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ベートーヴェン、君を愛すアンサンブル・ミカニエ第13回演奏会より
小学生時代のある日突然シューベルトが好きになった私は、一番好きな歌は「野ばら」であり、「ます」でありましたが、シューベルトが尊敬していた人としてベートーヴェンを理解していました。しかし、中学時代のある日、ロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」を読み、そのモデルたるベートーヴェンが好きになりました。
その後、映画芸術を専攻していた大学時代のある日、ベートーヴェンが後期弦楽四重奏の楽譜の隙間に書き込んだ文言をジャン・リュック・ゴダールの映画の中で再発見し、芸術論ゼミの課題提供したり、ギドン・クレーメルとアルゲリッチのベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを聞きながら書道家の部屋で徹夜をするという青年時代を過ごしていました。ついでに当時、私の心の師匠となったアンドレイ・タルコフスキーのノスタルジアのクライマックスで重要なモチーフとして第九交響曲が用いられていたことは、私の芸術哲学的な理解と思考の転換点にもなりました。
さて、オンラインメッセージのため字数制限がないものですから、前置きが長くなりすぎました。
「ベートーヴェンにおいて芸術形式は生の内的実在のリズムと離れていない」
今回の演奏楽曲については、このような過剰な説明とは反比例するようなチャーミングな作品ばかりですが、それでも、原曲を繰り返し聞きながら思ったのは、これらの曲の内奥に秘められた万感の思いや苦悩、悲嘆、憧れ、希望、勇気、諦念、悔恨、ユーモア、…全身全霊で生きた人間の情感や思考でした。
不幸にして耳が聞こえなくなったベートーヴェンはこの世と決別すべく、ハイリゲンシュタットで遺書を書きました。 |