モツレクをシアターピースで!そして、今年も年末合宿
【報告1/マスタークラス〜シアターピース(講師:岩田達宗)】11月29日宝塚ベガホール
「行列の出来るオペラ演出家!」岩田達宗先生を講師として招聘し、
「合唱団:葡萄の樹(指揮:伊東)」でモデルを引き受けさせてもら
いました。「モツレクをシアターピースで!」という、一瞬目を疑う
ようなタイトルでしたが、講習会の内容はシアターピースの本質に迫
ったオーソドックスで充実したものでした。
前半は、「Kyrie」を「Kyrie eleison」「Christe eleison」の旋律に
分解し、パートの受け渡しを立ち座りで示したり、全体が和音になる手
前で全員の視線を統一するというようなシンプルな演出が施されました
が、楽曲の構成を視覚化させることで旋律の関係性を整理し、歌い手の
コンセンサスを促すものでした。後半はやや踏み込み、「Dies irae」
を怒れる神と怒られる人間との二つの立場になって「演技」してみま
したが、そのことにより楽曲のドラマ性や、言葉の両義性、言葉その
ものの強度を全身で表現することの意味を理解しました。また、もう
一曲「Lacrimosa」においては、客席から遺体役を募り、ステージ上
に横たわってもらい、合唱団員は歌いながら遺体に献花する…、とい
う演出に挑みました。歌い手が演技派揃いであったことに妙に感心し
てしまいましたが、遺体役が感想を求められときに「…とても幸せな
気分がした」(死んだ自分のために間近で歌ってくれて…)とコメン
トしたことが「音楽の役割」をひとことで表現してくれているようで、
とても面白く感じられました。講習会のラストは意表をついて「何も
演出をしないで演奏する」ということで締めくくられました。このこと
は「動きありき」の発想ではなく、シアターピースの本質がむしろ
「音楽や言葉を多角的に理解し表現していくときのプロセスに寄り添
うべきものではないか?」との講師からの提案でもあったように思い
ます。「合唱指導」の核心を示す講習会にもなりました。
【報告2/年末学生指導者合宿VOL2(特別ゲスト:信長貴富)】12月29・30日
自ら手を上げて実行委員長をさせてもらった初回に続き、2009年末に
も「学生指導者合宿」を行いました。150人を集めて盛り上がった前回
でしたが、今回は何と260名の学生が全国各地から集まってくれました。
信長貴富先生にはこの合宿のために「新曲」を書いてもらうことになった
のですが、曲はメンデルスゾーンの「歌の翼に」を素材に、ドイツ語の
原曲(アレンジ)と、長田弘さんの詩の一節に付けられた書下ろしの新
作との二重合唱になっています。(「アルティ声楽アンサンブルフェス
ティバル2009」で委嘱した曲「ブラームスの子守唄/樫の樹のように」
と対をなす作品として書かれました・・・。)信長先生にも合宿に来て
もらい、学生にドイツ語と日本語のメカニズムや言葉と音との関係性を
講習していただきました。つまり作曲家の立会いのもとに合宿の中でこ
の曲を世の中に生み出すことが出来たのです。人数が多すぎて大変だった
側面(何しろ全て二交代制)もありましたが、全体として大学生のポテ
ンシャルや可能性を再確認出来ただけでなく、共通の悩みを分かち合った
り、違う方法論の情報交換をしたり、贅沢で多彩な講師陣から直接「目か
らうろこ」の刺激を受けたり・・・と、学生の表情が生き生きとしている
ので、この合宿がもたらすものの大きさを実感しながら過ごすことが出
来ました。委嘱曲は4月17・18で開催されるイベント「コーラスめっせ2
010<中之島合唱フェスティバル>」において、講習を受けた学生たち
が再集合(再結成)したユース合唱団!によって再演されることになっ
ております。
2010年『合唱指揮者協会機関紙:コンタクト』より
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