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 「ロング・グッドバイ」を読む

10−12 2010.9.22

The Long Goodbye  忙しい状態になればなるほど別のことをしたがるのはよくあること でしょうか…?振り返ってみれば、中高の時代など、それまでたく さんの時間があったにも関わらず、試験が近づくに連れてどうして も別のことをしたくなったりもしたものです。
しかし、この逃避的行動は最近とみに顕著で、本番続き、選曲しな ければならない、楽譜を見なければならない、…という時に限って 合唱から離れたくなるという現象が私に訪れてしまっています。そ もそも随分以前から家で楽譜を見ることも合唱のCDを聞くようなこ ともない私ですが、ふと立ち寄った書店で買った本に目を落とした 瞬間から、恐らく断続的な10時間くらいは読書に没頭することに なってしまいました。
私の小説に関する読書歴は中学〜高校〜大学時代前半に本当に集中 していて、集中しすぎているのでその数年間にはドストエフスキー の長編の全てや、新潮文庫の世界文学シリーズの大半に加え、「ユ リシーズ」「失われた時を求めて」から「村上春樹」「ボルヘス」 まで読んではいるのですが、熱病が覚めたあとはほとんど読書らし い読書をしていません。特に最近の数年間は年間数冊程度の適当 な本しか読んでいない状態でしたし、小説は村上春樹ですら後回し でしたが、その数日の読書熱は一瞬にして凄まじく、職場や練習場 への行き帰りはもちろん、昼休みも本番のホールへの行き帰りも、 立っていても座っていても読んでいたのでした。作品はレイモンド ・チャンドラーの「ロンググッドバイ(約600頁)」、村上春樹 の新訳でした。
チャンドラーについてはもちろん名前くらいは知っていたのですが、 読むのは初めて。ちょうど読み終えた日に43歳の朝を迎えた私に とってはぴったりのタイミングであったかもしれません。ディティ ールに拘り、自身にルールを課し(これは自分の中にやくざな血が 流れていることを認めてのことでもあるのでしょう)、高い美意識 を持ち、気高いロマンとしての友情を生きるナイーブな男たちの姿 は実は、私にとっては憧れのとっておきの世界なのでした。

その間、各地のコンクールの結果の悲喜こもごもがニュースとして 入ってきたり、演奏へのアドバイスを求められたりしてきました。 しかししかし、合唱コンクールがどうした?、合唱ばかりして合唱 が上手くなるはずがない、というのが、合唱ばかりしているくせに たまに本を読んだからと言ってつい偉そうなことを言いたくなる今 の私の心境でもありました。

コンクールの勝ち負けについてより、夕方の時間に静かな酒屋で 飲むギムレットの苦味と甘味について語ったほうが豊かだという ことでしょう。チャンドラーのハードボイルドは美しく、渋かっ たです。

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