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 熊本〜知覧へ

11−09 2011.8.2

昨年に引き続き熊本での講習会の講師を引き受けさせてもらいました。
もともと熊本には早くから縁があり何度も行かせて貰っている上に、今年の 2月には熊本ユーゲントでも客演をさせていただいておりますが、いつもな ら飛行機で向かったところ、今回は初めて新大阪から新幹線みずほで向かっ たのでした。飛行場のない京都からということを考えると、熊本はじめ鹿児 島に至るまで、九州各域は随分と便利になったものです。何せ寝ている間に ついてしまいますので。

さて、熊本県の中高生は相変わらず素晴らしいと思いました。
小学校の指導もすることになりましたが、明るい声の響きと自然でナチュラ ルな歌い方が印象的でした。
二日間の講習会は例によって「雨によって列車が遅れ、豪雨に見舞われ、天 草からのバスが心配で、、」と、雨男の本領発揮というところでしたが、実 は大変に珍しく、その後合唱指導ではなく一人で鹿児島に向かい宿泊し、知 覧へと行って参りました。

鹿児島駅から知覧行きのバスに乗り、特攻平和記念館へと向かったのです。
実は8月に同志社グリークラブ、信州大学グリークラブ、横浜国立大学グリ ークラブ、北海道大学グリークラブが集まってジョイントコンサートを行な うのですが、そこで信長先生の「Fragments〜特攻隊戦死者の手記による」を 演奏することが決まっており、様々な資料には目を通したのですが、やはり 一度実際に足を運んでおかないと、という気持ちがありました。

夏と言えば、たまたま今年は広島にJCDAユースクワイヤーを連れて行き 「原爆小景」から2曲を演奏することにもなっています。ともに若い世 代と一緒に「戦争や平和」について考えることにもなるため、それに備 えた準備が必要だとも思ったわけです。

この手の曲は、取り上げるのに躊躇がありますし、戦争を知らない世代、 直接的な被害から遠い地域、時代にいることで、「想像することは出来 ても、語れることが少なく」わざわざ「私が」取り上げなくても良いテ ーマのようにも思えます。

しかしながら、イデオロギー世代のアレルギーからか、少し前の世代に は、出来るだけ芸術的な世界から社会的傾向を排除し、感性の世界だけ に留めたがる雰囲気があったようにも思いますし、学生にも全体的にこ のようなテーマを敢えて避けて通るような傾向もあったように思います。 しかしながら、戦争を直接的に体験した世代はどんどん減っています。 他方若い人たちを見ると、今度は知らないことが多すぎて、逆にシリア スなテーマに対するアレルギーのようなものも減ってきているようにも 思います。

もちろん現代的な視点、直接的世代ではない若者が歌うという観点を含 めて、多様な視点を考えたいところですが、今、このような作品への取 り組みの意義は高いように思いました。学生たちに「合唱や自分たちの 活動が、決してステージの上だけで完結しているものでなく、社会の動き や歴史とも繋がっている」ということに気付くきっかけにでもなればと 思っています。

P.s
特攻平和記念館でのもろもろは、とても重たいものでした。
ずっと胸がざわめき、心が塞がる思いがいたしましたが、その中から あぶりだされてきたものには、(決して戦争による散華を美化する訳で はありませんが)無垢なものを感じました。彼らの残した言葉遣いや、 丁寧な文字の一つ一つには、人との繋がりや細やかなものを大切にして いた「かつての日本人」がもっていた気品や高潔な美意識のようなもの が感じられました。
同世代である現代の若者たちがどのように受け止め表現しようとするの か、見当もつきませんが、一緒に試行錯誤してみようと思っています。

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