かえるの季節に07−15 2007.7.13私自身が学生合唱団出身であり、学生合唱団に人一倍の思い入れを感じることからも、 ジョイントコンサートや客演指揮なんかで学生合唱団を指揮している場面がもっとも 私らしい瞬間と思ったりすることがあります。もちろん一般の合唱団、児童合唱団を じっくり育てていくということは一番大切で地道な取り組みでありますし、音楽の方 向性や自分自身の本質と向き合うことにもなるわけですが、学生の合唱団には一般の 合唱団にはない特有の「この瞬間、この演奏会にかける!!」という熱い意気込みが あり、気迫があります。このメンバーで歌うのは、これが最初で最後・・・と思いながら の(特に幹事学年や卒業学年の)気迫や集中力は、一般の合唱団にはなかなか出せな いものですし、昔のことを思い出すと、福永先生に導かれた東西四連や定期演奏会な どは、自分自身が「今日このステージで倒れてもいい!」というような青々しいこと を思ったりもしたものです。実際、そういう経験が現在の活動を強く支えているとも 言えるのですが・・・。 さて、思い出せば昨年のこの時期は、大学合唱団ジョイント合同客演のオンパレード だったのですが、その先陣をきった関西六大学合唱演奏会の合同では、高嶋みどり先 生にお願いして「青いメッセージ」の混声版を初演したのでした。この曲は私が学生 時代を迎えるより少し前に「男声合唱曲」として作曲されています。私は先輩から幻 の名演と言われる「早稲田大学グリークラブ(指揮:山田一雄、伴奏:アンリ・ピュ イグ・ロジェ)」という、俄かに信じがたい豪華組み合わせの初演のテープを譲り受 け、擦り切れるほど聴いていたのでした。それから20年くらいの歳月が経ち、大き な規模の学生合唱団のコンサートの依頼をいただいたので、思い切って積年の思いを 遂げる企画にチャレンジしてみたわけです。関混連技術委員長の五十嵐さんをはじめ、 200名を超える学生の頑張りによって「青いメッセージ」の混声版初演は感動的な 熱演となりました。私の記憶の中にも深く刻まれています。フェスティバルホールに 鳴り響いた呻きや絶叫や悔しさや喜びや興奮・・・その後、爽やかに駆け抜けた「未来へ」 の合唱は、大学生の未来を信じたくなるほどの説得力ある余韻を残していったように 思います。 私としては練習中に珍しく、声を張り上げて怒ったり、凄い勢いで激励したりしたの でしたが、いずれも、「完全燃焼する」という学生合唱の素晴らしさを実感してほし いという思い一心でありました。学生の演奏会にかける情熱と思いを煽り、喚起させ、 自分もその先頭にいたいと強く願ったものでした。・・・あれから一年しか経っていませ んが、随分遠い昔の思い出のようでもあります。この先「あのとき、あの初演のステ ージにいたメンバーたち・・・」と合唱を通して再会をすることがあるかもしれない・・・ と思うと、とても心が温かくなる気がいたします。 実は、このたび「青いメッセージ」の混声版楽譜も出版されたのですが、その巻末に は初演メンバーの名前が全員分載っています。出版社の粋な計らいに思わず嬉しくな りました。一人一人の名前を知っているわけではないのですが、一緒にがんばったメ ンバーたちとの記念写真のように、ずっと思い出を共有出来ているように思うのです。
P.s |
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