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「なにわコラリアーズ〜ただたけだけコンサートvol2」について

ただたけだけコンサート Vol.2 in 山口より

「なにわコラリアーズ」では、2009年に、多数の作品を残し男声合唱の隆盛 に大きな貢献のある作曲家「多田武彦」に焦点をあてた「ただたけだけコンサート」 を企画しました。しかも、全国各地で演奏活動を展開するという壮大な計画なので すが、昨年1月に京都で開催した「ただたけだけコンサート」の第2弾を、本日 「とおんきごう」さんの協力によりここ山口で開催出来ることを嬉しく思っていま す。昨年は「北原白秋」「中勘助」「三好達治」という時代とテイストの異なる三 名の詩人に付けられた名曲を演奏させていただきましたが、今年は山口出身の天才 詩人「中原中也」の詩につけられた曲ばかりを集めるという画期的な企画としてみ ました。

多田作品の魅力は、まず、テキストとなる詩人や詩の選び方、「詩の選択眼」とも 言うべきものから成立しているのではないかと思います。近代抒情詩を中心に取り 上げ、あたかも詩の中に内在していたとしか思えない歌や音楽を見抜き、それに忠 実にメロディーとハーモニーを紡いでいるようにも思えます。

中原中也は1907年山口生まれの詩人です。25年に上京し、小林秀雄や大岡昇 平らと親交を結び、ヴェルレーヌ、ランボーらのフランス象徴派の詩人の影響を受 けながら、独自の詩風を確立しました。34年には第一詩集である「山羊の歌」を 出版して、詩人としての声価も高まりましたが、長男の死後心身衰弱がはなはだし く、結核性脳膜炎により、37年に没しました。名作「在りし日の歌」は死後の刊 行であったようです。
中也の詩は、表象への美意識というものではなく、日常に事象の中から滲み出る切 ない感情や、近代人としての自我や孤独や不安と向き合いながらも、それを平易な 言葉で綴り、独自のリズムと色合を形成している点に特徴があるように思います。 純情であり虚無的であり、時に暴力的なアウトサイダーでありながらも、祈りや抒 情性に裏打ちされた言葉には音楽的な匂いを感じるものも多く、作曲された曲も多 数あるようです。

多田作品の中でも「北原白秋」や「草野心平」に次ぎ、三好達治らと並び作曲され ている曲の多い詩人ということになりますが、中原中也に寄り添い付けられた一連 の曲集には、毒気をも含むような暗い抒情や、逆に明るさにもつながる哀しみの透 明感が良く汲み取られており、膨大な多田武彦作品群に一つの奥行きを与えている ようにも思います。

多田氏の「中原中也」に付けられた曲が一気に演奏される機会は恐らく初めての試 みだと思いますが、詩から歌、合唱曲へのジャンルの飛翔とそこに通低する中也の 抒情のリズム、それを汲み取る多田氏の音楽的視座とのやりとりを感じていただける 演奏会になれば幸いです。

※ロビーには中原中也記念館よりお借りしたものを展示させていただくことも出来 した。協力開催していただいた「とおんきごう」の皆様に加え、演奏会開催に当た ってお世話になった関係者の皆様方に感謝申し上げます。

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