の対象でしかなか
ったみどり先生と、作詞者と作曲家という立場で関わらせてもらうに
つけ、そのことをまざまざと思い知るようになりました。
「コーラスめっせ」の公募合唱団で演奏した「私は空に手を触れる」
という曲は、前年の大阪府合唱連盟での大学合同の委嘱曲をベースに
「コーラスめっせ」で新しい組曲にしてもらったものです。(→私は空に手を触れる)
福島で審査員をご一緒したときも、東京でコーラスめっせの打ち合わ
せをしたときにも、常に音楽が溢れてきたりメロディーラインが降って
くるような気配がありましたし、話の飛び具合や脱線具合も楽しく、
自分自身の世界観が広がったようにも思ったのでした。
それこそ話が音楽からそれますが、そのとき先生に教えてもらった
ことの一つが、昨年の11月に訪れた青山の銀杏並木でした。
昨年の全国大会の直後、東京に脱出し、早朝から通り沿いのカフェ
のテラスで眺めていたのがこれ(→「銀杏並木に思う」)、
天才作曲家の見ている風景として胸に焼き付けたのでした。
ついでながら、同一人物であることはすでに公表されていますので、
関連する詩を一つ。
「銀杏の木の上に座る天使」
天使はハート型の銀杏の葉っぱを集めている
黄色く燃え上がった背の高い銀杏並木で
誰もいない朝に散歩しながら
黄色い絨毯にしゃがみこみ
一枚一枚くるくる回して形を確認している
人ごみの多い午後の青空の下では、木の枝に座り
悪戯っぽく銀杏の葉っぱを落としたり
三角形の大きなとんがり頭の間を飛び交いながら
無邪気に微笑んでいる
それは冬支度の前のささやかな楽しみのようだ
それはかりそめの家族を結成している者たちがひと時の錯覚を覚えてしまう瞬間のようだ
それは幸福のぬくもりの中に一筋の哀しみが突き刺さっている風景のようだ
天使は一頻り銀杏葉っぱを集めると
足をぶらぶらさせながら行き交う人を見ている
テラスでお茶を飲む人を見ている
ランドセルを背負った少年と少女を見ている
やがて
夕暮れの時間が来る
手を伸ばしたくなるような橙色の空を見ながら
天使は涙を一筋流す
それは宝石のようにに光る
・・・明日は今日よりも良い日になるのだろうか
日々が幸福から遠ざかっていく・・・
そんなことを思いながら
天使は少しメランコリックになるのだ
人間並みに
秋の夕暮れには
忘れたように銀杏の葉っぱが降ってくる
それは天使が落とした一枚だ
よく見ると天使の触ったあとがついているはずなのだ
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