合唱劇という不思議なジャンル09−6 2009.8.26小学校6年生の時、7月7日の全校集会の場で、当時演劇部でもあった私は 子供たちだけで作った児童劇の「未来の七夕」という劇で主役のひこ星を演 じました。全校集会ですから、1000人の児童を前にして演じたことは学 校中の話題にもなり、特に低学年からの人気者になったことは秘かに誇らし い?思い出です。演劇部としての活動は実はそれっきりで、中学以後はとも かく演劇的なものからも遠ざかり、人前でどうこうするなんて考えたことも なかったのですが、合唱を始めた後、随分してから演劇との接点が蘇ってき たことに驚いたものでした。文化パルク城陽での企画や京都府立文化芸術会 館での企画で演劇の中に合唱を混ぜる場面で参画させてもらい、わずかです が合唱と演劇の融合について経験を得ることが出ました。 合唱と演劇が結びつくことのメリットの一つは、単純ですが、自分をしっか り表現しながら「舞台に立てる人の人数が増えること」ではないかと思うの です。演劇は多くの裏方に支えられ、それらの人たちが一体となってチーム を組まねばならないし、誰が欠けてもならないという緊張感と役割意識に支 えられた強固なチームが結成されるところであると思います。ただ、一般的 な劇ではたくさんの役者が同時に舞台に上がることはないわけです。一方合 唱のほうはたくさんの人数で舞台に立つことは出来るのですが、どうしても 集団の中に埋もれてしまう傾向が否めません。(もちろん、理想的な合唱の アンサンブルは、個性が輝きながら一体化したトーンを醸成するということ でありますが、その議論は別に譲り、一般的傾向としてという意味)で、合 唱劇というジャンルなのですが、どうしても1人でスポットライトが当たる ところまではいけないけれど他の人と一緒ならやれるかも…、というメンタ ルの方にはぴったりのジャンルですから、演劇では考えられないほどのたく さんの人を舞台に上げ、表現体験をしてもらえることは大きなメリットだと 思うのです。また言葉と音楽と動作や視覚効果というものが同時進行するこ とを体感することに大きな意義があるとも思います。 3年前に同志社コールフリューゲルのサマーコンサートを引き受けた際に発 想したのが、様々な世代の地域と方々と学生の混じった合唱劇の企画でした。 こんにゃく座の林光さんや萩京子さんの作品にいくつかの合唱劇のタイトル があったことは知っていたのですが、なかなか試すチャンスがないままきて いました。また、ホールを生かすにはホール独自の企画(ホール企画を駆使 するような)によるデモンストレーションが必要なこと、大物アーティストを 呼んでくるのではなく、地域の人にホールに足を運んでもらったり使っても らったほうが良いとも思っていましたし、クラブ活動支援にもなり、プロの 指導のもとでの表現体験にもなるので、一石四鳥くらいの効果があるように 思い、意欲を持って取り組み始めたものでした。
おかげさまで合唱劇は3年続き、たまたますべて宮沢賢治の作品(「どんぐ
りと山猫」「セロ弾きのゴーシュ」「注文の多い料理店」)になりましたが、
毎年満席になり、参加者からも高い満足度を得られ、大きな成功を得ること
が出来ました。そもそも合唱劇というジャンルが不思議なものでなかなか説
明できないのですが、演劇の良さと合唱の良さがお互いに渾然一体となり、
「一緒に物事を作っていく」ことと、「人前で何かを表現していくこと」を
とても深く体感出来る素晴らしいジャンルであるように思います。
良いことづくめのなかに落とし穴があるとしたら、この仕組みの「説明しに
くさ」くらいでしょうか。どこかの行政ではありませんが、文化芸術のよう
なものは、結果の出るスポーツのようなものでないので、所管や担当者等が
変わっていく中でなかなか価値を感じながら事業継続していくことが難しい
ようにも思います。 |
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