新しい曲つぎつぎと
15−6 2015.8.24
自作の詩に曲を作ってもらう活動が多くなり、たんに自分自身が嬉しい
ということだけでなく、指揮者として言語と音楽について考察するきっか
けにもなり、楽曲を理解し分析する上でもかなり大きな勉強をさせてもら
っていると考えています。今年の夏場につぎつぎに曲にして発表にも関わ
るという機会がありましたので、紹介させていただきます。
○ありがとうの気持ちを込めて
・北川昇「ありがとうを贈ります」
もう指導を開始して10年を超えている奈良のお母さん合唱団「エントアール」
では、かつて北川昇さんに「いつかの木から」という2部合唱を中心とした女声
曲を委嘱をしたことがありますが、この度、10周年記念委嘱作品である小品
「ありがとうを贈ります」を最終曲に据えて、その続編とも言うべき合唱組曲
を作ってもらいました。
「空の歌」「若葉のように」「大地の子守唄」「海のうた」「結ぶ木」そして
「ありがとうを贈ります」です。歌詞は、この世代の人たちに歌ってもらうこ
とを想定して書いてみましたが、「大地の子守唄」などは、この世代にしか出
せない歌唱の味わいがあり、いつまで練習をしても人生の(少し)先輩でもあ
る歌い手から教えられることの多さを感じました。
10年を越えた今、いくつかの緩やかな目標をうまく設定することも必要なの
でしょう。国内の演奏旅行でも出来れば良いなあと思っています。また、「水
車小屋」で気を良くしたわけではないのですが、いくつか外国の有名な愛唱歌
を日本語に翻案できないかなあと思っています。中には本当に素晴らしい訳に
よって日本語の歌とし歌われ、親しまれているものもたくさんあるのですが、
残念ながらシラブル数が違うことによって、上手く訳しきれず、日本語で歌う
と音楽の価値が激減してしまうものもあるので、自分にとってのチャレンジも
してみたいなあと思っています。
○大学生へのメッセージ
・名田綾子「歌は繋いだ手のように」(→)
(失くしたもの、世界は全て、パレット、森、歌は繋いだ手のように)
アンコール
関西混声合唱連盟合同
・山下祐加「夢の続き」
(風景、繰り返す、誰かと誰かが、夢の続き)
大学生ジョイントコンサート(in大阪)
大学生と一緒に合唱活動をすることは、私にとっては合唱指揮者としての自分に
課したmissionのようなものでもあります。もちろん、かつての大学生と
か自分自身の大学時代と比べて、「もっと出来るはずだろうが」と思ったり、も
どかしい思いをすることは多々あるのですが、幸いにして私自身が大学に勤め、
かつては大学生の実態や教育プログラムの研究をしていたこともあったので、
大学生を取り巻く状況やメンタルをわりと理解出来ており、その中で彼らが頑張
っている部分について応援したい気持ちが純粋な形で存在していることは事実です。
今年は幸いにして、二つの大学生のジョイントコンサートを指揮させてもらうこ
とになり、そこで大学生に向けた応援メッセージでもある2つの曲を若い作曲家
に書いてもらうことが出来ました。
お二人とも本当に素敵な曲を書いてくださり、作曲に至るもろもろの対応につい
ても心を込めた対応をしてくださり感謝しています。素晴らしい曲が出来ても、
演奏されないと命が宿ったとは言えないと思います。学生たちは、一生懸命に取
り組み、一生懸命に合唱をしてくれました。感謝です。
名田綾子先生には、その後「個展」にも参加させていただき、大変楽しく、勉強
にもなりました。お二人の先生とも今後の作品が楽しみでもあり、これからも関
わっていただけたらなあと思っています。
○雨やどりコンサート
・三好真亜沙「長靴を履いた天使」(女声)
・名田綾子「今日も誰かが泣いたかな?」「雨の湊の子守唄」(児童・同声)
・北川昇「雨あがる」(男声)
かつて、私が客演指揮をした年の信州大学混声合唱団でマネージャーをしてくれ
た藤田君が新潟に帰り、合唱活動が活発とは言えないこの地域で何とか合唱を継
続して頑張りたいと、男声合唱団の「えちごコラリアーズ」を始めとする様々な
工夫のある合唱活動を展開してくれています。
6月には雨やどりコンサートと題して、男声、女声、混声、児童を一同に集めた
イベント(ジョイントコンサート)を開催し、目玉として委嘱作品をということ
で相談を受けましたので、上記の若手作曲家を紹介し、雨と名の付くテキストを
提供してみました。
それぞれに個性のあるユニークで美しい曲を作ってもらい、新潟の地で小さくも
新しい曲が演奏され温かな共感とともに音楽文化が芽吹くという体験をしました。
これだけ本番が多いと、雨男しての降雨確率も最近ではまったく振るわない状態
でしたが、曇り日であったにも関わらず、本番中に降雨があったということで、
関係者が騒いでいました。本当でしょうか。
○子供たちへ、そして未来へのメッセージ
・松下耕「讃歌・未来へ」
例年、8月に東京で開催される子どもコーラスフェスティバルですが、本年は
戦後70周年記念ということで、広島で開催されました。夏空に高らかに響い
たこの曲の歌詞は、松江の珈琲館にて、松下先生と電話でやりとりしながら、
一生懸命書き直し作業を行っていたことを思い出します。
どんな顔で歌ってくれるのだろうな、と期待をしていました。
子供たちは声高に平和をシュプレヒコールした訳ではありません。しかし、子
供たちの歌っている姿そのものが平和の象徴であり、子供たちの歌声そのもの
が未来であり、希望であると思いました。お蔭様で、とても素晴らしい広島の
体験となりました。
P.s
翌日の予定があったので、皆さんを見送ったあと、その夜は珍しく広島に滞在
したのですが、満月を眺めながら、牡蠣亭にてワインを飲んで過ごしたのでした。
忘れられない夜になりました。
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