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「やさしさの扉・さびしさの扉」淀川混声合唱団代第26回演奏会より
三人の天使 アンドレイ、ヤスジロー、フランソワ
不慮の事故で亡くなったというその哲学者の遺著のページを何気なく
捲っていたときのこと、…次第に部屋に差し込んできた木漏れ日の
感触を私は忘れることはない。それは微笑みとも言えるものだったろうか。 夏の午睡の後など、まるで時計の針が全く進んでいないかのような不 思議な感覚に見舞われたりすることはないだろうか。同じように続く 気怠さの中でふと根拠のない不安に駆られたりすることはないだろう か。記憶は、適度な捏造と思い違いを飲み込みながら、本当らしさと まがまがしさを判別することもなく、どこにも辿りつかないメリーゴ ーランドのように巡る。唐突に蘇る瞬間を待ちながら。ありもしない 過去を夢のようにすり替えながら。
ある時、ふと私に姉がいたような気がした。 私たちの生を形作っているものは、手に触れられる事実ばかりではなく、 夢や思い出や他人から聞いた話や、読んだ物語の中身までもが混ざり合 い、その曖昧性の中に炙り出されてくるものなのではないだろうか。 夢や錯覚や聞いた物語が、私の人生の中に忍び込んでいる。そう、モー パッサンやアーウィン・ショーの小さな一節までもが・・・。そして、どこ かの作曲家が作った曲によって、私には別々に見えていたことが、時間 をかけて緩やかに繋がっていたことに気付くことになる。
天使は去っていく |