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 シャガールと木の葉

07−08 2007.4.19

若き作曲家の北川昇氏に初めて出会ったのは、ジャパンユース合唱団が神戸 で演奏会をしてそのアンコールに習作とも言える「うそ」が歌われた直後の ことでした。楽屋に北川氏を訪ね、その場で「組曲を書いていただけないで すか?」といういうようなことを語ったと思います。「うそ」の情緒的なメ ロディーとハーモニー、デリケートで品格のある音使いに直感がひらめいた のでした。
当時無名の大学3年生に淀川混声合唱団の1つのステージを使って組曲を書 いてもらうのは冒険と言えば大冒険でしたが、私には何となく上手くいくよ うな直感が最初からあったのでした。

テキスト選びも北川氏に任せたのですが、北川氏からテキストを谷川俊太郎 の新しい詩集「シャガールと木の葉」とし、組曲のタイトルにそのまま使い たいという連絡を受けたときはちょっと驚きました。何せ、高校生の頃から 私の部屋に飾ってあったのは「コクトーのオルフェの絵」「シャガールのリ トグラフ」「クレーの天使の連作」の三つの絵です(このホームページで分 かりますよね)。

red-sun もちろんいずれもリトグラフではありますが、それでも 「貯金はたいて買った(「シャガールと木の葉」の歌詞参照)」ものであって、 中でも、必ず誰かに見守られ空中浮遊しているかのようなシャガールの絵のや さしく温かな夢心地にずっと親しんできました。まさに私のために探してく れたようなテキストとタイトルでもありましたし、きっと感受性レベルで惹 かれているものがあったのかも…とも感じ、詩の中身や曲については、ほと んど何も詳細な打ち合わせをしないまま、大きく頷いてそのまま全てを任せ ました。
自分にとっても、淀川混声合唱団にとっても、若き作曲家にとっても、大き な思い出になる曲を書いてもらえる予感がしたのでした。

演奏については昨年の9月に大変な感慨とともに力いっぱいの演奏をすること が出来ました。(ちなみに12月には「葡萄の樹」の演奏会で、その出会い の曲?である「うそ」を演奏させてもらいました。)作曲家のデビューシーン に立ち会うことが出来てとても嬉しく思いますし、この作曲家がこれからどの ように成長し育っていくかということを見守ることはとても楽しみでもあります。

chagall さて、春になって嬉しいニュースが舞い込みました。念願かなって「シャガール と木の葉」がカワイから出版されることとなったのです。本格的デビュー作で この状況は大変恵まれてもおり、驚いてしまいましたが、若い感性にさらなる チャンスの道が広がることはとても喜ばしいことだと思います。日本全国の大 学合唱団の学生指揮者たちにとっても取り上げてみたいレパートリーになるので はないでしょうか?
各地でしなやかな感性に寄り添った演奏がなされることを夢に見ております。

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