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「白いうた 青いうた」より淀川混声合唱団代第11回演奏会より
「合唱」が常に何かとの「出会い」であるなら、この第三ステージで演奏する「白いうた 青いうた」
の楽譜を見たときの出会いは、「懐かしい私自身の感性との出会い」だったかもしれません。新実徳英の
メロディーに付けられた谷川雁の言葉は、かつて、図書館で何をするでもなくぼんやり夕暮れを見つめて
いたときの視線を思い出させるものでした。
合唱団の指導をしてますと、てっとり早く体裁を整えるために「発声」「和声」という観点から音楽の
形を作ることがあります。合唱は「響き」という要素が余りにも重要ですので、どうしてもそちらに重心が
移ってしまうのでしょうか。
谷川雁氏は若い頃は、現代詩やイデオロギーのジャンルで活動していた人ですが、この曲の中では一転
した「物語とメロディー」の世界の住人になっています。現代詩は音楽に反発し、現代音楽は言葉の持つ
エロティックな呪縛から逃れていく方向性を志向していた時期があったように思います。
「白いうた青いうた」の面白い点は、全ての作業が逆の手順を取っているということです。先に新実氏がメ
ロディーを作り、そこに谷川氏が詩を付けて行く訳ですが、言葉がある程度のイントネーションによって音
楽を内在させる場合とは違って、メロディーは従来よりも遥かに自由な選択肢を得ることになります。新実
氏は古今東西の音楽の中に飛翔してメロディーを探り、磨き、作り上げました。(ときに、童話や夢物語的
な雰囲気が漂うのもそのためでしょう…)逆にそれに言葉を与えるのは大変難しい作業と予想されますが、
谷川雁氏の驚くべきイマジネーションは、メロディーが予想だにしなかったような「爽やかに磨かれた言葉」
を、まるで別の命を吹き込むようなやり方で歌詞として与える訳です。
…どこかできいたことのあるような親しみやすいメロディーは、口ずさむことによって忘れられないメロ
ディーとして胸に残ります。研ぎ澄まされた言葉や、空間に絵を描いたような透明感漂う詩は、我々が歌いた
くなる瞬間を探りながら感受性の鏡へと舞い下りてくるのでしょう。 …今回の演奏会では、そんな「うた」を楽しみながら…、言葉の持つ「痛みや、切なさや、匂い…」が少し でも滲むような演奏が出来ればと願っております。 |